リハ職の活用拡大という流れ
- Nagashima Kazuhiro
- 6 時間前
- 読了時間: 5分
以前勤めていた急性期病院を辞める前に、もう辞めるから思ってること全部言っちゃえと考えたんですね。
365日リハのエビデンスはないこと、ないにも関わらずそれを推し進めるのは、リハ職の専門性を失わせて看護職化あるいは介護職化していくことが予測できること。その時に向けて、今はきちんと専門性を高める様に仕事の時間配分を行うべきであろうと考えていることなどを医師を含めた職場スタッフに叩きつける様に話したことを覚えています。(^^;
もう6〜7年前になりますね。
当時のスタッフで覚えておられる人もおられるかも。
まぁ、話し方もまずかったのか、一部のスタッフ以外には聞く耳を持たれず。💦
とうとう出てきましたね。その手の類を検討しているという流れ。
思ったより少し早いけれど。
ニュースソースはこちら。
リハ職の活用拡大と言うと聞こえはいいのですけれどね。
要は看護業務をリハ職にさせようと言うお話です。
さて。
私がどのような思考をしたのかと言うことを、簡単に書いておきたいと思います。
リハビリテーションの世界でも、「EBM」という言葉はすっかり当たり前になりました。
エビデンスを大事にするのはもちろん大切なことです。
でもその「エビデンス」って、いま主流になっているのはメタアナリシス。
つまり、RCTをたくさん集めて統計的に優位かどうかをみる。
要するに「特定の要素を切り出して、他の条件をなるべく除いて比べる」というやり方です。
もちろんそれは科学的な方法として有効なのだけれど、どうしても要素還元的なものにならざるをえないですよね。
じゃあ、脳と行動の関係ってそんな単純かと言う問題が出てきます。
脳損傷による障害というのはどうやって起こっていて、その人の生活にどう影響するのか。
そしてリハビリテーションという介入は、そうした複雑な問題にどう働きかけるのかと言うことになります。
これを「統計的に有意」と言える単変量的な形に切り出すのって、無理があるんじゃないかと思うんです。
リハの現場にいると、患者さんごとに全然違うわけです。環境や家族のこと、関係性、同じ損傷部位と損傷範囲であっても症状が異なることも多いです――本当に色んな要素が絡んでいるのを痛感します。
それでも今の医療制度は、「エビデンスがある」ことを根拠に方向性を決めるわけです。
でもその「エビデンス」って本当に患者さんの機能を改善することや生活の質を良くすることを示しているのか。
それとも、別の目的があるのかって考えちゃいますよね。
私には、結局「国の経済的な負担を軽減する」という方向に誘導されているように思えて仕方がないのです。(^^;;
例えば「365日リハ」という言葉。
現場では、「患者さんのため」と言いながら、実際は病棟スタッフとして常駐し、看護必要度を稼ぐために使われている側面もありますよね。
それを診療報酬で加算して、「早期離床」「在宅復帰」といった大義名分で制度化してきたように見えるのです。
そして今度は、看護師不足が深刻だと言って、リハスタッフを看護業務にタスクシフトさせようという議論が公然と出てきましたね。
もちろん、以前のコロナ禍では必要に迫られて看護業務を支援した例もたくさんあります。
例えば、日本理学療法士協会・日本作業療法士協会が「医療チームによるコロナ禍の病棟業務支援事例」と言う取り組みを紹介しておられます。
それは本当に大事なことだったし、必要だったと思います。
一時的にリハ職が看護業務を支援することで病棟を維持できた」というのは、医療政策サイドから見れば「看護師不足対策の有効な手段としてリハ職を活用できる証拠」として利用できるわけです。
でも、それを前例にして平時にも「リハ職が看護業務を担う」という制度を作るのは、全く別の話です。
ですが、おそらくこうしたようなデータを持ち出して、議論が進んでいくのは多分間違いないと思うんですね。
それって結局、リハビリ専門職を「看護師の穴埋め要員」に変えることになりかねない。
医療費を抑えたい、看護師不足を補いたい。
そうした現実的な理由が背景にあるのは理解しています。
でもそのために、リハビリの専門性がどんどん削られていくなら、それは誰のための医療なんだろうと思いませんか?
患者さんの脳の再学習を促し、生活の中での活動を支援し、社会参加を後押しする。
本来のリハビリテーションの専門性ってそこにあるはずです。
それを、「看護業務を肩代わりできる便利な人員」として再設計してしまったら、私たちは本来やるべき仕事を失ってしまうんじゃないかと思ったりするわけです。
EBMは大切です。
でも、そのエビデンスをどう読むか、どう使うかは社会が決めます。
そのエビデンスを使って、国が医療費を抑えたいという理由で、私たちの仕事を「コスト削減装置」に変えてしまうことだってできるんです。
だからこそ、現場にいる私たち自身が、自分たちの専門性とは何か、何を守り、何を変えるべきかを問い続けなきゃいけないんじゃないかと思います。
さて、日本理学療法士協会や日本作業療法士協会はどう言う手を打つのでしょうね。
今からでは、少し遅いかもしれませんけれど。
だけど今動かなければ、多分厚労省の思い通りにことは進むはずなんですね。
多分ね。
あ、ほら、私、自費リハビリ事業をしているので、基本的に傍観者ですからこうしたことを好き勝手言えたりするのです。
いいでしょ。
(๑>◡<๑)

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