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手を机の上に置いておく

手の機能回復を考えるときに、日常的にテーブルの上に手を置いておくことができる能力というのは大切だと思っています。

それは、身体図式の改善に関与するからです。


環境に対する運動出力というのは、外的環境情報と外的環境内での自身の身体の位置関係・身体同士の位置関係等の情報が組み合わさって、初めて運動プログラムが生成されます。

図

パーキンソン病の症状を説明するためのものですが、この図では身体図式情報が前頭葉に運ばれて運動プログラムを作るという情報の流れの模式図です。

身体図式情報が障害されていたら、運動プログラムも障害されるというのは、パーキンソンであれ、脳損傷患者であれ同様と考えることが出来ます。


そして、身体図式の生成には多重感覚入力が必要です。

頭頂野の入出力構造 有國 富夫
頭頂野の入出力構造 有國 富夫

この脳の図は、マカクサルです。有國 富夫先生の研究に矢印を入れて、頭頂間溝野各領域の関係性を解りやすくしてみました。

この図を見れば、体性感覚情報、視覚、聴覚などの多重感覚が統合されているのが解るのでは無いかと思います。


これらを考えると先に書いたように、手の運動機能(運動プログラム生成)に視覚と体性感覚などの多重感覚統合が必要であることは言えると思います。

こうした視点から、手をテーブルに置いておくというのは大切な事だと考えているのです。


動画は、左片麻痺のご利用者さんにモデルになっていただきました。

あまりBr-Sで麻痺の程度を現すことは正しくは無いとは思うのですが、一応わかりやすさを優先して言えば、上肢Br-S Ⅲ~Ⅳ  手指Br-S Ⅲ~Ⅳ 位です。

上肢を前に出す際に、肘が軽度屈曲し前腕回内します。手関節は掌屈していて、背屈を促そうとしても抵抗が強いような感じです。手指の総握りは出来ますが、伸展は難しい感じの方です。

立位や座位で始めると姿勢制御の難しさで上肢の屈曲傾向が強まるため、仰臥位や側臥位でアプローチを開始しました。

筋の粘弾性の異常は、筋紡錘の過剰な反応を引き起こす要因の一つとなるため、モールディングなどのハンドリングをおこないつつ動きの感覚をつかんでいただくようにします。

肩甲骨は上肢を動かそうとすると肩関節周囲の同時収縮をおこし肩甲骨の動きで上肢全体の動きを実現されようとするので、仰臥位であっても肩甲骨を安定させるようにし、同時にセラピストの指で棘上筋を刺激、肩のアライメントを修正しつつ、三角筋各繊維の分離を図りました。筋収縮が分離してくるのが解ったら、麻痺側を下にした側臥位で重心移動の際に肩甲帯や肩の分離した筋収縮を利用するようにコントロールを試みます。

その後起き上がりにつなげて、端座位へ。

机の上でも色々の刺激を試みた後の状態です。


多くの片麻痺の方は、こうして掌だけをテーブルに置いて安定させるという事って、経験が少ないですよね。掌は感覚情報を沢山脳に送るのですが、この姿勢自体はそれなりに難しい姿勢でもあるのです。

そして、手をテーブルに置いたまま、重心を前後に移動してみて、それでも手が動かない状態というのは、姿勢の変化に対応した肩や肘の動きを作っていることを示します。

それは、手の感覚情報が統合され、身体図式化されつつあると考えて良さそうだと思います。

その後、視覚を外して体性感覚だけで手の位置を制御していただくよう、右後方のペットボトルを右手で取っていただいています。

まだ、左手の感覚に凄く注意を向けておられるので、姿勢変化に対する自動的な応答ではないとも言えますが、こうした動きを繰り返すことで、手の身体図式情報の利用を学習していくきっかけになるのだろうと考えることが出来ますよね。


こうして「手を机に置いておく」事は、単なる姿勢保持ではなくて、脳が手の位置情報を学習し、運動機能を取り戻すためのおおきな第一歩だと考えています。






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