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執筆者の写真Nagashima Kazuhiro

半球間抑制のメカニズム

更新日:2023年8月15日




半球間抑制自体は50年ぐらい前に発見されていたそうです。

近年リハビリにおいてその重要性が注目されてきていたり、メカニズムが少しずつわかってきている状態です。

前回の半球間抑制の記事を読んでいない方は読んでおいていただきたいと思うのですけれど。

半球間抑制の知識がなぜリハビリに大切なのかといえば、麻痺側の麻痺の回復を困難にしている可能性や、認知や身体図式などに影響を与える要因になっている可能性があるからです。


まず、損傷をした側の脳の機能が落ちるせいで様々な(主に)反対側の麻痺や身体図式、認知の障害が出現するわけです。

そして、その損傷によって非損傷側の脳機能の抑制が外れてしまうことで非損傷側が過剰な興奮を起こし、損傷側の脳の機能を通常より強く抑制してしまうことから、回復を困難にしている可能性が高いというわけです。

簡単に言えば、いい方の手足を一生懸命使って生活動作や移動動作を獲得すればするほど麻痺した側の回復の可能性が低くなるという関係になっているということになります。

前回に書いたように、リハビリに関わる医療費をある程度低く抑えるために短期間で自立させていく現代リハビリ医療の方向性は患者さんが本来持っている回復の可能性を低くしてしまっているということもいえます。

そのことを知っているリハビリの施設においては、保険医療で求められる自立のスピードを早めるということと、患者さんが本来持っている回復の可能性を出来るだけ高くしておきたいという相反する関係性に頭を悩まされながらアプローチをすることになります。


さて、その半球間抑制が起きているメカニズムですが、理化学研究所が2012年にラットの研究で解明されたようです。

理化学研究所のプレスリリース「左右の脳が抑制し合う神経回路メカニズムを解明


それによれば、

右の大脳皮質感覚野の興奮性を確認します。左足を刺激すると右感覚野は興奮するけど、右足の刺激では興奮は起きなかったそうです。それはそうでしょうね。

次に、右足→左足と連続刺激を与えてみたところ、左足の刺激に対して右脳感覚野の興奮性が左足の単独刺激と比較して25パーセント減少したそうです。

このことは、右足の刺激(左脳感覚野の興奮)が右脳感覚野を抑制しているということがわかるわけです。

さらに、その関連性を明確にするために左脳の感覚野5層錐体細胞に電気刺激をしてみました。すると、右脳の感覚野5層錐体細胞の興奮性が落ちることが確認されます。これで、左感覚野の興奮が右感覚野の抑制になっているという関連性にあることがはっきりしました。

脳の表層にある神経細胞はGABAを放出して抑制性に働くことは知られているようで、GABA受容体は樹状突起に存在しています。で、そこに薬を入れたりしながら実験をした結果は以下の通り。

右足を刺激すると左大脳感覚野の5層錐体細胞が興奮します。これは興奮性に右大脳感覚野に伝えられ、右の表層の神経細胞からGABAが放出されて右脳の樹状突起の興奮性を抑制してしまいます。結果、右足を刺激した後に左足を刺激しても右の感覚野の興奮性は低く抑えられるということになるわけです。


さて、神経学的にこういったメカニズムがあることがわかりました。これは運動野や脳の各部位の連合野にも同様に起きているようです。

ですので、非麻痺側の過活動が麻痺側の回復を抑える、あるいは認知機能に影響していることが細胞レベルで起きていることがいえるのです。


それを踏まえて急性期や回復期のリハビリテーションを考えると、自立に向けて様々な取り組みが必用であることが推測されます。

一例ですが、例えば、立ち上がりなど柵や杖を持って立ち上がるよりは少し座面を高くしてでも手で持たせずに代償を少なく設定してきちんと麻痺側の足の支持も使っていただくことなど、ケースによっては効果的かもしれません。

それは一人で柵を持って立てる人にとっては、能力的にはいったん下がることになるのかもしれませんが将来に向けて必用なことである可能性は高いといえるのです。

もちろん、一例一例きちんと代償性と姿勢制御や運動機能などについて細やかに評価した上で行うことが必用で、画一的にこうすべきという指針は出せないと思いますけれど。


さて、話は変わります。

退職してから資料をいくつか作りました。

今まで作ってきたものもあります。

どの程度のことが出来るはわかりませんが、zoomを利用してオンライン研修会を企画しようと思っています。

8月末か9月初め。土曜日あたり。PT,OT,ST,Ns,Dr等を対象に。

一人でも参加していただけるのならやるという感じで。



2022/07/21

半球間抑制作用自体は正常な働きなのです。そういったことを踏まえて、少し考えてみました。

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