top of page

文春の罠とメタアナリシスの罠

更新日:3 日前

〜その科学的根拠は本当に科学的なのか?〜


最近、文春のネタで高市首相を追い込む野党という話が良く報道やSNSで出てますね。

予算委員会なんだから、予算のことをちゃんと議論しろよと突っ込みたい気持ちもありますが、ここは冷静に見てみましょう。

(^_^;

 

さて、現状です。


2026/4/29

週刊文春が、2025年秋の自民党総裁選中に、高市陣営が対立候補を中傷する動画を作成し、SNSに投稿していたと報じます。対象として、小泉進次郎氏、林芳正氏が挙げられ、「無能」「アウト」などの表現が含まれていたとしています。

文春は、公設第一秘書・木下剛志氏が陣営メンバーに動画投稿に関するメッセージを送っていたとも報じていたようです。


2026/5/8~11

国会で立憲民主党の森祐子議員が、この文春報道について質問をします。

高市首相は「他の候補に関するネガティブな情報、動画を作成して発信すると云った事はいっさいおこなっていないと報告を受けている」と答弁をされたようです。


2026/5/20

文春は、単なる証言の記事ではなく、根拠の一部として、2025年9月から2026年3月の間に、木下秘書と動画作成者・松井健氏との間でショートメール・Signal・LINEのやり取りがあり、木下氏から計67通のメッセージが送られていたと報じています。


2026/6/3

文春は、木下秘書と動画作成者・松井健氏らが2025年12月17日に開いたとする、Zoom会議の音声データ、43分48秒を入手・公開したと報じます。

記事上では、「デジタルとアナログのコラボレーションで精度を上げていく」などと語ったとしているそうです。

ただし、43分の音声データ全体や、前後のLINEなどの詳細は有料部分におかれていて、初月300円、月額2200円などの購読導線がひかれています。


2026/6/4

衆参予算委で、中道改革連合の伊佐進一議員が、文春が公開した音声について「音声が秘書本人かどうか確認して欲しいと事前通告していたが、結果はどうか」と質問をします。高市首相は、自身を批判する週刊誌の有料会員になりたくないとして、「有料会員になること自体、私は拒否します」と答えたそうです。

野党は、音声提供を申し出たそうですが、委員長はその場での確認を認めなかったという流れのようです。

個人的には、まぁ、現在の生成AIであれば当人の声を模して好き勝手会話を造ることが可能ですから、音声のみで証拠とすることも出来ないだろうと思ったりします。

(^_^;


2026/6/5〜

SNS上で、文字起こししたら文春のガセだった説が拡散されはじめます。


とまぁ、こんな時系列ですね。


国民の注意が政治に強く向いたという点ではとても評価が出来ますね。

文春は一見、高市政権の批判をしているように見えますが、これがガセであった場合、罠にはまったのは野党である立憲民主や中道の、追及をした議員です。

彼らは、ソースの確認もせずに文春の記事を鵜呑みにして高市首相を陥れようとしたという事になりますからね。

まぁ、現状でガセかどうかはまだ私は解りませんけれど。


何れにせよ、文春は注目を集め、有料会員を増やしたことでしょう。そして、記事が真実であれば、文春は面目躍如の文春砲を炸裂させたと云う事になりましょうし、ガセであったなら、野党議員を追い詰める罠を作った面白い動きをする週刊誌としての評価を得ることになるでしょう。文春は疑惑があると報道しただけの様ですからね。疑惑は疑惑であって、真実とは云いきっていないことになりますよね。

何れにしても踊らされたのは政治家だけで、文春の一人勝ちです。

(^_^;


この事例が示すのは、情報というのは一次ソースが重要であるという点と、情報は使い方によって、負けることなく利益を得ることが出来るという事であったりするのだろうと思います。


さて、私が何を言わんとしているか感づいておられる方も・・・(^_^;

そうです。

これは政治や週刊誌報道の話だけでは無いと思うのです。

リハビリテーション医学の世界にも似たような構造がありますよね。

特に私が問題だと思っているのは、「システマティックレビューで示された」とか、「メタアナリシスで有効性が示された」という事になると、それだけでかなり強い科学的根拠がある様に扱われますよね。


勿論、システマティックレビューとかメタアナリシスそのものが悪いわけではありません。

複数の研究を集めて検討することには、大きな意味があることでしょう。


問題はその中身なのです。


システマティックレビューやメタアナリシスで検討された一つ一つの研究が一次ソースと言えますよね。


それは本当に適切な研究だったのか?

例えば母集団の選別は適切か?

対象者は同じものとして扱っていいものであったか?

介入内容は同様なものとして比較可能なレベルに絞られていたか?

評価に使われた尺度はいったい何を測っていたのか?

その評価は、研究結果を出す上で適切なものであったのか?

そして、それらを統合して一つの結論を導いていいものであるのか?


そういった事を一つ一つ丁寧に検証しないまま、「メタアナリシスだから正しい」と考えてしまうと、それは「文春が書いたから本当だ」と言っているのと同じなのです。


どういう研究であれ、一次ソースの確認というのはとても大切です。


ただ、個人でそれをしようとするのはほぼ無理に近いですね。

であれば、せめてメタアナリシスの報告であっても、その結果を疑うことをした方が良いと思うのです。


科学的であろうとするのであれば、どのような事に対しても鵜呑みにすることなく、疑い、確認し、考えることは大切ですよというお話でした。

情報に踊らされたくないですよね。

(*^_^*)


さて。


その「科学的根拠」によって誰が一番利益を得るのでしょうね?




追記:

ここまでシステマティックレビュー/メタアナリシスを批判的に書いたので、少しだけですけれど調べてみました。

個人で調べ上げるには、時間的に無理がありますのでChatGPTに頑張ってもらいました。

(^_^;

例として取り上げるのは、


〜脳卒中治療におけるボバース概念の有効性:システマティックレビュー


2020年に出た論文で、PubMed上の要約では、2名の独立研究者がPEDro scaleで研究を評価し、best evidence synthesisでエビデンスの強さを判定した、とされている。結論としては、Bobath conceptは脳卒中後リハビリの他アプローチより有効とは言えず、上肢の運動制御についてはCI療法や患側上肢の強制使用など、他アプローチが優れる中等度のエビデンスがある、という内容です。


このレビューに使われた論文は全部で15論文だそうです。

この15本の候補を探すだけでも、ChatGPTを使って結構時間がかかりました。

通常のセラピストであれば、仕事をしながらの作業になりますので、2~3ヶ月かかることになるだろうと思います。

それでも、採用された可能性のある15本の候補を拾うところまではできました。

しかも、これは可能性のある候補であって、実際に検討された15論文が確認でき無かったことは意外でした。

本来なら、対象とした論文は、誰でもすぐアクセスできるように明示すべきだろうと思うのです。



現時点で確認できた範囲では、以下のような研究が候補として挙がります。


1

van der Lee ら:forced use/CI療法系 vs NDT/Bobath系

上肢・患側上肢の強制使用

慢性期脳卒中66名を対象に、forced useとNDTに基づく同量訓練を比較したRCTとして関連情報に出てくる。

2

Wolf ら/CI療法系の研究群

CI療法 vs 通常・従来療法

Díaz-Arribasの結論にCI療法が出てくるため関連候補。ただしBobath直接比較かは要確認。

3

Langhammer & Stanghelle 2000

Motor Relearning Programme vs Bobath

急性期初発脳卒中61名を対象に、MRPとBobathを比較したRCTとして知られる。

4

Langhammer & Stanghelle 2011前後の追跡・関連研究

Motor Relearning Programme/Bobath

同一研究系列または長期追跡の可能性あり。採用論文に入っているか要確認。

5

Van Vliet ら:Comparison of Bobath based and movement science based treatment

Movement Science Based Treatment vs Bobath

Bobath系とmovement science approachを比較したRCTとして頻繁に引用される。

6

Lennon ら:Bobath concept + task practice系

Bobath based physiotherapy vs structured task practice

「Bobath conceptに基づく理学療法が歩行改善に寄与するか」というRCT系研究。

7

Tang ら 2005:Problem-Oriented Willed-Movement therapy

POWM vs NDT/Bobath

認知機能低下を伴う脳卒中者に対し、POWMとNDTを比較。Physical Therapy誌の抄録で確認できる。

8

Dickstein ら 1986前後:Stroke rehabilitation: three exercise therapy approaches

Bobath/PNF/従来療法系

古典的な三治療法比較として引用される候補。

9

PNF vs Bobath系のRCT

PNF vs Bobath

StrokeEd要約では、バランス項目でBobathがPNFより有利だった研究があるとされる。

10

Traditional functional training/functional activities系研究

functional training vs Bobath

StrokeEd要約では、ADL比較にfunctional trainingやtraditional functional retrainingが含まれる。

11

Pohl ら系:部分免荷歩行・gait trainer研究

body-weight support/gait trainer vs Bobath

StrokeEd要約では、部分免荷歩行やgait trainerとの比較が含まれる。

12

Rhythmic Auditory Stimulation研究

RAS vs NDT/Bobath

PEDro検索結果にも「near-ambulatory patients early poststroke」でRASがNDT/Bobathより歩行改善と出る。

13

Mirror Image Movement Enabler, MIME研究

ロボット/MIME vs Bobath・従来療法

StrokeEd要約ではMIME系ロボット介入がBobathより短期ADLで有利とされる。

14

Masiero ら系ロボット研究

robot-assisted upper limb training vs Bobathを含む従来リハ

SAGE抄録では、対照群がBobath techniqueを一部含む従来リハで、上肢ロボット訓練と比較されている。

15

orthopaedic treatment approach vs Bobath系研究

Bobath vs 整形外科的治療アプローチ

StrokeEd要約では、急性期患者で短期的にBobathがorthopaedic treatment approachより有利だった研究があるとされる。


で、まぁ、どれでも良いのですが、個人的な興味から、

1.van der Lee ら:forced use/CI療法系 vs NDT/Bobath系の報告を確認することにします。

この報告はおそらくこちらです。

〜慢性脳卒中患者における上肢の強制使用:単一盲検ランダム化臨床試験の結果


以下、この報告のアブストラクトです。


背景と目的:脳卒中サバイバー全員のうち、30%から66%が日常生活活動において影響を受けた腕を使用できないとされています。強制使用療法は慢性脳卒中患者において腕の機能を改善するように見えますが、決定的な証拠はありません。本研究は、強制使用療法の有効性を評価します。

方法:観察盲検ランダム化臨床試験において、66名の慢性脳卒中患者に対し、非麻痺側の固定化(非麻痺側の腕の固定化と集中的トレーニングを組み合わせた)または同等に集中的な両手作業トレーニングのリファレンス療法のいずれかに、神経発達治療に基づく2週間の期間で割り付けられた。成果は、リハビリテーション活動プロファイル(活動)、アクションリサーチアーム(ARA)テスト(器用さ)、Fugl-Meyer評価尺度の上肢セクション、運動活動ログ(MAL)、および問題スコアに基づいて評価されました。最小臨床的有意差(MCID)は、研究開始時に決定されました。

結果:最終治療セッションから1週間後、ARAスコア(3.0点、95%信頼区間1.3〜4.8、MCID5.7点)およびMAL使用量スコア(0.52点、95%信頼区間0.11〜0.93、MCID0.50)において、強制使用群と両手併用群(ベースライン差で補正)に有意な効果差が認められました。他のパラメータは、顕著な差異効果を示しませんでした。1 年間の追跡効果は ARA のみで観察されました。ARA と MAL の使用量スコアに対する治療効果の差は、感覚障害患者とヘミネグレクト患者それぞれ臨床的に有意でした。

結論:本研究は、強制使用療法が影響を受けた腕の器用さ(ARA)に対して小規模ながら持続的な効果を示し、日常生活活動中の患部の使用量(MAL使用量)に対して一時的な臨床的に有意な効果を示した。強制使用療法の効果は、感覚障害患者およびヘミネグレクト患者のサブグループにおいて、臨床的に有意でした。


66名の母集団をもつことは解りました。

そして、この報告においてボバースコンセプトという表現はなくて、両手作業トレーニングとされています。この報告に基づく後続レビューがこの対照群を「Bobath therapyに基づく両手訓練」と解釈・分類していて、両手訓練がボバースコンセプトによるセラピーであるという認識を形づくったようですね。

ボバースを学んできた者としては、両上肢のみを対象にしたセラピーの展開というのはボバースコンセプトではないという違和感があったので、この経過を知って納得しました。

この研究はそもそもボバースコンセプトを対象にした研究ではありません。

(^_^;

それでももう少し調べてみます。

66名の母集団がどの様なものであったのかという事は気になりますね。同様な損傷部位、損傷範囲、症状に対しておこなったのか、それが出来なかった場合の対応はどうであったのか。

結論を言うと、66名の損傷部位や範囲、障害の程度などについては追跡できませんでした。

ただ、対応としては、

66名を個別に2群へランダム化している。方法は、コンピュータで作成した8人単位のランダム置換ブロック。割り付けは、 初回評価 の情報を知らない著者の一人が行ったと記載してあります。

まぁ、それは良しに為ましょう。ただ、以下の記載があります。


「intake時点で両群に発症後期間とFugl-Meyer Assessmentスコアに統計的な有意差があった。」


既に報告すべき実験デザインの要件を逸脱していますね。

あ、素人の感覚です。(^_^;

正確に言うと、少なくとも、両群がきれいにそろった比較とは言いにくくなりますので、結果の解釈には注意が必要であるという事になるでしょうか。

しかも知りたい患者さんの損傷部位や範囲、障害の程度などの情報には触れることが出来ないのです。

さらに、この研究ではランダム化後に21件の割り付け逸脱があったとされています。本来forced use群になる予定だった11名が対照群へ、本来対照群になる予定だった10名がforced use群へ移っています。つまり、最初にランダムに分けたはずの分類が、治療開始までにかなり崩れているのです。どちらがどうなったかは解りませんが、道路事情が悪いか、家庭の事情か、はたまたこの研究に余り協力的な気持ちでなかった人達である可能性も有りますね。(^_^;


一本目でこれです。

まぁ、後は皆さんの判断にお任せすることにしますが、研究者の間で、こうしたシステマティックレビューやメタアナリシスなどの問題は既に話題に上っていて、色々議論されているようです。


「ゴミを入れれば、ゴミが出てくる(Garbage In, Garbage Out)」:

メタアナリシスがどれほど高度な統計手法であっても、統合される一次研究(RCTなど)の質が低かったり、バイアスがかかっていたりすれば、結果もまた信頼に値しないという指摘は、エビデンスに基づく医療(EBM)の専門家の間でも非常に重要視されています。


「出版バイアス」の根深さ:

ネガティブな結果(有効性がないという結果)が出た研究は論文として発表されにくいため、メタアナリシスに組み込まれるデータ自体がすでに「陽性結果」に偏っているという問題は、科学研究における構造的な課題として広く認識されています。


「異質性(Heterogeneity)の無視」:

「母集団や介入の同一性」についても、臨床の専門家からは「統計的に統合可能に見えても、臨床的な文脈や患者背景が全く異なるものを混ぜ合わせることの妥当性」を問う声は根強く存在します。


「エビデンス階層の逆説」:

システマティックレビューがエビデンスの頂点であるという階層構造が、かえって現場のクリティカルシンキングを停止させているのではないかという議論は、医療社会学や科学哲学の文脈でしばしば語られるテーマなのです。


まぁ、SNS上でシステマティックレビューやメタアナリシスを根拠にしてリハビリをしていると仰っておられるセラピストの方達は、きっと、そうした報告の一次ソースをきちんと確認されておられるのだろうと思います。

凄い労力ですね。


私には、とても真似できません。


だからこそ私は、「システマティックレビュー/メタアナリシスで示されています」という言葉を聞いた時ほど、少し立ち止まるようにしています。




コメント


住所

〒692-0011

島根県安来市安来町1622−2

駐車場:

軽1台

普通車の方は少し離れた場所にあるので予めご連絡ください。

 

  • White Facebook Icon
  • White Yelp Icon

© 2023 by Nick Erickson Physiotherapy. Proudly created with Wix.com

bottom of page