自費リハビリに関する噂
- Nagashima Kazuhiro
- 12 分前
- 読了時間: 4分

未だに、「自費リハビリは違法」「グレーゾーン」という声を耳にすることがあります。しかしそれらは、多くの場合は制度理解が十分でなかったり、「医療」と「保険外サービス」「名称独占」と「業務独占」の整理が曖昧なまま語られているケースが多いように感じます。
ここでは、現行制度と法令の文面、行政運用を踏まえて整理します。
■ 基本整理
法律が規定する理学療法・作業療法は医療行為として定義される。
主に保険医療制度のもとで提供され、医師の指示を前提とする。
理学療法士・作業療法士は名称独占資格であり、業務独占ではない。
そのため、保険外領域で機能向上のための運動指導・動作練習を行うこと自体は可能。
ただし、「理学療法」「作業療法」と名称を付して提供することは不可。
保険外サービスは民間契約に位置づけられる。
医師の処方箋や指示書は必須ではないが、医療判断が必要な場合は受診を勧めるのが望ましい。
医療行為(業務独占)に該当するため不可なもの
‣ 病名の診断・病態の断定
‣ 治療方針の決定とその断定
‣ 注射・点滴・採血などの侵襲的行為
‣ 薬剤処方・投薬管理
→ これは医師の独占領域であり、民間リハ/自費では扱わない。
表現・提供上の安全な言語
避ける:治療・診療・治します/改善を保証する表現
使用推奨:支援・練習・サポート・改善を目指す・可能性を探る・伴走する
以上を踏まえると、
自費リハビリは「適切な範囲で・名称を誤用せず・医療行為に踏み込まない限り、合法的に成立するサービス」
という理解が現実的でしょう。
ところが、2015年1月30日付で、日本理学療法士協会は会員あてに「保険適用外の理学療法士活動に関する本会の見解」を出しています。そこでは、
「理学療法士とは…医師の指示の下、理学療法を行うことを業とする者をいう」 との法定定義を挙げ、「医師の指示を得ずに、障害を有する者に対し理学療法を提供し、業とすること」は違反行為である。
としておられるようです。
この文言にはおおきな矛盾があります。
お気づきの方もおられると思いますが、保険適応外においては理学療法という名称は使用出来ないので存在しないのです。
つまり、理学療法士の免許を持っているだけの普通の人が理学療法と定義される運動指導などをおこなったとしても、それは理学療法とは呼ばれないはずです。
また、保険適応外にある時点で、医師の処方は必ずしも必用ではないという解釈になります。
SNS上では、「自費リハは、医業類似行為ですからあはき法12条違反で、痴漢・盗撮と同じ50万円以下の罰金刑の対象です。」と言うように、あはき法12条というキーワードを用いたものも時折見かけます。
あはき法 = 「あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう」に関する法律
正式名称は👇
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律
略して「あはき法」。主に 国家資格がなければ治療目的のマッサージや鍼灸をしてはいけない という決まりです。
自費リハビリでマッサージ的な介入が含まれる場合であっても、その目的が治療ではなく動作獲得・機能向上のための補助であるなら、あはき法が規制する「治療目的の施術」とは性質が異なります。
よって、自費リハビリはあはき法12条に直ちに抵触するものではなく、一般的には適切な枠組みの中で提供可能と考えるのが自然でしょう。
以上のように、現行の法制度に照らせば、「自費リハビリ=違法」という論理は成立しないと考えるのが自然です。
「今後規制される可能性は?」という疑問もあるかもしれません。しかし、仮に理学療法・作業療法を業務独占化しようとすれば、スポーツトレーナー、フィットネス指導者、ダンスインストラクターなどの運動指導領域にまで規制が及ぶことになります。
理学療法や作業療法が用いる方法論は、基本的に「身体活動・運動・作業」という一般的かつ日常的な手段を基盤としています。そのため、ここを法律で独占すると波及影響が大きく、現実的には制度変更は極めて困難ではないかと推測されます。
■ 開業権(=医療保険下での単独リハ提供)の可能性について
興味を持たれる方も多い話題ですが、もし理学療法士・作業療法士に開業権が導入され、保険適用で単独リハが可能となった場合、
期間・内容に厚労省の制限がかかる
財源調整のため長期リハは認められにくい
可塑性に基づく長期支援と相性が悪い可能性がある
といった課題が想定されます。
特に脳損傷の回復は長期的な脳可塑性に依存します。もし保険枠に組み込まれると、**現在の自費リハの最大の強みである「自由度」「個別性」「継続性」**が損なわれるリスクがあるとも感じています。
私は個人的に、
開業権が実現したとしても、自費リハビリという形態は残存し続けるむしろ患者の選択肢として共存する未来の方が自然
と考えています。
※本稿は法的解釈の断定ではなく、公開情報に基づく個人の見解です。
制度判断は各事業所の責任にて行い、必要に応じ行政・法務専門家へ確認してください。
(*^_^*)



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