お茶の水女子大学で神経科学を研究されておられる毛内拡先生の本です。
先日に読み終わりました。
何冊かの本と一緒に読み進めていたので、ちょっと時間がかかっていますが、この本だけ読むのでしたらそんなに時間はいらないと思えるぐらい読みやすいです。
どちらかというと一般向けにわかりやすく脳のことを解説してあるので、専門的な知識を得たいという人には少し物足りないかも知れませんが、それでも脳の研究の歴史や、現在の到達点などがわかりやすく解説してあります。
古代ギリシャ時代では、脳は血液を冷やすための器官として考えられていたそうです。これは、人が心肺停止状態になると脳は水が多く含まれている臓器なので自己融解によって形が崩壊し液状化してしまうために、それが大事な組織であることに気づかなかったのではないかと述べておられます。
現在では、さまざまな機器が発達してきているので、脳の形や働きがわかってきていますよね。そういった科学技術の発展に伴ってさまざまな新しい情報が生み出されて現在に至っているわけです。
そういった科学技術の発展(機器の発達)で研究がどのように進歩してきたのかとか、現在の研究に使われる機器の問題点とかが簡単に理解できるので、現在の知識を整理するためにはとても良さそうに思います。
また、毛内先生が研究されておられる、グリア細胞、特にアストロサイト関連の情報がわかりやすく書いてありますので、アストロサイトによる細胞外環境や神経伝達などへの調整への関与など、現在ある神経伝達の知識だけでは語ることができない脳の情報処理に思いを馳せることができます。
知能と知性の違い、自由意志など存在しない、脳だけを理解しても脳を理解したとはいえないなどなど、毛内先生がいつもおっしゃっておられる事がしっかり解り易く書いてあって楽しく読まさせていただきました。
全般にわたって脳卒中などのリハビリテーションに有用な知識が散りばめられている様に思います。
印象に残った話題を一つ紹介しておきます。脳の隙間ー細胞外スペースは通常20%(脳全体の1/5)を占めていて、脳の環境を適正にしつつ拡散性伝達に役立っていると考えられるのですが、脳損傷による脳浮腫の状態では5%にまで減少する様です。
この話から考えると、急性期のリハビリテーションにおいて脳の可塑性に基づいた再学習を狙ったアプローチを行おうと思った場合、リハビリテーションの頻度や強度の選択に大きく関わってくる可能性があります。現在早期離床とか、早期の装具装着による立位訓練などが話題に上っていたりしますが、いずれ再考が必要になってくるのかもしれません。
毛内拡先生は、ブルーバックスから「脳を司る「脳」」という本も書かれておられて、こちらもお勧めです。(^ ^)
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