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Prone Standing

執筆者の写真: Nagashima KazuhiroNagashima Kazuhiro

Prone Standingというのは、立位ではありますが、BOS(支持基底面)が足部と体幹前面にある姿勢です。

BOSが体幹前面にあるので、立位にもかかわらずProneの特性のある姿勢環境だと言えます。

(写真は少し体幹が浮いちゃってますね。(^_^;))


立位でバランスを取るために、腰部の過伸展を起こしていたり、非麻痺側上肢の肩関節が伸展(広背筋が過剰に働いている)ようなケースとか、色々な場面で表層の体幹伸展筋群をリラックスさせつつ体幹の多裂筋を中心とした選択的で分節的な体幹活動を促したり、腰部筋群の過剰な出力から運動連鎖をハムストリングスに持ち込んで、本来あるべき股関節や膝関節の安定性を構築せずに固定的に膝を伸展させて荷重を成立させている様なケースで、本来の骨盤や膝の安定性を経験学習するために用いることが出来る姿勢環境では無いかなぁと思ったりしています。




膝の選択的な動きを出そうとしているところです。

動きを入れることで、ハムストリングスの粘弾性を回復させ、軟部組織の状態を整えることで、筋や腱組織からの感覚情報が上手く固有受容感覚として取り込まれ、下肢のボディスキーマが改善することを狙っているのです。

適正な感覚が入力されると、それは様々な回路で統合されていきます。


そしてそれは前頭葉に送られ、腹側線条体の情報と身体情報、環境情報から自動的におこなわれる運動出力選択処理に関わっていきます。



つまり、身体図式への介入は運動出力への介入と云うことになるのです。


動きを入れて行くと、基本的には循環がおきやすくなりますので、筋肉に酸素を含む糖分などのエネルギーが筋肉に行き渡り、筋自体もアクチンとミオシンがリリースしやすい状況になるはずです。


(図はアナトミーストレッチというサイトからお借りしています)


図を見れば、一番左のところで、ATPが結合することで解離につながっていますよね。ATPが必用なのです。ATPをつくるのはTCA回路の結果放出される水素が電子伝達系に回ってATPが産生されるそうです。グルコースⅠモルで38モルのATPが産生できるそうです。

グルコース〜糖がATP産生に必用で、ATPが乏しいとアクチンとミオシンの解離がおきにくくなるわけですから局所循環って大事ですよね。


じゃ、ROMとかマッサージで良いじゃんと云うことになりますが、なかなかそうは問屋(脳)が卸してくれません。(^_^;)


脳卒中の筋出力は末梢の軟部組織の変化を起こしますし、末梢の軟部組織の変化は感覚受容器の変化につながって感覚事態も変化させてしまいますが、元々は、脳の出力調整、それが腱反射の亢進を伴っているのであれば、γ系の調整、つまり、おそらくは脳幹出力調整の問題があるのです。

脳幹そのものの損傷はもちろんですが、脳幹は皮質と脊髄を結ぶ中間点でも在り、末梢情報の影響も中枢の情報処理の影響も受けている場所です。

末梢だけ調整しても、痙性をコントロール(治療)することにはなりませんよね。

(ちょっと話がそれます。私はボトックスを痙性治療に用いるという発想は間違っていると思っています。あれは筋肉のAch受容体を破壊するだけですので、痙性という複雑なメカニズムを持つ現象のごく僅かな一部分だけに変化をもたらすのみなのです。)


脳の皮質の情報が脳幹の網様体脊髄路に影響を及ぼしているのは、回路的には皮質橋路、皮質延髄路と云った経路です。

特に、皮質橋路については、随意運動(あぁ、随意という言葉を用いるのに抵抗があるのではありますけれど(^_^;))に関わる領域のひとつ、運動前野から投射されているのですが、運動前野は基底核ループにも投射しています。基底核ループの中でどういった活動や運動を選択するのかと云った無意識下の情報選択が行われる訳ですが、基底核自体は、網様体脊髄路への出力を持ちます。

高草木先生の資料からの図です。



基底核から網様体脊髄路のPPN(脚橋被蓋核)への出力が図示されていますね。

PPNはアセチルコリン作動性ニューロンが多く含まれている場所です。

脳幹は、アセチルコリンとセロトニンのバランスで興奮性の情報伝達を強くしたり、抑制性に働いたりすることが知られています。


これも高草木先生ですね。

Carbacholというのはコリン作動薬です。Achの代わりに用いています。

このお薬を使って網様体脊髄路の抑制野と促通野の変化を見る実験をすると、セロトニンでは促通野が広くなっていて、コリン作動薬が入ると反転するかのように抑制野が広がっているのが解りますよね。

ですので、網様体はセロトニンとアセチルコリンの濃度差で主に体幹のγ系を調整していると言えそうですよね。


皮質〜高次運動野から基底核に投射された情報は基底核ループによって適切な行動や運動を選択すると同時に、PPNに情報を送り、それらの行動や運動が適切に起こるように主に抑制性制御に網様体脊髄路の調整を行っていると考えて良さそうに思います。

抑制性制御と書きましたが、基底核はターゲットシステムを抑制したり(ハイパー直接路・間接路)促通したり(直接路)するので、PPNが抑制されればセロトニン優位になって促通野が広がり、PPNが促通されればアセチルコリンが優位になって抑制野が広がるわけです。

基底核ループに入る情報自体が少なければ、基底核は基本的に抑制的に働くわけですから、PPNは抑制され、セロトニンが優位となって、促通野が広がるのかも知れません。

まぁ、それだけでは無いでしょうけれど。臨床推論によって色々なバリエーションがあるかと思います。ほら、皮質から網様体に投射しているのは前運動野だけでは無く、辺縁系や頭頂連合野など様々な部位からも投射がありますよね。


いずれにせよ、適切な運動出力情報が起きれば基底核からPPNの投射が適正になることで網様体脊髄路からの姿勢筋緊張の異常は調整がつくはずなのです。


ですから、出来るだけ安定していて代償が少ない姿勢で、分離した活動を誘導し、感覚が入力されて側頭頭頂連合野の身体図式が変化し、それらの情報による運動出力情報が適正に基底核に送られると、

PPNによる制御が適正になって、痙性が減弱してより選択的な動きの出力が生じ、その中で筋の粘弾性が回復してくると云うストーリーが期待出来るわけです。


ですので、こういった手技を用いる時には運動が適正になるという状況と同時に、運動に伴ってだんだん筋の粘弾性が回復して痙性と言われる状況が改善することになります。

それは触っていたら解るので、どのくらいそういった手技を続けて良いのかといった目安にもなります。


写真では、ハムストリングスをモールディングしていますが、感覚入力という意味では何処をどのようにモールディングして感覚情報を上行させるのかと云ったことを考えながら触る位置を決めていく訳なのです。


写真の方、この後、またずいぶん歩きやすくなっておられました。

まぁ、Prone Standingに持って行く時や、Prone StandingからBipedal Standingに戻る時なども代償を起こしにくくしながら操作するので、それはそれでまぁ難しいのではありますけれど。




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