The Natural “Biological Clock” of Stroke Recovery
- Nagashima Kazuhiro
- 2 日前
- 読了時間: 3分
と云う報告を目にしました。
今までの脳卒中リハビリテーションの研究は、母集団のコントロールが十分ではない印象を持っています。例えば、前向きコホート研究でも後ろ向きコホート研究でも良いのですが、コントロールされていない母集団で、早期リハビリをおこなっている群と、早期リハビリをおこなわなかった群を比較し、早期リハビリをおこなった方が予後が良いという研究結果が出たとしますね。しかし、大雑把な研究デザインでは、結局早期リハビリをおこなわれている群というのは全身状態が安定していて早期からのリハビリが可能であっただけで、逆に早期リハビリをおこなわなかった群というのは、発症後の全身状態が不安定で早期リハビリを行う事が出来なかったもしくは危険であった群である可能性が排除出来ないのです。この研究において、早期リハビリを行った事と、回復の程度が相関関係を証明出来たとしても、それは因果関係とは言え無いです。寧ろ、病態そのものと強い因果が在る可能性が在ると考えるのが普通だと思うのですが、実際こうした研究によって脳卒中早期リハビリテーションが推奨されてきた歴史はあるわけです。
こうした研究がやっと出てきたか・・・と云うのが私の印象です。
さて、この報告の内容を紹介したいと思います。
この研究の要点は、脳卒中の極早期にリハビリ量を増やしても、回復がさらに良くなるとは限らないという事です。ESPRESSO試験(Enhancing Spontaneous Recovery after Stroke Study)によれば、発症後2週間以内に、手や上肢に対して高強度追加訓練を15日おこなっても、通常ケア群と比較して3か月後の成績は同等だったと報告しています。つまり、発症直後の回復は、訓練量そのものよりも、まずは脳の自然な生物学的修復過程に強く支配されている可能性が在るという話です。この研究の対象は、64名で、この母集団は単に重症度だけではなく、手の回復可能性と関わるバイオマーカーで選別されています。つまり、「もともと回復しやすい人が混ざっていたから結果がぶれた」という可能性をできるだけ減らして、純粋に治療効果を見ようとしているわけですね。ここは従来の研究では十分ではなかった選別だと思います。従来の研究では、こういった母集団の選別はされておらず、結局良くなる人が高強度のリハビリテーションを実施出来ただけなのではないかという可能性を否定し切れているものが見当たらなかったので、今回のこの研究は優れたものではないかと思います。追加訓練の方法としては、通常の作業療法だけではなく、ゲーム型のデジタル訓練も使われていますが、これも通常訓練と同程度の効果だったそうです。臨床的に大切なのは、脳卒中急性期のリハビリテーションは意味が無いという事ではなくて、早期に「とにかく量を増やせば良い」という単純な話ではなく、急性期の患者さんは疲労しやすく、全身状態も不安定で、他の課題も多いため、そこで無理に活動量だけを積み上げても利益が頭打ちになるかもしれない、という示唆であって、急性期には生物学的治療を検討しつつ、高強度訓練は患者さんが充分に関われる時期に徐々に増やす方が良いかも知れないと述べています。つまり、リハビリテーションの訓練効果は、自然回復の勢いが落ち着いた後に出る可能性が在るという見方です。
私は今まで、急性期の病院に勤めていたときには臨床経験的に超早期リハビリテーションとか早期リハビリテーションは慎重にすべきだと病院内で主張し、自費リハを始めてからは情報を集める中で、やはり病理的には急性期のリハビリテーションは慎重になるべきだと言った情報発信をしていたのですが、やっとこうした研究が出てきたことをとても嬉しく感じています。(^_^)今後、そうした傾向がさらに確認され、その基礎医学的なエビデンスが明らかになってくることを期待しています。




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