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CINAC(シナク)とは?〜「相関関係は因果関係を意味しない」という科学の基本原則

CINACという略語には、少なくとも二つの用法があります。

一つは、本記事で扱う Correlation Is Not A Cause――「相関関係は因果関係を意味しない」という科学的推論の原則です。

もう一つは、医学用語の Chronic Interstitial Nephritis in Agricultural Communities――「農業地域に多発する原因不明の慢性間質性腎炎」を指します。

本記事では、前者のCINACについて説明します。

以前から、私はときどき「CINAC」という言葉を使っています。

CINACは、

Correlation Is Not A Cause

の頭文字を取ったもので、「相関関係は因果関係を意味しない」という科学的推論の基本原則を思い出すための言葉です。

「相関関係は因果関係を意味しない」という考え方自体は、統計学や医学、疫学、社会科学などで広く共有されています。

一方で、「CINAC(シナク)」という略語そのものは、特に日本では、まだ一般的な言葉とは言えないように思います。

しかし、「相関関係と因果関係を混同してはいけない」と毎回長く言うよりも、

シナク。

という短い言葉で思い出すことができれば、研究結果を読む際の大切な注意点として、定着しやすいのではないかと思っています。


相関関係とは何か

相関関係とは、二つの事象が、ある程度連動して変化する関係を指します。

例えば、気温が高くなると、アイスクリームの売上は増える傾向があります。

同じ時期に、水難事故も増える可能性があります。

この二つのデータだけを見ると、

「アイスクリームが売れると、水難事故が増える」

という相関関係が見つかるかもしれません。

しかし、アイスクリームを食べたことが水難事故の原因になっているわけではありません。

両方に影響しているのは、主に「気温」という第三の要因です。

このように、二つの事象に相関が認められても、その一方がもう一方を引き起こしたとは限りません。


ニワトリが鳴くから、太陽が昇るのか

早朝にニワトリが鳴き、その後に太陽が昇ります。

ニワトリが鳴くことと日の出には、非常に強い時間的な関連があります。

しかし、ニワトリが鳴いたから太陽が昇ったわけではありません。

順番が一定していることや、二つの現象が一緒に起こることだけでは、因果関係の証明にはならないのです。

少し極端な例ですが、医療やリハビリテーションの研究でも、これに近い推論が行われることがあります。


医療におけるCINAC

ある病気の人に、特定の身体的特徴が多く認められたとします。

このとき、

「その身体的特徴が、病気の原因である」

とすぐに結論づけることはできません。

病気によって、その特徴が生じたのかもしれません。

別の要因が、病気と身体的特徴の両方に影響しているのかもしれません。

あるいは、対象者の選び方によって、見かけ上の関係が生じた可能性もあります。

年齢、生活習慣、重症度、服薬、社会環境など、結果に影響を与える第三の要因は数多くあります。

これらは「交絡因子」と呼ばれます。

医学研究では、こうした可能性をできるだけ排除しながら、因果関係を慎重に検討する必要があります。


リハビリテーションにおけるCINAC

リハビリテーションの研究では、さらに注意が必要です。

例えば、ある治療を受けた人の歩行能力が改善したとします。

しかし、その改善が本当に治療によって生じたのかは、それだけでは分かりません。

自然回復かもしれません。

日常生活で活動する量が増えたためかもしれません。

家族の支援や本人の意欲が影響したのかもしれません。

もともと回復しやすい人が、その治療を選択していた可能性もあります。

治療後に改善したという時間的な順序だけで、

「この治療が改善を起こした」

と断定することはできません。

もちろん、相関関係に意味がないという話ではありません。

相関関係は、因果関係を考えるための重要な手掛かりです。

しかし、手掛かりと証明は同じではありません。

ここを混同すると、研究結果を実際よりも強く解釈してしまいます。


「効果があった」と「改善した」は同じではない

臨床では、治療後に患者さんが改善することがあります。

それは、とても喜ばしいことです。

しかし、

「治療後に改善した」

という事実と、

「その治療によって改善した」

という因果関係は、厳密には別のものです。

臨床家としては、自分が行った治療の効果だと考えたくなるのが自然です。

私自身も、そのように感じることはあります。

しかし、科学として考えるのであれば、自然回復や生活上の変化、他の介入、測定誤差などの可能性も残ります。

だからこそ、改善を喜ぶことと、因果関係を慎重に考えることは、分けておく必要があります。


CINACは、相関関係を否定する言葉ではない

CINACは、

「相関関係など信用できない」

という意味ではありません。

相関関係が何度も確認され、時間的な順序があり、生物学的にも説明可能で、介入によって結果が変化することが確認されれば、因果関係を支持する材料は強くなっていきます。

大切なのは、相関が見つかった時点で、因果関係まで証明されたかのように扱わないことです。

CINACは、科学を否定する言葉ではなく、科学を丁寧に扱うための言葉だと思います。


シナクという言葉が広まれば

日本の医療やリハビリテーションでは、研究結果の一部だけが取り上げられ、

「この特徴があるから、この問題が起きる」

「この治療を行ったから、改善した」

「改善した人が多いから、この方法が優れている」

と、因果関係が十分に確認されないまま話が進むことがあります。

そんなときに、

これはCINACではないだろうか。

と、一度立ち止まることができれば、研究の読み方は少し変わると思います。

相関関係は因果関係ではない。

しかし、相関関係は因果関係を探るための入り口にはなる。

その二つを混同せず、慎重に考えることが、科学的な態度なのだと思います。

「シナク」という言葉を聞いたときに、

相関関係は因果関係を意味しない。

という原則を、ふと思い出す。

それくらい一般的な言葉になれば、日本の医療やリハビリテーションにおける科学の使われ方も、少しずつ正しい方向へ進んでいくのではないでしょうか。

(^_^)


この記事を書く以前に、まいぷれでも「CINACとは何か」について、Wikipedia風の短い文章にまとめたことがあります。

今回の記事は、そこから医療やリハビリテーションにおける具体例を加え、あらためて詳しく書き直したものです。

最初に掲載した簡易版は、こちらからご覧いただけます。


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