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Cell Assembly (セルアセンブリ)

更新日:2023年9月17日

Cellは細胞と言う意味です。

Assemblyは、集会/会合/組み立てみたいな意味があります。

Cell Assembly、細胞の集会?細胞の組み立て?訳がわからないですよね。

セルアセンブリの概念は1940年代にヘッブという研究者が定義した知覚/記憶対象の表現に関与する機能的な細胞集団のことです。


この頃にあった代表的な考え方の一つに単一ニューロン主義というのがあります。「認識細胞仮説」「おばあさん細胞仮説」などと言われている仮説です。これは、在る特徴を持った情報を処理するニューロン群は常に一定であると言ったような考え方です。

「おばあさん細胞仮説」で説明すると、自分のおばあさんを見分けることが出来るのは、そのおばあさんを見たときだけ興奮する活動するニューロンがあるという事になります。

この仮説は無理があると考えられています。例えば、理論的に言えば外的環境には極めて多くの情報が含まれています。また、情報間に膨大な組み合わせが存在しています。木にとまっている小鳥が鳴いているとか色々ですね。

この情報を個々に認識することも可能ですよね。木と鳥とさえずりとか。それらの膨大な情報をそれぞれにニューロン一つ一つが認識するとすると、いくら脳の神経細胞が多いと言っても有限ですのでほぼほぼ無理があると考える事が出来ます。

ところが、以下の図のようにニューロンの組み合わせで情報を表現しているとすると、脳の神経細胞の組み合わせは一気に多くなり、多くの情報処理が可能であるという事になります。


セルアセンブリとは、特定領域の細胞集団において、情報Aを表現するための神経細胞群と、情報Bを表現するための神経細胞群はそれぞれ構成要素として重なるところもありますが興奮する細胞組み合わせを変えることで、情報Aと情報Bとの違いを表現しているという考え方です。

この図では、黒丸が活動をしているニューロンと表現されています。白丸は活動をしていないのですが、これが勝手に活動してしまうと情報A,B共に表現できなくなりますのでおそらくでは有りますが、抑制されている必要があるのでは無いかと勝手に推測しています。

そういった意味では、抑制性の情報を活発に受け取っていて、その中で必要な細胞を興奮させるメカニズムが必要です。こういった活動は基底核が得意そうではあります。受動的な感覚認知においてはさほど基底核の関与は無いのかもしれませんが、能動的に知覚しようとする際にはおそらく基底核ループが関与するのでは無いかという気がします。

ニューロンの興奮のタイミングのずれも情報の識別に関与しているという情報もあります。だと、基底核の介入の可能性ももっと上がりそうですよね。他にもグリンファティックシステムによる脳の細胞外成分による情報伝達効率の変化とかも関連しているのかもしれません。

もちろん、何の証明もありませんけれど。

2020年に、セルアセンブリの実態を解明する研究が行われているという報告があるぐらいですから、まずはセルアセンブリの存在が明確になって、それがどのように起こっているのかという研究が行われていくものと思います。


ところで、リハビリテーションに関わる近年の脳生理学的な見方は感覚/知覚/記憶/認知などと運動機能は密接に関わっているとされています。環境の知覚が変化すれば運動も変化しているし、運動が変化していれば知覚も変化するという関連性にあって、感覚と運動を分けて考えない様な感じです。感覚−運動を同列の情報処理としてみているとも言えるのかもしれません。そういう視点から考えるとセルアセンブリの考え方は知覚や記憶にとどまらず感覚/運動にも適応可能であるような気がします。

例えば重力下での適応的な感覚運動を起こすためにはBody Schema(身体図式)が必要です。この生成には前庭覚/固有受容覚/表在覚/視覚など多数の感覚情報が必要となる上に、さらに身体状況に応じて変化(学習)しなければならないシステムです。それを考える上でもセルアセンブリの考え方はとても魅力的に見えます。


さて、セルアセンブリの仮説はシナプス可塑性に基づく感覚運動学習(脳の機能回復)ととても相性が良さそうな気がしています。

それは、先に書いたようにシナプスの興奮と抑制の組み合わせで情報を表現しているのであれば、損傷が起きた際に組み合わせを変えるのはシナプス可塑性による物だとすると、損傷の大きさで回復が左右されるという事実と共に損傷が起きてもニューロンの組み合わせを変化させる事で情報Aと情報Bを変化させる事が可能となるはずですので、あらゆる感覚/運動学習や脳の機能回復が起こりえることになるからです。

(7/27 追記:どうやらこのセルアセンブリ仮説を言っているヘッブは、シナプス可塑性「ニューロンとニューロンの接合部であるシナプスというところに、長期的な変化が起こって信号の伝達効率が変化することが学習の仕組みである」と提唱した方と同じヒトですね。シナプス可塑性とセルアセンブリの考え方が親和性が高そうに感じるのは当然です。)



日本においては櫻井芳雄先生がセルアセンブリの研究をされています。

本も書かれておられて、とても読みやすくて面白いです。最初に買った本は、

アマゾンで確認したら2005年に買っていました。現在では中古で手に入るようです。


図は、以下の論文から引用させていただきました。


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