脳卒中の再発率
- Nagashima Kazuhiro
- 3 日前
- 読了時間: 4分
ご利用者さんで、わりと頻繁にお尋ねになってこられることのひとつに、「病院で10年での再発率が50%だと言われた。」との話があります。
これって、本当だと思います?
(^_^;
私は、そうした研究があったとして、それはちょっと母集団のコントロールがきちんとなされていないのでは無いかと思ったのですね。
というわけで、ちょっと調べてみました。
恐らくですが、この話のソースは久山町研究と呼ばれるものです。
これは、九州大学でおこなわれた研究で、九州の福岡の久山町の住民を対象に、初回脳卒中の再発率を10年単位で追った研究です。
研究が発表されたのは、2005年ですね。
40歳以上の1621人を32年間追跡し、その中で初回の脳卒中を起こした410人を10年間追跡調査をおこなったものです。
そのうち再発したのは108人(26%)ですが、研究途中で死亡などにより追跡が困難となる人もおられるので、Kaplan–Meier法で時間ごとの再発確率を推定し、5年再発率を35.3%、10年再発率を51.3%とした研究です。
では、研究手法をもう少しくわしく確認しますね。
久山町研究というのは、そもそも1961年から続く一般住民ベースの前向きコホートで、40歳以上住民を対象に調査しているものです。参加率は70〜80%台、追跡率は99%以上、死亡例の約75%で剖検をするといった、疫学研究としてはかなりコントロールされた研究と言えます。
脳卒中再発に関する研究においては、病型・病型サブタイプ・年齢で分類してデータを追跡されたようです。
具体的には、くも膜下出血・脳出血・脳梗塞で分けて、さらに脳梗塞をラクナ/アテローム血栓性/心原性塞栓等に分けて再発率を比較していますし、年齢階層の違いも見ています。
非常に意味のある研究だと思います。
10年再発率が50%というのをそのまま信じて良い感じもしますね。
(^_^;
しかし、この研究はあくまで観察事実です。
もしこのデータを元に医師が患者さんに伝える10年で50%の再発率になると伝えているとすると、ここに医療従事者の誤解があるような気がするのです。
"Correlation Is Not A Cause"(相関関係は原因ではない=相関関係は因果関係を意味しない)です。
繰り返しますが、この研究は観察をしているだけなのです。
相関関係を示すことになりますが、それは因果関係ではなくて、脳卒中を起こしたということが、因果関係を持って再発を起こすという事を述べているものではありません。さて、脳卒中発症と因果関係がありそうなことと言うと、ミトコンドリアのエネルギー産生能力に基づく血管運動系の補償による血管粘弾性であるとか、睡眠による脳の神経細胞外環境の適正化などが挙げられると思います。これだけではないでしょうけれど。
ミトコンドリアの質と量を保つためには、有酸素運動が良いとされています。
つまり、日常的にどれだけ歩行を含めた運動機能が維持されているかどうかは恐らく脳卒中発症率そのものに影響を与えていると推測出来ます。
実際、座位時間が長いと血管疾患リスクが上がるという研究もあるわけです。
さらに、脳卒中後にうつ病を発症する方も多いですよね。鬱などによる不眠などは脳神経細胞外環境を悪くする因子になりますので、脳血管リスクは上がるものと考えられます。
実際それを裏づける研究も多いのです。
すると、脳卒中を起こしたことが再発に繋がると言うより、脳卒中を起こして、歩行を含めた活動性が減少した結果、座位の時間が長くなる人と、それでも活動的に歩行を用いた全身運動を継続出来ている人では再発率は異なることが予測可能です。
同様に、脳卒中後でも夜間にきちんと眠れている人は、脳卒中後睡眠障害を持つ人と比較すれば、再発率は低いことでしょう。
つまり、久山町研究を元に、「脳卒中を発症した患者さんの10年後再発率は50%である」と結論づけて、患者さんにそういった説明をするのは論理的に誤りであると言えますね。
(あぁ、こんなこと言って嫌われたりはしないだろうか・・・ (^_^;)
蛇足になるかも知れませんが、研究そのものはとても良質な前向きコホート研究なのですよ。
要は、その研究を読む側、或いは利用する側に問題があるかも知れないという事なのです。
この研究は、観察による事実を述べているので、それがどの様な要因によるものなのかとか、それを改善させるにはどの様な方向性が大切であるのかと言った議論をつくる土台になるべき研究だと思うのです。
今後、母集団のコントロールに、病理学的な視点から因果関係を明確に出来るような研究が沢山出てくると、きっと今より幸せな時代になると思います。
それを期待しているのです。
(*^_^*)
そして、私は、脳卒中後の方に対して、
「10年での再発率が50%ある。」という数字だけが独り歩きするのではなく、
歩行を含めた運動を出来る範囲で継続すること。
夜に確り眠ること。
きちんと食事をとること。
そうした日々の積み重ねが脳卒中再発予防にとって大切なのだという事が、もっと一般的に語られるようになるとよいなぁと思っています。
(*^_^*)




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