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脳科学と脳卒中のADL評価
近年、FIM利得などの指標を用いて、病院のリハビリテーションの「質」を評価しようという流れが進んでいます。 しかし本当に、ADL評価だけで脳卒中リハビリテーションの効果や質を正しく測ることができるのでしょうか。 臨床のPTやOTであれば、一度はこの疑問を抱いたことがあるのではないかと思います。 もしかすると、医師や看護師の中にも「なんだか腑に落ちない」と感じている方がいるかもしれません。もし感じているなら、かなり意識が高い方です。(^^) そもそも、FIMでリハビリテーションの質を測ろうとすること自体が、制度構造として大きな問題を抱えています。 なぜなら、FIM利得を基準に質を評価するのであれば、病院側は「FIMが改善しやすい患者」を優先的に入院させるほど、数字が良く見えるからです。 つまり、FIMが伸びやすい人を集めれば集めるほど、病院の“質”が高く見えるように制度が設計されているわけですね。 そして今後、こうした流れの延長として「FIM利得で質を規定し、得点が高い病院に保険点数を上乗せする」という制度が導入されれば、その傾向はさらに強まるでし
Nagashima Kazuhiro
11月16日読了時間: 5分


ミトコンドリアと脳損傷リハビリテーション
ミトコンドリア。(^^) 図はWikipediaよりお借りしています。⑨がおなじみミトコンドリアですね。 細胞の中に存在していて、 栄養素を酸化してATPという形のエネルギーを作り出す細胞小器官です。 筋繊維(筋細胞)等は、エネルギーを利用しているのはイメージつきやすいかもしれませんが、脳の神経細胞も伝達物質の産生、放出、軸索の伸張によるシナプス形成や物質輸送などにエネルギーが必要ですので、神経細胞内に多くのミトコンドリアを含んでいます。 ミトコンドリアはどの様にATPを作り出しているのかというとご存じTCA(クエン酸)回路ですね。 ブドウ糖は、細胞内で解糖系により分解され、1分子のブドウ糖から2分子のピルビン酸と少量(2分子)のATPが生成されます。 このピルビン酸は酸素がある場合はミトコンドリアに取り込まれて大量にATPを産生するようなメカニズム〜TCA回路と電子伝達系 (酸化的リン酸化) が働くことになります。 酸素が無い場合は、ピルビン酸はミトコンドリアに取り込まれず、細胞質で乳酸に変えられることになります。この場合、ミトコンドリア内でA
Nagashima Kazuhiro
11月11日読了時間: 8分


Treadmill Aftereffect
トレッドミル アフターエフェクトってご存じでしょうか? 私、最近フィットネスクラブに通い始めたのです。 自費リハビリを起業してから、運動量が激減して心肺機能が落ちてしまったので、その調整目的です。(ダイエットを含む(^_^;) で、マシントレーニングとトレッドミルをしているのですが、トレッドミルで歩いた後にちょっと酔う感じがするんです。車酔いとかの感じ。 一番近いのは、USJとかで、 ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニーとかに乗っているときに来る感じですね。 画像にUSJのリンクを張ってあります。 で、何でだろうとしばらく考えていたのです。 最初考えたのは、前庭系の混乱です。 トレッドミル上では歩行をしているにもかかわらず、前庭系が前方への加速感を検知しないため、停止した際に、前庭系が逆の補正~通常で在れば前方の加速の期待があったぶんだけ停止した際に後方への補正が加わって、視覚や身体は静止しているという情報を脳にフィードバックしているのに、前庭系だけ後方に移動しているという情報を流すために脳が混乱して酔うのではないかと考えたわ
Nagashima Kazuhiro
11月2日読了時間: 4分


運動学習と繰り返し〜ヘブ則と非ヘブ則を考える〜
「運動学習には、一定の動作を10万回繰り返す必要がある」と耳にしました。 面白い言葉ですよね。 ただ、この話を聞いたときに、少し“科学的ではないな”という印象を持ったのです。 回数だけが独り歩きしていて、その背後にある条件や背景が見えにくい気がしたのですね。 というわけで、ちょっと調べてみたのです。 おそらくではありますが、運動学習とその頻度について研究されていたのは、おそらく運動学習の論理的基盤としてヘブ則が研究されている時期だと考えられます。 ヘブ則とは、1949年にドナルド・ヘッブによって提唱された「細胞Aの軸索が細胞Bを発火させるのに十分近くにあり、繰り返しあるいは絶え間なくその発火に参加するとき、いくつかの成長過程あるいは代謝変化が一方あるいは両方の細胞に起こり、細胞Bを発火させる細胞の1つとして細胞Aの効率が増加する。」という仮説です。 これは脳の可塑性を示す重要な科学的な仮説のひとつです。この考え方は後に、1973年にBlissとLømoによって海馬で発見された長期増強(LTP)という現象によって、生理学的にも裏付けられました。..
Nagashima Kazuhiro
10月16日読了時間: 6分


盲視に見る意識の座
先日のいんすぴ!ゼミで、知覚という言葉は意識化された感覚なのかどうかという話題がありました。 翌日、ふと盲視のことを思い出したのです。 見えていないのにも関わらず、うまく物を避けたり、物を勘で言い当てたりする症状です。 脳科学事典というサイトによれば...
Nagashima Kazuhiro
10月5日読了時間: 4分


脳損傷患者の知覚世界〜環世界
環世界とは、ユクスキュルの提唱した生物学の概念で、環境世界とも言います。 ユクスキュルによれば、すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きていて、それを主体として行動しているそうです。普遍的な時間や空間(Umgebung、「環境」)も、動物主体にとってはそれぞれ独...
Nagashima Kazuhiro
9月22日読了時間: 8分


大脳基底核の2つのモード
Basal Ganglia Switches Neural Codes for Learned vs. Innate Skills このプレスリリース(表題にリンクが張ってあります)は、大脳基底核の働きにおいて生得的な行動をする際と学習された行動をする際、大脳基底核は2つの...
Nagashima Kazuhiro
8月14日読了時間: 5分


手を机の上に置いておく
手の機能回復を考えるときに、日常的にテーブルの上に手を置いておくことができる能力というのは大切だと思っています。 それは、身体図式の改善に関与するからです。 環境に対する運動出力というのは、外的環境情報と外的環境内での自身の身体の位置関係・身体同士の位置関係等の情報が組み合...
Nagashima Kazuhiro
8月2日読了時間: 4分
CINAC
CINAC CINAC(Correlation Is Not A Cause、シナク) とは、統計学および科学的推論における原則であり、「相関関係は因果関係を意味しない」という考え方を簡潔に表現した略語である。この概念は、データに基づく誤った結論を避けるための基本的な指針...
Nagashima Kazuhiro
7月30日読了時間: 1分


ホワイトノイズとリハビリテーション
今、CPのお子さんがご利用くださっています。 早産児のお子さんは、外的環境を受け取る感覚受容器がまだ未熟な状態で産まれてこられるので、様々な感覚に対して過敏性を示されることがあります。 今ご利用中のお子さんは、聴覚過敏があるみたいなんですね。...
Nagashima Kazuhiro
7月29日読了時間: 3分


Correlation Is Not A Cause
相関関係は因果関係ではない〜 C orrelation I s N ot A C ause〜 CINAC (シナク)という言葉があります。 ご存知でしょうか? 私、この言葉は結構すでにメジャーだと思っていたのですね。...
Nagashima Kazuhiro
7月4日読了時間: 7分


早産児神経発達学会
早産児神経発達学会のホームページはこちら 昨夜、早産児神経発達学会のオンラインセミナーに参加してきました。 オンラインでの受講生は、ざっと130〜140人ぐらいだったでしょうか? 全体では、300名ぐらいだったともお聞きしました。...
Nagashima Kazuhiro
6月27日読了時間: 4分


中枢性疲労と皮質拡延性抑制
臨床的な印象ですが、中枢性疲労(脳疲労)が長期にわたって見られることが比較的多いのではないかと思うのです。 例えば、受傷後もう10年を経過している頭部外傷の人で手の分離運動を促通していると、割とあくびが増えたりやら注意が散漫になったりとか、横になりたいという訴えをされたりと...
Nagashima Kazuhiro
6月19日読了時間: 10分


頑張らないと良くならないという幻想
脳卒中のリハビリテーションにおいて、医師やセラピストが「頑張ってリハビリしないと良くならないよ!」とか、「頑張ってリハビリして家に帰ろう!」〜意味的には頑張らないと良くならないと同義〜と患者さんに言っているのをよく聞いたりしてました。...
Nagashima Kazuhiro
6月8日読了時間: 8分


脳と免疫の謎−毛内拡
お茶の水女子大で脳科学を研究されておられる毛内拡先生から、新刊を頂きました。 毛内先生、有難うございます。(*^_^*) 私が本格的に神経科学の世界に興味を持ち始めたのは、多分1994年にボバースコンセプト成人片麻痺の3週間コースに参加させて頂いたことが切っ掛けであったよう...
Nagashima Kazuhiro
6月3日読了時間: 5分


大脳基底核と論理性——言葉の外にある思考のしくみ
私は以前から、論理性とは本当に言語によって担われているのだろうか、と考えることがあります。論理学の世界では、論理性といえば言語による表現が前提とされます。たしかに、論理的に物事を述べようとすれば、言葉の助けが必要です。しかし、実際の現場——特に医療やリハビリテーションの現場...
Nagashima Kazuhiro
5月24日読了時間: 3分


脳卒中に関するリハビリテーション医学の大きな間違い
ちょっと刺激的な題名ですね。 (^_^;) 注目を集めるかと思って・・・ ただ、これから以降書くことは、たぶん科学的には正しいと思います。 さて。 結論から先に言えば、リハビリテーション医学における脳卒中の「回復」の定義が明確ではないという事なのです。 ...
Nagashima Kazuhiro
5月20日読了時間: 6分


受動意識仮説について
ChatGPTとのディスカッションネタです。(^_^;) 前回と同時にディスカッションを試みていたもので、こちらの方はやや長くやり取りをしたので遅くなりました。 2つのディスカッションを通してChatGPTの特徴が何となく解ってきました。...
Nagashima Kazuhiro
5月8日読了時間: 32分


CahtGPTとのディスカッション
遅ればせながら、少しChatGPTで遊んでみたりしています。 (*^_^*) 今でも良く閲覧されている記事を題材にどう思うのかとか、どの様な反論があるのかと言ったことを聞いてみたのです。 題材に為た記事は昔に書いた記事ですが、現在でもコンスタントに閲覧されているこちらの記事...
Nagashima Kazuhiro
5月6日読了時間: 8分


空間認知と姿勢運動制御
2020年に、「ベッドに斜めに寝ている人の空間認知」という記事を書いたのですが、この記事、いつの間にか閲覧数が2000を越えていました。 いや、よく読まれているようですね。 (*^_^*) ブログ記事にリンクを張ってあります...
Nagashima Kazuhiro
3月15日読了時間: 5分
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