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2022いんすぴゼミ3回目



今回は「(記憶の)つながりのつくられかた」というところからです。

記憶の貯蔵は、現代ではシナプスの可塑性に基づいている考えられています。しかし以前(1970年代)、長期記憶はDNAやRNAに貯蔵されていると考えられていたようです。

そしてRNAに貯蔵された記憶は、ある動物からそのRNAを単離して別の動物に注入すれば、受容者はRNAの提供者が学習した内容をまんま知ることになるはずだという理屈が通り、そう言った論文が定評ある科学雑誌に掲載されていたようです。今の知識から考えれば驚くべき事のように感じますが、今、そのようなことが起きていないと断言が出来ないのが脳科学なのではないでしょうか。

読み進めるかぎり、記憶のメカニズムはセル・アセンブリ仮説によって説明が可能であるもののような気がします。

前回も少しセルアセンブリのことをかきましたが、特定の神経細胞、或いは細胞群の組み合わせで情報を表現していて、似たような、もしくは関連した情報には重複する細胞/細胞群が存在していると考えればプライミング効果と言われる現象が神経学的に説明できそうに思います。


本の内容から離れますがこのセルアセンブリによる情報表現の考え方は運動にも当てはまりそうな気がします。今読んでいるところでは記憶に関するバグについてかいてあるのですが、運動にも似たようなバグが存在しているように感じるのです。例えば、身体図式の手の位置情報は、その位置によって起こしうる手の運動(動作)パターンとつながっているように思います。手先が首元にあるときはボタンをつけたり外したりする為の運動パターンであったり、なにかをつかんで口元に持って行くとか口元から離すとかいったパターンであったり。なぜこのようなことを思うかといえば、抗失行は左手がボタンをはめているときに右手がボタンを外したりとか、トイレで用をたそうと右手がチャックを下ろしているときに左手がチャックを上げてみたりと言った症状のことですが、これなどは脳梁の病変で起きるようです。左右の手の運動の協調については補足運動野が対側の基底核に投射しているので片方の手の行為の目的やパターンなどは反対側の基底核に情報を出力して反対側の手の出力パターンに影響を与えているはずなのですが、脳梁損傷ではこういった出力調整がおこなわれなくなるため特定の目的に沿って両手を動かすことが困難になると考えられると思うのですが、その際情報を受け取れない反対側の手の運動出力選択が上手くいかなくなると、手の位置情報からくる様々な運動の選択肢から運動目的に拮抗した運動を選択する場合もあると考えられるのでは無いかと思うからです。

他の失行などの症状を見てもそうですが、身体図式による四肢の位置情報による運動選択、或いは環境のなかで自分自身の位置情報による行為選択などはおそらく強く結びついているのではないかと思います。

(私は基本的に失行といわれる症状が認知の問題と関連していると考えているので、いうのであれば失行失認などの表現が正しいと思っているのですが、ここでは失行単体の表現がわかりやすいと思うのでそうしています)


ほら、手に持った食べ物ではない物を何となく口に入れてしまったり、顔を洗おうとして洗面所に入ったらついつい手が歯ブラシの方に伸びかけたり。電話で話しながらペンを握っていたら全然関係の無い単語を紙に書いていたり。そんな経験が全くない人はいないんじゃないかなぁ・・・私だけ???


大きな意味では解剖学的にもそういったところはありそうですよね。特定の機能が特定の場所にある程度集中して集まっているのは脳の機能局在といわれていますので、現在では受け入れられている考え方です。似たような機能をさらに分化しているのがこのセルアセンブリのメカニズムだとすると運動の多様性の説明がしやすそうですよね。異なる形のコップの持ち方ごとに異なる神経細胞の動員が必要であれば星の数ほどあるコップの持ち方を脳が出力するためには無限の脳神経細胞が必要になりそうですし。


ここまで考えてみると、リハビリテーションにおいてセルアセンブリの考え方は色々有用な感じがします。どの細胞を動員するかということなのである程度損傷に対する回復のメカニズムを説明しやすくなりますし、回復のための手法を考える際に、例えば食事の時は麻痺した手をきちんとテーブルの上に置いておくだとかそういった事が運動を促すためにはとても大切で有る事になります。

仰臥位で口の周りに手を置いておく感覚刺激は指を口に入れるとか唇をなでるとかそう言った運動出力のプログラムを選択させやすいかもしれません。身体のどの位置でどのような動きを誘導するのかといった事を配慮するひとつの情報にはなりそうに思います。


そんなことを考えながらセルアセンブリについてネットで検索していたら、脳科学辞典というサイトで面白い記載を見つけました。

ここの「Hebbのセルアセンブリ」という項目のなかに

”Hebbが1949年に発表した著作”Organization of Behavior”[4]は「引用されはするが読まれることのない幻の名著」(行動の機構、鹿取他訳、下巻 p.265)[5]として知られる。~中略~この著作には、神秘主義に陥りがちであった心理学的議論をいかに論理的・合理的に構成するかに対して熟考された内容が展開されている。”

と書いてあります。

毛内先生と同じですね。(*^_^*)


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