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麻痺側下肢のプレーシング


左片麻痺の患者さん、歩行はできているとして、歩行時に左下肢の支持の際にきちっと、骨盤が安定せずにちょっとずつ、左荷重時に骨盤や体幹のコラップスがおきるような方がおられたとします。



歩行ができていて、下肢の運動なども、言語指示の入力による運動出力パターンは比較的良好だとしましょう。

言語指示による運動出力が良好であると言うことは左脳言語領域の情報処理結果を右脳に運び、そこからの右脳高次運動野〜基底核ループ〜運動皮質〜出力の経路はある程度保たれていると云うことになるかと思います。

にもかかわらず、左下肢の支持の際に体幹が崩れる。

どうやら、臨床観察をすると、左の股関節外転筋がきちんと働いていない様に見受けられたということにします。

しかし、言語指示による運動出力パターンは保たれているとすると、先ほど書いたようにある程度右脳の運動出力自体の回路は保たれているのにもかかわらず、左股関節外転筋が選択的に出力低下を起こしている・・・という場合も有るかも知れませんが、動きが出ていることから一次運動野の股関節領域の損傷では無いでしょうし、選択的にそこだけが、出力低下を起こすと云うことになると・・・延髄網様体脊髄路の働きが低下していて、股関節周囲の安定性を構築しにくい?という仮説も出てきはしますが・・・。いや、その問題が存在している可能性は有るでしょう。

ただ、それだけでは無いのかも知れません。


で、写真のようなブリッジ姿勢で骨盤を滞空させたまま、左下肢を外転してみてもらったりします。


こんな感じの姿勢をイメージして動いていただいたりしたのですね。

股関節周囲が安定していないだけであれば、左下肢は空中ですし、外転しちゃいそうですよね。


で、何が起こったのかというと・・・



骨盤が、グリンと左に崩れて回るのですね。

で、この人形は左下肢〜股関節が移転していますが、多くの場合、外転するというより股関節の崩れを止めようとして左股関節内転筋が出力を上げてしまいます。結果的に仰臥位では左下肢の外転がある程度できても、こういった姿勢では左下肢は外転できないという結果になったりするのです。


起きた現象を言語化するのであれば、右(非麻痺側)下肢での支持の際に骨盤を安定させることができないと云うことになるでしょうか。

これは、左下肢の運動出力がおきて、左下肢が持ち上がった際に右下肢の支持に対して体幹の出力の調整ができていないと云うことができそうですよね。


この後、歩行時の左の遊脚相を確認すれば良いのですが、麻痺側の遊脚の際にも骨盤〜体幹の問題が隠されているであろう事は推測できます。


右下肢支持での体幹の不安定性はもしかすると、左下肢の運動出力に対する右体幹の先行した姿勢制御のための出力調整が上手くいっていないと云うことを表しているのかも知れません。APAsですね。

左下肢が持ち上がる事に対して、その重みから骨盤が左に傾こうとすると、通常、腹横筋や斜腹筋群が引っ張られて伸びようとし、それに対してγ系がきちんと出力を送っていたら筋紡錘が引き延ばされることに対して緊張が高まって、下肢の重さによっておきる骨盤の崩れが抑えられることになるはずなのですが、そこが上手く機能していない感じ。

体幹筋へのγ運動ニューロン投射と云えば、網様体脊髄路〜橋網様体脊髄路/延髄網様体脊髄路が思い浮かびますね。

橋網様体脊髄路は同側の体幹を中心にγ系を調節していて、延髄網様体脊髄路は対側の近位関節を中心にγ系の調節に関わっているはずです。





脳の出力調整の模式図を見てみます。



この図で示されている、皮質網様体投射は補足運動野や運動前野からの出力ですよね。

多分、この経路が最も強く影響されてしまっているのかも知れないと考える事ができそうですよね。

内包前脚を少し巻き込んで運動前皮質からの網様体投射が困難になっているような基底核周囲の脳損傷、もしくは運動前皮質自体を巻き込んでいる形の脳損傷が想定できるのかもと思ったりします。


麻痺側下肢を降り出す運藤プログラムに対して先行する体幹を中心とした姿勢調節プログラムが十分機能していないために、体幹の崩れが生じ、その結果麻痺側下肢は右脳に際して骨盤の崩れが大きくならないように重心の移動が最小限になるように股関節内転筋群の働きを大きくしている。すると結果的に外転筋の出力は相反抑制を受けて出力が小さくなっている。特に立位や歩行の場面では重心が高いために常にそういった非効率的なパターンに陥りやすくなっている・・・と考えるのであればですね。


先に出したようなブリッジでの姿勢で体幹を崩さないような予備的な姿勢と運動の関連性の経験を積んでいくことは、脳自体の運動出力に対して先行した姿勢制御出力の調整の経験を学ぶことができて、立位場面の姿勢の改善や、歩行時の麻痺側下肢の遊脚の改善、立脚の安定に貢献できるかも知れないと云うことになります。

できるかなぁ等と言いながら、ちょっとチャレンジ風に情動を使って辺縁系からの網様体脊髄路出力を期待しながら骨盤の制御をお手伝いしつつやってみるのも良いかもしれないし、We Will Rock Youなんかのビートに合わせながら聴覚からの網様体脊髄路投射を利用しつつ骨盤のお手伝いをしながらやっても面白いのかも知れません。

いずれにせよ、左下肢の動きに対する無意識下のγ系による骨盤制御が先行することで、体幹の崩れが少なくなってくれば歩行をイメージした立位姿勢でのアプローチに展開するチャンスが訪れるような気がしますよね。


どうでしょうか?


まぁ、こんな考え方も出来そうだネぐらいの感じで読んでいただけたら幸いです。










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