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モチベーションとリハビリテーション



モチベーション、大事ですよね。

変わりたい気持ち。もっとよくなりたいという気持ち。

大事なんだと思います。


さて。


・いんすぴゼミの話

今、お茶の水大学の脳科学者、毛内拡先生のいんすぴゼミで読んでいる「脳の地図を書き換える」という本に、猿の実験の話が書いてありました。毛内先生は鬼畜な実験だと言っておられましたけど。私も鬼畜だと思ったのではありますが、そういった基礎研究の結果今の科学の発展につながり、医学の進歩につながっていることを思えば・・・まぁ・・・。といってもやはり鬼畜な実験なのではありますが。

どのような実験かというとですね。

1970年代。ウイスコンシン大学の科学者、ハーロウの行った実験です。

ハーロウは妻を亡くしてから抑うつになったそうなんですね。そして、彼は科学者として、抑鬱に興味を抱くようになります。

人間の抑鬱状態をサルを使ってモデル化するために、隔離実験という手法を考案しました。サルの赤ん坊を、鋼鉄で囲まれた窓の無い檻に入れるという物です。檻にはマジックミラーがついていて外からは見えるようになっています。

赤ん坊ザルは、他者と正常な絆を育む機会が一度としてなかったため、一年間の隔離生活を終え檻から出たときは根深い精神症状が認められたそうです。

ほかのサルと正常なやりとりが一切できず、遊びや協力、競争といった活動にも加わらない。ほとんど動かず。数匹はものを食べようとしなくなったそうです。

ここからさらに鬼畜な実験となっていくのですが、これらの長期にわたって隔離されたサルたちは、正常な性的関係を持てなくなっていたそうなのですが、ハーロウはそこに目をつけ、隔離され精神障害を負った雌ザルを妊娠させ、自分の子供とどう触れあうのかを観察したそうです。

子ザルの観察は悲惨極まりない物だったそうです。サルたちは、子育てが全くできず、良くて子を完全に無視。ひどい場合には子に危害を加えたそうです。

このことからわかることは、母性という本能のような性質でさえ、世界を正しく経験するかどうかにかかっていると言うことです。

この実験から、この本の著者であるデビッド・イーグルマンは、この実験についてこう結論づけています。

「脳を発達させるための母なる自然の戦略は、世界を正しく経験するかどうかにかかっている。それができなければ脳は正常に形成されず、病的な状態となる。栄養豊富な土壌が無いと樹木が適切に枝分かれしないように、他者との交流や五感を通して世界と相互作用することが、脳には欠くことのできない豊かな土壌なのである。」


この話を読んでいたとき、ボバースの小児基礎コース(8週間)に参加させていただいた際に見せてもらったビデオのことを思い出しました。

昭和の中期ぐらいのビデオです。小さな脳性小児麻痺(CP)のお子さん

の成長記録でした。おそらく裕福なご家庭で、昭和にもかかわらずビデオ(フィルムかも)をとって、ご両親が保存されておられた物です。

小さな頃は、手も動かしていて小さな揺れる木馬に乗って遊んでいたり、稚拙な動きながら誕生日のケーキをフォークのような物で食べていたり。うれしそうな顔をしながらケーキを食べていたような記憶があります。ご両親もとっても協力的で、一生懸命足を動かしたり(ROM訓練)しておられる様子も映っていました。

その子が16歳ぐらいを迎える頃にはどうなっていたかというと、両下肢はクロスして伸びきっており、両上肢は強い屈曲痙性パターンを示していて、自分では自ら動くことが無くなっておられました。

適切な環境刺激を受け取ることができ無いと、ここまで活動性が失われてしまうのかと言うことにひどく驚いた記憶があります。



・腎リハビリテーションでのお話

話は変わります。

今、腎リハビリテーションのお手伝いをさせていただいている病院で、2023/05/09に今後の腎リハビリテーションの方向性についての会議がありました。そこで、思ったのは皆さん、老化で体が動きにくくなっていると考えておられる様子らしいのですが、多分、ちょっと違うのでは無いかと思ったのです。

透析をされておられますので、日中に長時間仰臥位でいなくてはならないという環境は、背部の筋群に4時間程度の圧迫が週に3回起こると言うことですよね。また、シャントが入っている肢に圧迫をくわえってはいけないという思いから、普段から入眠中の寝返りがかなり少なくなっておられる方が多いようです。これは脊柱の伸筋群にダメージが入りやすい環境だと思います。特に、多裂筋は腹横筋と胸腰筋膜を介して接続されるので、腹圧の制御による抗重力伸展活動に重要な筋です。これらが圧迫~慢性的な血流不足よって変性し、機能が落ちていれば、骨盤の安定性が低下して下肢の筋力が有効に使えなくなることは推測できるように思います。老化と言うより、日中に長時間仰臥位を取ることによる影響であるとすれば、例えばそういった時間に動きを入れて脊柱周囲の循環を保たせることができるのであれば、もっと動きやすくなるのでは無いかと思ったりするのです。

つまり、体の機能低下が老化以上に外的環境要因で進んでいる可能性があって、それは動きを工夫することで改善する可能性があることまで、老化による機能低下だと思っておられて、受け入れ、何もされていない感じも受けたりするのです。

そもそも、改善すると言うことを知らなかったら、改善したいと思う人は少ないのかもしれないですよね。


ほら、空を飛べるとしても、そのことを知らなかったら高い崖っぷちから足を踏み出そうとは思わないでしょう?

例えがわかりにくいでしょうか?


結局、私の理解では。

「”モチベーション”と言われる、精神活動といわれる概念の”表出の型”は、外的環境とそれに対応した身体活動、それを可能にする自身の身体の理解。それらが組み合わさって起きる環境に応じた身体活動とその活動による結果によって働く報酬系の活動で引き起こされ、無意識下で出力される脳の情報。」

といったところでしょうか。


モチベーション・身体外環境要因:身体内環境要因はそれぞれが非線形の相互作用によって結びつけられていて、どれかが大事とか言うことで無くて、すべて大切という感じです。


さて、モチベーション。最初からそれが高い感じを受ける人はリハビリの成果も出やすいように言われます。確かに能力的な側面については特にそういった傾向もあるのですが、臨床経験的にあまりに高すぎるモチベーションは動作そのものを理屈で動かそうとされる印象が強くて、自然で自動的な運動出力応答を少し引き出しにくく感じるときもあります。適切に運動のこと~随意性と自動性の協調などについて理解していただくことと、報酬系を働かせるために、理屈そのものよりも、運動を楽しんでもらうようにリハビリの方向性を持っていきたいと考えていたりします。


モチベーションが低いと感じられる人に対しては、何かしら報酬系の働きが悪いと思うので、その原因が報酬系の伝達経路に関わる病的な物なのか、身体構造上の問題から出ている物なのかなど様々な推論を重ねながら、快適な状況を作っていくことと、豊かな環境を準備しながら、何かしらの関心や興味を引き出しつつ、それを運動経験に変換していく。そしてその運動が成功・成立して何かしらの関心・興味を満足させていくことを目標にリハビリを進めることができればと考えています。

リハビリテーションにおいて、モチベーションがあるとされる人にはその人の難しさがあって、無いとされる人にはその人の難しさがあると言うことですね。人それぞれ。

(*´▽`*)

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