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運動学習のふたつの要素

以前にも書きましたが、運動学習というのは、結局特定の回路におけるシナプスの伝達効率の変化だと考えて良いと思うのです。この学習には2つの大きな要素があります。


ひとつは、繰り返しですね。

Hebbの法則と言われているものです。有名です。

ドナルドヘッブという研究者が提唱した物です。

ヘッブはセルアセンブリと云う概念を作り出します。セルアセンブリとは、接続された細胞の組み合わせで特定の情報を表していると云った考え方です。

このセルアセンブリの中で、特定の情報表現を学習するためにはシナプス伝達効率の変化が必要となってきます。ここで、Hebbの法則という考え方です。細胞Aの発火と細胞Bの発火が繰り返されると細胞Aと細胞Bのニューロンの結合が強くなるという構造の変化ですね。リハビリで繰り返しが必用だと言われるのは、こういった科学的根拠に基づく物なのですね。


もうひとつが、アストロサイトによる学習です。アストロサイトはニューロンモジュレーターの働きがあるそうで、びっくりした時、情動を伴う時、脳がピンチな時などに神経収縮物質に敏感に反応してグリア伝達物質〜グリア細胞から放出される液性因子で、ニューロンの活動と可塑性を制御して言われる化学物質を放出するそうなのです。それがシナプスに作用して、シナプスがそんなに発火していないにもかかわらずシナプス可塑性を引き起こすことになります。つまり、繰り返しを必用としない学習です。


あかちゃんの動きを見ると、動きに興味を持ち、楽しみながら身体を動かしていますよね。

もちろん、ご両親が楽しそうに為ているので、ミラーニューロンなどの働きでより楽しくなっているという側面もあるのでしょう。いずれにしても「楽しんでいる」とか「面白がっている」というようなところが多くみられますよね。


「楽しい」から、「面白い」からアストロサイトによる急速な学習が起こり、「楽しい」から、「面白い」から繰り返しがおきているように私は感じるのです。

下の動画はYouTubeで見つけた物です。

幸せな気持ちになれると思うので、是非見てみてくださいね。

(*^_^*)


手足をバタバタさせたり、身体を前後に揺すってみたり。

楽しそうですよね。

これだけ情動が働いていたら、グリア伝達物質もきっとたくさん出て学習を進めていることでしょうね。

(*^_^*)


先日、とあるセラピストからちょっと話を聞きました。

上司から「機能回復に目を向けすぎだ。やったって動ける様になる訳がない。もっとICFに基づいたリハビリをしろ。」と怒られるとのことです。

脊髄反射の様に、「そんなもんやってみないとわからんだろ。」と思ったのではありますけれど。(^_^;)


私の認識では、ICFは国際生活機能分類といわれるもので、分類なのです。


分類と云っても完全な物ではありません。私が学んだ頃は、IDH(impairment Disabirity Handicap)のみの分類モデルでした。

時代の経過とともに変化する物なんですね。

変化するという事は完全な物ではないのです。

ICFも今後変化する物なのでしょう。


私の感覚ですが、ICFは余りに合理的にできすぎている感じがするのです。

例えば、この分類には赤ちゃんが持つ様な自らの身体、身体の動きなどを面白がりながら探索したりする様な活動は含まれていない様に思います。これでは、運動学習の側面から云えば非効率、非合理と思います。


もっと人は自由に活動をしている物で、すべてが生命レベル・生活レベル・人生レベルの3つに分類出来る様なものではないんじゃ無いかなぁなんて思うのです。


たとえば、鉄棒があったらぶら下がってみたり、懸垂してみたり為たくなることだってあるでしょうし、ブランコをみたら座ってぶんぶん漕いでみたいと思ったりして、実際にすることだってあるでしょう。木の棒があったら、それを手で持って振り回してみたり、ちょっとした細い棒の上をバランスを取りながら歩いてみたり。うまく出来たら楽しくなったりして。繰り返して。飽きるまで。

遊びに分類して、「活動」だという事も出来るのかも知れませんが、生活に必要なものではないのかも知れません。社会に参加していると云うほどのことでは無いし、趣味と云うほどでも無い。だけど面白がってやる様なこと。

そんなことが結構、脳の学習(可塑性)につながっていって、運動の多様性を生み、環境適応力を高めていくのだろうと思うのですよ。


ですから、ICFという一見合理的に見える分類に従ってリハビリテーションを勧めることが、すべてに面において正しくて、全員がそうすべきであるという様に考える人がおられるとすれば、その人は間違っていると私は思うのです。

ICFは、ただの「分類」なのです。

分類などに従う必要はありません。


PTとか、OTとか、STと云われる職域に生きる人達は、脳や身体の構造・機能からこれらの分類をさらに分析して、最も適切と考えられるアプローチを提案し、実践してくことが出来る人のはずなのです。(そういう視点から云えば、心身機能や身体構造について活動や社会参加と結びつけつつ必要な機能回復を目指すのであれば機能訓練と云われる物もICFの分類の中でリハビリテーションを進めているとも云えますけれどね。)

それを否定し、この職域から心身機能や身体構造への拘りを捨ててICFに従えというのは間違っていると思うのですよ。


ここで、動画を貼り付けようとしたのですが、上手く埋め込めなかったので、URLを。


手を伸ばすとか縮めるといった動きです。

先週より今週が少し上手になってきておられます。

ご本人は、曲がって動かなかった手がこんな風に動くと思っておられなかったので、動くことや上手になることが面白いようで、繰り返し手を伸ばしたり縮めたりされていました。


なんでも面白がって繰り返される様になるとリハビリが上手くいっているという感じが為ます。

歩くのでも。さっきより楽だとか、安定しているとかなにかしらの変化が起きて、それを楽しむことが、運動学習に基づくリハビリにはとっても大切だと思うのです。

そして、それはやらなかったら面白がることもないし繰り返しも起きない。


どうやったら、リハビリを楽しんで頂けるのか。

麻痺した手や足や体幹、口の動きを楽しんで頂くために何をどの様にすれば良いのか、私はそういった事を一生懸命考えているのです。







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