一次運動野(M1)のホムンクルスの像ですね。
この像は、1930年代初めにペンフィールドらは直接皮質刺激をもちいてヒトM1をマッピングしてつくられたものです。
今は2025年ですから、約100年も前に科学的につくられた図ということになります。
以前は、覚醒した状態でヒトの皮質を刺激するといった実験も可能ではあったのでしょうけれど、今はどうなんでしょう?
動物実験でも動物愛護協会がおられますので、安易にこういった実験は出来なくなっているのでは無いでしょうか?
一時期、動物実験が出来なくなったことで、脳科学の発展は停滞をするのです。
現在は、fMRI等の機器が出てきたことで、また新たな実験手法が生まれ、このM1のホムンクルスについても研究が深まってきたようです。
2023年の4月にネイチャー誌に掲載された研究です。
実はちょっと前に少しだけ紹介したものではあるのです。
私、英語が苦手ですので、Google翻訳にURLをぶち込んで、その後、英文と比較しながら読んでいます。ですので、以下に書いていくことは正確とは言いがたいかも知れません。
どうぞ皆さん、原文を確認してみてくださいね。
さて、この研究ではfMRIを利用してM1の構造と連結を詳細に調べておられます。
この研究で新しい、M1の構造はこちら。
この図について、ペンフィールドの図と同様に,原則を示す図であって、正確な図として拡大解釈をしないで下さいと書いてあります。まぁ、当然ですね。
ペンフィールドの古典的な図では人の絵がかなり連続性を持って描いてあるように見えますが、新しい図では、かなり分断された印象になっています。
足(緑色)、手(水色)、口(オレンジ)のそれぞれの効果器に対する出力がある場所を、「エフェクター領域」と言っておられます。
そして、ここが目新しいところですが、紫の線のところに操り人形のような像が新しく3カ所加わっています。ここを「エフェクター間領域」と読んでいます。
それぞれのエフェクター領域はエフェクター間領域に分断されていて、どうやら、それぞれのエフェクター領域皮質間の接続も弱いようです。
エフェクター間領域は構造的にエフェクター領域より皮質の厚みが薄いようなことが記載してあるように思います。
M1について、Old M1とNew M1といわれる領域があるのはご存じだと思います。
Old M1は脊髄運動ニューロンとの接続がほとんど無く、New M1は脊髄運動ニューロンへの接続が豊富とされています。
エフェクター領域はどうやら脊髄運動ニューロンの接続が多いようです。New M1が多いと言うことなのかも知れませんね。
そして、エフェクター間領域は脊髄運動ニューロンとの接続が少ないようです。Old M1が多いのでしょうか?
このOld M1を多く含むと思われるエフェクター間領域はどこと接続をしているのかというと、帯状ー弁蓋ネットワーク(CON)との接続が強いようです。
CONがどのようにM1のエフェクター間領域に関わっているのかと言うことが知りたくなりますよね。
帯状皮質は辺縁系ですよね。弁蓋は島を覆うように存在していますので、島との連絡が密接だと言うことは推測出来ます。島葉の持つ様々な情報とやり取りしてると思います。
参考までに、島葉にどのような情報が入っているのかと言うことについては、以前高草木先生の講義をお聴きした際の資料の一部を抜粋させていただきます。
様々な情報が集まってますね。辺縁系や前頭葉からの情報、ボディスキーマを含むであろう頭頂側頭皮質からの情報。そして、感覚ー運動皮質からの情報。
話は少しそれますが、高草木先生はこの時は、運動皮質と感覚皮質を分けずに感覚ー運動皮質と書かれておられますね。感覚と運動は不可分だと言うことを指しているのだと私は受け取りました。(^^)/
さて、さらにそれぞれの接続がどうなっているか気になるところです。
エフェクター領域は脊髄運動ニューロンに多く接続していることは前に書きました。脳の内部ではどのような接続が観られるのでしょう。もちろん、脳回は脳溝の間に繊維を送り、隣接する脳回と接続されていますので、高次運動野とエフェクター領域、エフェクター間領域は接続しているものと思われますが、この研究ではそのことは書いてなかったように思います。その他、基底核や小脳への接続は今までの知識で接続はあるものと思います。
ただ、エフェクター領域とエフェクター間領域の差として、エフェクター領域は一次感覚野(S1)との接続が強いようです。(ここも感覚ー運動皮質と言われる所以のように感じますね)
エフェクター間領域の接続は、島、小脳、被殻および視床の感覚運動領域(V1M,CM,VPM)などだそうです。島はCONとしてのネットワークでは無いかと思います。小脳はオンラインの運動/行動調整、被殻は基底核ループの一部を形づくっているのかもしれません。これは、高次運動野からの基底核投射が基底核ループを介してM1の運動出力のGoサインを出すことになるという理解から少し離れるものですね。
また、視覚野との強い接続も観られるようです。
さて、CONの接続はどのようなものなのでしょうか?
CONは副腎皮質(アドレナリン/ノルアドレナリンの生成)に投射しているようです。
この研究では、M1のエフェクター間領域はCONを介して、目標,生理学的変化(交感神経系と副交感神経系のことでしょうか?)、エラーや痛みなどによる行動による、運動や行動選択を含む全身の調整、制御に関わっていると言うようなことが言われているようです。
今までのM1のイメージとだいぶん違いますよね。(^^;)
あと、3つのエフェクター間領域の際として、真ん中のエフェクター間領域は他と比較し、視覚野との接続が強いそうです。
これは、真ん中のエフェクター間領域は手のエフェクター領域に近く、そこへの出力調整をしやすくするためでは無いかと思われます。
こういったエフェクター間領域によって分けられたエフェクター領域がどのように運動出力に関わっているのかと言うことなのですが、この研究においては、エフェクター領域と、生物全体としての行動決定領域であるエフェクター間領域が交互に存在して、行動制御の統合、隔離(分離?)デュアルシステムモデルとなるのではないかと言うお話です。
多分それぞれのシステムが相互的に働くことで行動を開始したり修正したりするメカニズムを有していると言うことなのでは無いかと思います。
そうすると、前に書きましたが、M1から基底核への投射があることは行動の修正と修正後の運動出力のGoサインを基底核ループが担うことが出来そうな気がします。
このイメージだと、エラーや痛みなどによる運動・行動の調整も「意識」の生成より先に修正・調整に関わるプログラムが出来ていることになりますので、こういった運動の修正・調整に関わる制御は、意識(記憶?)による運動の静止等の修正と、無意識下の修正・調整といった2つ(以上)の異なる回路網が働いていることになるのかも知れません。
これらのことをまとめると、本文にある「M1が全身行動計画のためのシステムである体性認知行動ネットワーク(SCAN)によって分けられていることを示唆している。」と言うことになります。
今までの、運動の最終出力部としてのM1とかなりイメージが異なるM1となるようですね。
また、S1とM1エフェクター領域との接続を観ると、S1も純粋な感覚領域として考える事は難しく、同時にM1も純粋な運動領域と考える事が出来ないですよね。
おそらくこれからの研究はこの様な流れになってくるものと思います。理解しやすくするために前頭葉は運動だとか、頭頂葉は感覚だとか分けてしまうのも有だとは思いますが、本来の姿はかなり異なるものだと言えそうです。
ただ。
初めに書きましたが、英文の訳がどの程度合っているか、ニュアンスをどの程度私が拾えているのかは甚だ疑問があります。(^^;)
それと、この知識をどのようにリハビリテーションにもちいていくのかと言うことについては、今後思考を深めていかないといけないと思っています。
是非原文を読んでみて下さいね。
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