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前脳基底部とコリン投射系

中枢神経系でのアセチルコリンの主な役割は抑制ですね。

これは、刺激を一旦受けて脳神経細胞が興奮した際に、興奮を収めることで、新しい情報による興奮が起きる様にしていると捉えられている様です。

前脳基底部のマイネルト基底核はアセチルコリンを含む細胞群があります。現在では、GABAやグルタミン酸を含む神経細胞もあるとされていて、主な働きは、脳は制御/皮質可塑性/脳血流制御などだそうです。

どれも大切なのですが、リハビリテーションに関わるものとしては、皮質可塑性が気になりますよね。


リハビリテーションで主に話題になる脳の可塑性は脳の学習の理論です。ドナルドヘッブ先生が提唱したヘブ則やセルアセンブリ仮説。塚田稔先生が時空間学習則などによる脳のシナプス接続の変化が興味の対象であるものと思います。簡単に紹介すると、ヘブ則とは入力細胞と出力細胞が同時に発火(興奮)することで、シナプス接続が強化されるような考え方なのですが、時空間学習則は、いくつかの入力細胞がタイミングを合わせて、あるいはタイミングを調整して発火(興奮)することで出力細胞にアプローチを試みた場合、入力に係る細胞群とその発火パターンが学習されるというものです。この場合、出力細胞の発火の有無は規定されていないようです。

いずれにしても、脳の学習にはシナプスの発火が必要です。

発火するためには一旦興奮性が下がった状態になっていないといけないのです。発火しっぱなしの状態では、神経細胞が疲労して最悪神経細胞死に至る可能性もあるわけですから。

ですので、アセチルコリンの働きは神経細胞の生存にも学習にも大切そうですよね。


前脳基底部からのアセチルコリン投射は、記憶に関与する海馬やその周辺領域、扁桃体、視床下部、中脳網様体、そして広く大脳皮質全般に投射されています。高草木先生の図を見ると、被殻や尾状核などの大脳基底核入力部にも投射している様ですね。



当然、頭頂葉にも投射しているので、身体認知と言われる情報処理にもアセチルコリンは働いているわけです。身体図式はリアルタイムにアップデートされることが知られていますが、刻々と変化する外的環境情報と身体の関係性について、一旦発火した神経細胞のパターンが持続(継続)していると環境変化や重心変化に対応できないことが推測できますので、さっきまで構築していた身体認知情報をアセチルコリンが一旦リセットして新しい外的環境と身体の状況の情報を統合し、常に新しい環境と身体の関係性を適切に(無意識下で)把握しているということになるのだと思います。

アルツハイマー病などは、この前脳基底部、マイネルト基底核にあるアセチルコリン細胞が減少していることが知られています。アセチルコリンの減少でシナプスにおいて新しい変化が起きないことになりますから、記憶などは新しいことを覚えることができないことなどにつながりますし、認知機能としてもリアルタイムに変化する外的環境をうまく認知できないなどの症状が出現することになります。身体機能としても、初期から手指の拘置性が落ちたり、転びやすくなったりといったことが起きることが知られていますよね。

ですので、治療薬としてアリセプトなどはアセチルコリンを分解する酵素の働きを阻害することで、脳の中のアセチルコリン濃度を一定に保とうとさせるお薬なのです。

アルツハイマー病のお話を書きましたが、身体制御、姿勢制御にもこの前脳基底部からのアセチルコリン投射系がとても大切だと考えているのをお伝えしたかったのです。


さて、前脳基底部への入力としては、脳幹部からは腹側被蓋、青斑核、縫線核の投射を受けています。また、海馬や扁桃体など辺縁系からの投射も受けています。

辺縁系は脳幹にも投射していて、特に縫線核の投射はセロトニン細胞を刺激して興奮性網様体脊髄路を賦活します。このセロトニンや基底核の直接路から脚橋被蓋核への投射があるとアセチルコリン細胞が刺激されますので、抑制性網様体脊髄路が賦活されます。

このバランスで姿勢制御が行われることになるのですが、同時に被蓋核のアセチルコリン細胞と、縫線核のセロトニン、青斑核のノルアドレナリンなどのモノアミン系の伝達物質は前脳基底部に投射することで前脳基底部の働きを、おそらくモノアミン系は興奮性に、アセチルコリンは抑制性に調整します。そうすることで適切なアセチルコリン投射が起きることになるのだと思うのです。


リハビリテーションにおいて、脳損傷の人の脳の情報処理を診るということを考えた際、情動などの辺縁系の興奮性と共に、身体情報が頭頂連合野〜基底核ループの中でどの様に処理されてどの様な身体図式を生成しているのかということを考えたとき、姿勢変化に対して適切な制御が広がって、重心移動の多様性を持つ安定性がリアルタイムに起きる様になったら、身体図式情報はリアルタイムに更新されてきているのではないかと判断できる様になるのではないかと思うのです。

また、その背景として、セロトニンが脳幹に放出されていて、その上で皮質網様体脊髄路が働くことでコアスタビリティが適切に働いていることが確認できれば、高次運動野からの脳幹投射や一次運動野からの脳幹投射がうまくいっていることを指しますので、皮質の働きが姿勢に反映されることになります。


脳のことを考えると、姿勢と運動をより細やかに結びつける作業が、こういった脳の情報処理全般を機能的に再学習させていくことに繋がりそうですよね。



姿勢制御と運動制御、大切そうですよね。



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