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脳と免疫の謎−毛内拡

更新日:11 分前

お茶の水女子大で脳科学を研究されておられる毛内拡先生から、新刊を頂きました。



毛内先生、有難うございます。(*^_^*)


私が本格的に神経科学の世界に興味を持ち始めたのは、多分1994年にボバースコンセプト成人片麻痺の3週間コースに参加させて頂いたことが切っ掛けであったような気がします。

それから、脳を研究する様々な研究者の研修会に参加したり、実際に空き時間にお話を伺ったり。毛内先生は、いんすぴゼミという企画に参加させて頂く中で、いろいろお話を伺ったりさせていただいたりしています。


そんな経過の中で、脳と人の運動の不思議に関心を持ってきました。

人の動きというのは本当に「意志」が生み出しているのかといった疑問や、認知機能と運動機能は実は分けて考えてはいけないのではないかと云う直感。

そもそも、「脳と身体を分けて考える事」が適切なのか?


そう言った疑問にたいするひとつの考え方がこの本には示されているように思います。

この「脳と免疫の謎」では、近年解ってきている、全身の慢性炎症などによって脳も炎症を起こすことになると言うことと、それに対応するためのメカニズムとしてグリンファティックシステムがあるけれど、慢性的な炎症でこのメカニズムが破綻するとグリンファティックシステムが通常のように働かないために、様々な症状を呈してしまう可能性を示しておられます。

その中には、中枢性(脳)疲労と言われる症状も含まれています。


余談ですが、脳損傷後はやはり脳の神経細胞が損傷されているので、炎症は起きるわけです。その中で、グリンファティックシステムも働きを失いやすい状態にあるので、基本的には中枢性疲労を起こしやすい状況にあると言えます。そして、それはが画像所見上浮腫がひいて炎症が無くなったように見えたとしても、そうした中枢性疲労の起こしやすさと言った傾向が長期的に残る方も少なくありません。脳損傷のリハビリテーションでは、そうしたことに対する配慮を考えて行くのも大変大切な事なのでは無いでしょうか?


さて。

本書では、最初に免疫機構とは何かと云った話題を取り扱い、その後、脳という「臓器」の解説に進みます。


脳のシナプス伝達にアストロサイトがどのように係わっているのかというお話しは私にとって、大変興味深いものでした。以前はシナプスというのはニューロンとニューロンの二者間に係わる構造だと考えられていましたが、どうやら近年、アストロサイトを含む三者間の構造を持っている〜三者間シナプスという考え方が主流になってきているそうです。


毛内先生は、この三者間シナプスにおけるアストロサイトの働きが、繰り返しを伴わず一度きりでも学習が成立してしまうと言う1ショット学習〜塚田の時空間学習則でしょうか〜を可能にするメカニズムなのでは無いかと考えておられるようです。

これは、アストロサイトがシナプス可塑性を支えるひとつの構造で在る可能性を指摘されておられる事になると思うのです。

するとその可塑性を可能な限り大きくしようとすれば、アストロサイトに不利な環境を治療する薬物などの医療とともに、不利な状況を作らない〜例えばノルアドレナリンの放出を可能な限り押さえるように不安を除去するようなリハビリテーションの介入なども考えて行く必要がありそうに思いますね。臨床場面ではついつい「頑張らないと良くならないよ」といった声がけは人によっては、ただでも脳損傷で脳の情報処理が不安定になっている人の不安を増強させ、余計なストレスとなってしまって脳の可塑性を阻害していると云った事もありそうですね。(^_^;)


話はさらに基底核ループにも広がります。




ワクワクしますね。(*^_^*)

基底核ループの簡単な構造と、どのように神経伝達物質が働いているのかという話から、こういったメカニズムが正常に働かなくなるとき、精神的な症状と言われていたり心の問題と言われていたようなことが起こるのではないかと指摘されておられます。

つまり、心や精神の問題とされていたものは、脳の機能的な問題であると言うことですね。

脳損傷でそのような問題を持っていると思われるような場合に簡単にその人のキャラクターの問題にすること無く、脳の機能がどの様なものであるのかを推測し、アプローチの内容や頻度を考える必要はありそうですね。


やはり脳損傷とこうした心や精神の問題というのは分けて考えるべきでは無いと言うことは言えそうに思います。

実は、高草木薫先生の講義でも、こうした意味合いのスライドを提示されておられました。

脳科学では、心とか精神を脳の機能とわける二元論的な取り扱いでは無く、ひとつの脳の機能として考えて行く方向性を持っているのだろうと私は考えています。


話題はさらに老化という方面に進んでいきます。

毛内先生らしい切り口で老化について解説されておられます。


この本は、脳の(慢性的な)炎症がアストロサイトなどグリア細胞の機能不全を起こすといった切り口で、脳の働きを解説しながら、こうした視点からリハビリテーションについても記載されています。


新人のセラピストより、多分経験を積まれたセラピスト、それも脳に興味を持つセラピストには非常に楽しめる内容では無いかと思います。


「脳と免疫の謎」


是非、みなさんに読んでみて欲しい一冊です。






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