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両側上肢動作


ここ最近、上肢の研修会に2度参加させていただきました。

とても面白かったのですけれど、両側上肢動作時のタイミングの協調とか運動を主にする側に対する補佐的な反対側上肢の運動選択はどのように行われているのだろうと少し考えていました。

なんとなくヒントは基底核の運動ループを見たときに高次運動野だけは反対側の基底核にも投射しているあたりにあるのではないかと推測を立ててみました。


たとえば、上の写真のように右手でリーチをする際、左上肢による体重支持がどのように無意識下で選択されて出力されているのかと言うことですけれど・・・



おそらく、左の高次運動野がリーチの活動を起こすようなプログラムを選択した際、左の基底核ループにのって一次運動野の運動出力のトリガーとなるシステムが働くのと同時に、左高次運動野は右の基底核にも投射していて、右の運動ループでの出力選択に関与して、一次運動野からの出力をだし、その一部が延髄網様体脊髄路に投射されて左近位部の体重支持を可能にしているのでは無いかと思うのです。

こういった場面を治療的に用いる意義は、無意識下の制御が期待できることが一つと、右の高次運動野-基底核ループが損傷を受けていても左上肢近位部に対する出力が期待できる点にあるように思います。

片麻痺の人は運動を意識的に制御しようとする傾向が強すぎる場合が多いと思いますので、無意識下での出力調整が可能であろうと思われる点はとても有用なものでは無いかと思います。


次に両側動作についてです。


紙を切るような動作の場合、利き手(ここでは右)がはさみを使用しますが、はさみを使用するのに先だって、左手は紙を切りやすい位置に持って行くような行動選択をします。

当然この情報選択にも左高次運動野から右基底核への投射が必要です。つまり、左上肢の運動選択をする右脳の活動に左の高次運動野が介入しているわけです。

言い換えれば右脳の賦活に左の高次運動野が関わっているという言い方も出来ます。

それもやはり魅力的な仮説になるのでは無いかと思うのです。

ですので、神経生理学的にも両側動作というのを取り入れることってとても大事なのだと考える事が出来るようになってきました。


ところで、麻痺側の動きを引き出す際に、非麻痺側を隠して非損傷側の脳の活動性を上げないようにするという手法があります。

半球間抑制のことを考えれば、それは正しい選択であると思います。

研修のとき、ミラーニューロンシステムを利用して非麻痺側の動きを参照させて麻痺側の動きを促通すると言った手法のことにも触れておられました。

ミラーニューロンは至る所に存在していますが、上肢の動きに関しては運動前野の下の方、F5領域と言われる部分が有名だと思います。左手が動かないということに対し右手(左脳)を動かしてみるということが、視覚を通じて右脳のF5領域を賦活して、そこから基底核ループによる運動の選択/出力のトリガーにするという事になります。プログラム情報がどこまで基底核で処理されているかと言うこともありますが、左高次運動野からの右基底核への投射が運動プログラムの参照になっている可能性もあるかもしれません。

ただ、過度に非麻痺側が活動すると半球間抑制が起きてしまうと考えられますので、ミラーニューロンを賦活するために非麻痺側を動かして、その後に非麻痺側の動きは一旦やすんでもらってから麻痺側の運動出力を要求するようにすると神経学的には良い反応が出そうな気がします。

個人的には臨床場面ではそういった形で誘導はしています。


いろいろ考えるきっかけになってとても楽しい研修会でした。


11/3 追記

皮質から反対側の基底核への出力は脳梁を介しているのでしょうかとのご質問を頂きました。

皮質から基底核への出力に関しては、図説中枢神経系第2版 p240

「運動前野(6野 8野)、運動野(4野)および体性感覚野(3野 1野 2野)は反対側の線条体に投射線維を送るとの報告がある。」

との記載があります。

左右の脳をつなげるのが脳梁(しか思いつかないので・・・)なので、脳梁を介しているのだと今は考えています。

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