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プレーシングの謎

執筆者の写真: Nagashima KazuhiroNagashima Kazuhiro

ボバースコンセプトの基礎講習会に出たのは1994年のことです。

今年が2023年ですから、もうそろそろ30年になるんですね。吃驚します。

それなりに成長はしてきているとは思うのですが、経過した年月に相応しい成長であるのかどうかはやや疑問もあります。

研修会の最後に、何か一言を書けといったアンケートがありまして。「精進します。」と書いた記憶があります。

いまだ精進の途中ですので、ご容赦いただきたいと思います。

話が少し蛇行してしまいました。


今日書いているブログのテーマは「プレーシングの謎」です。

1994年に初めてボバースコンセプトに触れたとき、いっぱい解らないことがあったのです。解ったのは、シニアインストラクターの紀伊先生がデモでアプローチをされた患者さんが、私が予想するより短時間で予想以上の変化を起こしておられたという事だけでした。


で、解らなかったこと。当時は神経生理学的な話に一切ついて行くことはできませんでした。(^^;

それとともに、プレーシングとかホールディングとか。わからないものだらけ。

その中でもプレーシングというのはよくわからなかったんですね。

無意識下の反応である様な説明だったと思うのですが、それがいったいどういったものなのか。

当時はまだ、随意運動(意図的な運動)と非随意運動(不随意運動とは違います。随意運動の対義語として、林克紀先生が使っておられた言葉です)が存在するなどと考えたことが無い臨床4~5年目の小童でした。


その疑問を、ボバースセラピストにお聴きしたとき、猫の話をされていたのです。

猫は飼っていたので、反応としては理解できました。

その話は、飼い猫がご飯を食べているときなど、意識はご飯に向いているわけです。その時、そっとうしろ足とかを持ち上げると、すっと上がって、手を離しても少しの間、もしくは結構な時間あげたままになるという例でした。

ま、飼い猫じゃないと出来ないでしょうけれど。

赤ちゃんも同じような反応を出せると話しておられて。当時赤ちゃんはいなかったので、自分の子供ができたときに確認させていただいたのですが、ま、確かに出ます。


猫の話は実際の映像があればと思って、Youtubeで探してみました。私のイメージに近い感じのものが猫の爪切りの動画でありました。以下の動画の、0:47秒ぐらいからです。


人が猫の後足を持ち上げたときに、確りそれに合わせて屈曲が起きているのが目視できると思います。


なにかしらの刺激で、ふと手や足を操作・・・あれ?ちょっと待ってください。

う〜ん。違うな。セラピーの手技的には操作ですが、プレーシングの反応というのは、徒手的な操作だけで出るものでは無いはずなのです。

手足などの位置座標を空間的に変更されるような物理的刺激に対して。

うん。こっちの表現の方が適切かも。

手足などの位置座標を空間的に変更されるような物理的刺激に対して、その姿勢に変化するように姿勢制御ー運動制御をおこない、その位置に身体を安定させつつ身体を合わせていくような能力、とでも言いましょうか。


こういった能力は、意識していてはできないですし、意識していたら姿勢を変化させるための筋出力が遅れてしまうのです。

PTやOTの方だったら経験されておられると思うのですが、どう動かそうとしていると考えながら意図的に合わせて反応されるかたは、運動の方向性が微妙にずれたり、スピードが速かったり遅かったり。

自然な反応では無くなることが往々にしてあるのです。


で、無意識下に変化に応答するような運動出力をプレーシングというのだ。という事が解ってきたのです。


さて、その神経メカニズムですが・・・。

まだよくわかっていないのです。

そもそも、意識と無意識の関係性が現在の脳科学ではよくわかっていないのです。


それでも少し考えてみます。

筋肉の長さを検出する筋紡錘・腱紡錘の働きが関わっているのは間違いないでしょう。

例えば、手をふと挙上(屈曲)させたとき、三角筋前部繊維がたわんでしまっていては、筋の長さを検出して肩の位置をフィードバックすることができなくなります。三角筋前部繊維は肩の位置の変化に応じて、適切な長さにするために収縮しているはずです。実際、たわんでいたら、弛緩性の麻痺と言うことになります。正常な人であれば手の位置を変化させれば三角筋の長さが変化しているのが見た目でも解るし、触知もできるはずです。

しかし、筋紡錘の反応は伸張に対して収縮をするという反応がよく知られているので、手を持ち上げられた際に逆の動き、肩の伸展側への収縮が強くなるはずで、それは動きに対して追従するように動くのでは無くて、抵抗するような反応が出るはずですよね。

ですから、筋紡錘の脊髄反射的な応答性では無いだろうということになります。

ですよね。たぶん。


そうすると、そういった筋紡錘などの反応性を調整している系がプレーシングを支えているということになるかと思うのです。

脊髄以上の中枢神経系ですね。

脳幹?小脳?基底核?皮質?

何処でしょうね。


脊髄小脳路で入った感覚が脳幹網様体を調節している?

可能性は有るような気がしますね。


頭頂葉と基底核のループも関与しているかも知れないですね。

前頭葉に行かずに頭頂側頭連合野からの網様体脊髄路への出力で調整というのはあり得るかと思います。

ボディースキーマと他動的であったとしても身体の位置覚情報などを比較できそうですよね。


まぁ、私の知るかぎりではありますが、やっぱり神経学的に説明するのは難しそうな気がします。

しかし、実際にある反応であるのは間違いないのです。

この能力が無ければ、なにかに触れたり当たったりして身体の位置関係が変化した際に、それを検出できないという生存にとって致命的に不利な状況が予想されるので、この能力は動物で有る限り存在していると考えた方が自然なのだと思います。


それは動物の持つ自然な反応だと考えていますので、やはりリハビリでも大切に考えて行く必要があると思うんですよね。

理屈はわからないけど。

謎は謎のままかも知れないですけれど。

それが見えている反応であって、それは生体として必用な反応だと思っているわけですから。


٩( ᐛ )و



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