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脳卒中リハビリとセラピストの成長

執筆者の写真: Nagashima KazuhiroNagashima Kazuhiro

PTやOTとして、脳卒中の方にもっと楽に、運動を楽しめるようになって欲しいとか、もっと色々動けるようになって欲しいとか、動きやすくなることで、もっと人生を楽しめるようになって欲しいというような願いをお持ちの方は、私も含め多いのでは無いかと思います。

٩( ᐛ )و


では脳卒中のリハビリテーションを実施する上で必用なことってなんだろうと考えてみたのです。


まず、正常な運動がどの様になっているのかと言うこと、脳の機能についてある程度理解をしておくことは大切だと思うのです。

脳の機能は、まだまだ解らないことが多いのですね。ですから、ある程度。

例えば、身体を動かそうとする際に、どの様な情報が必要かと言ったようなことは大切だと思うのです。

環境がどの様に脳に知覚されていて、どの様な認知になるのか。そう言った情報が入力されていると、脳は外的環境を脳内で再現するわけですが、これだけでは運動情報をつくるわけにはならないですね。自分自身がその環境の中でどの様な位置関係でどの様に存在しているのかと言った情報も必要です。その為には、身体図式と言われるものを構築する情報処理が必用です。


脳内で自分を取り巻く環境と、環境内で自分の手足を含む身体の各パーツがどの様に存在しているのかを同時に情報処理できるので、ここで初めて運動プログラムの生成が可能になります。

このあたりのことを単純に図示すると以下のようになると思います。


単純化した図ですので、あたかも認知と行動が分かれているように書いていますが、実際は密接不可分なものです。認知と行動をあえて分けて考えるのであれば、この2つは非線形関係にあるという事です。ですので、基本的に認知と行動はひとつのシステムとして理解した方が良さそうに思います。


仮に認知の方から考えるのであれば、各種感覚情報が外的環境情報と身体図式情報を構築して、その情報を前頭葉に送ります。

前頭葉、腹側線条体のループ(側座核を中心としたループ)が理性と社会性といわれる、社会の中でどの様に行動すれば最も報酬系が働くのかを演算して、適切な行動計画を絞ります。

その情報は、高次運動野に送られ、基底核ループの運動系で運動プログラムを生成し、一次運動野を中心に運動の実行情報を身体に送ります。脳で身体を操るわけですね。

そして起きた運動は環境内での身体の位置関係を変化させるので、新しい感覚情報を脳に送り返します。こうしたことを繰り返すことで、身体情報は脳の中にアップデートされつつ刻み込まれるように成るわけです。


人は動いているかぎりこのループをグルグルと回し続けていることに成ります。


脳損傷が起きた際、何処が壊れるかによって症状は様々ではありますが、何処が壊れたとしても、身体図式は影響を受けてしまいます。

全てが同じシステムの中で分業しているようなものですから。


先にも書きましたが、身体図式情報は運動出力のプログラム生成のためには重要な働きがあります。


PTやOTは、脳に直接なにかしら〜t-PAだとか血栓回収だとか〜の治療行為が行えないので、身体を通じて脳の情報処理に働きかけることに成りますよね。


すると、結構大切な作業として考えられるのは、この「身体を脳に刻みつける」作業になるのだと思うのです。

適正な身体情報からより効率の良い運動プログラムの選択・生成に働きかけていくと言った感じです。


その為には、身体構造上の知識を深めると共に、セラピストの手から得ることの出来る情報は非常に大きいものになるだろうと思います。

感覚が適正に入力できる軟部組織の状態か否か。運動出力が起きやすい軟部組織の状態なのか。関節や筋肉の状態のみでは無くて、皮膚とか、広くFasciaの状態などを知るのは大切です。それはセラピストが対象となる患者さんに触れることで知ることが出来ることです。

ですので、セラピスト自身の手の感覚というのはとても大切ですね。


そして、患者さんはいつもちょっと崩れた身体図式情報から生み出される運動を起こしているわけですから、その運動から入力される感覚情報から生成される身体図式を含む認知情報は、やはり通常とは異なるものであると云うことになります。ですので、出来るだけ通常の運動出力が起きやすいような徒手的な操作の能力も大切ですね。徒手的操作〜ハンドリングの技術というものです。この技術は、運動がどの様に起きるのか、何処がどの様に異常に感じられるのかと言った観察能力にも左右されます。

こう言った観察の能力を高めるためにも、先に書いた脳の機能のことをある程度理解しておくことは大切だと思います。


もうひとつ大切な事があります。

それは、脳の機能を考えた際に、行動を起こそうとする起点というのは前頭葉、特に腹側線条体の働きによる所が大きいのだろうと言うことなのです。

動くのが楽しいとか、快適であるとか。こういう風に動きたくなるとか。そう言った動きを提供すべきなのだろうと思うのです。これは難しいのですけれど。

脳が何かをしたいと情報出力を開始した際に恐らく最も学習が起きやすいので、何かしたくなるような感覚入力で合ったり課題選択であったりすることはとても大切だと思います。しかも、それがある程度成功しなければ報酬系につながりません。

大切で難しいところですね。ここにはセラピスとのクリエイティブな想像力であったり、様々な経験〜セラピーの経験だけでは無くて、セラピスト自身が生きていく上で経験した事などが大切になってくると思います。


さて、最も大切なこと。

セラピスト自身が諦めないと言うこと。また、患者さんにも諦めさせないと言うこと。

リハビリテーションによって引き起こされる脳の可塑性というのは、脳の学習に依存していると言っても良いと思います。それが、ヘブ則による学習であっても、塚田の時空間学習則によるものであっても、いずれにしてもポジティブな情動やそれによる報酬系の働きはシナプス可塑性には重要な働きがあります。

ついつい、目の前の患者さんに色々アプローチをして反応が思ったようにでないときに、患者さんの脳の損傷範囲が大きいせいでは無いかとか、考えてしまいがち(←私だけ?(^_^;))ではありますが、セラピスとが諦めたら、それは患者さんにも伝わります。(ほら、ミラーニューロンとか在るでしょ)

患者さんが諦めれば報酬系は働きにくくなりますし、何より、様々な運動経験を諦めて定型的な行動や運動を繰り返すことにでも成れば、新しい運動様式や行動半径を広げることなど出来ませんよね。

セラピスとも、学ぶことが嫌になりますし。

患者さんに様々な活動を積極的に行えるようになって欲しいのであれば、セラピスト自身がそう言った態度をとり続けることは大切ですよね。


まとめると、患者さんの身体を脳に刻み込むために、

1.脳の情報処理についての理解をある程度深めること

2.身体構造についての知識も深めていくこと

3.セラピスト自身の手の感覚、身体感覚を大切に育てること

4.人の動きに対する観察力と、徒手的操作〜ハンドリング技術を高めていくこと

5.セラピストが諦めないこと、上手くいかないのを患者さんの性にしないこと


こう言ったことを頭の片隅に置いておいて脳卒中リハビリテーションの経験を積んでいくと、きっとセラピストとして成長できるのでは無いかと思っているのです。







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