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執筆者の写真Nagashima Kazuhiro

筋緊張とは何か



先日、よなご脳神経クリニックでボバースコンセプトの研修会に参加したのです。

その際、抑制性網様体脊髄路と興奮性網様体脊髄路のお話しが出たのですね。

一緒に参加された方は私が質問をしたのを憶えておられるかも知れませんが、私の認識では同じ回路でもアセチルコリン(Ach)とセロトニン(5-HT)のそれぞれの濃度の変化で抑制性に働いたり興奮性に働いたりするという理解をしていたのです。

つまり、抑制性網様体脊髄路と興奮性網様体脊髄路が別々に存在しているのではなくて、同じ回路が抑制性網様体脊髄路としても働いたり、抑制性網様体脊髄路としても働いたりするのだという認識なのです。


この認識は、2006年に高草木薫先生が米子で講演された際のお話しからなのです。

これから、そのお話しをしようと思うのですが、注意して欲しいことが2点在ります。

ひとつは、米子で高草木先生がお話しをされたのは事実ですが、これからのお話しは私の記憶であるという点です。記憶は様々なバイアスがかかるので、高草木先生のお話の意図を正確に理解して記憶できているわけでないのです。ですので、今からのお話しが正しくても正しくなくても、高草木先生の責任ではなくて、私の責任です。

ふたつめは、その講演の際にお願いして元のデータを頂いており、動画はそのデータからのものになります。2006年はまだ高草木先生はどちらかというと無名に近い状態で、データをいただけたのも、いろいろな人がご自分の研究に関わるディスカッションがおこなわれる事を期待されてのことと思うのです。しかし、近年、高草木先生の資料の分かりやすさや美しさから様々なところで用いられるようになり、「私はそんなことを言っていないのに、色々なところで資料が一人歩きをして、『高草木がこういった』などといわれ、偉い先生からお叱りの連絡をいただくようになった」と話されておられ、色々大変だったご様子なのです。その後、お会いした際に資料が欲しいことをお話ししたら、今は人に渡したりしないようにされておられるとのお返事を頂きました。ですので、この記事を読まれた方が高草木先生にお会いされる機会があっても、高草木先生に資料を要求されないようにお願い致します。

<m(__)m>


さて、上記のような事情がありますので、yotuubeなどにアップするのは気が引けます。しかも資料のごく一部の切り取りの動画になりますので、このページに直接動画を貼ります。




脚橋被蓋核・背外側被蓋核などのAch細胞、背側縫線核などの5-HT細胞は橋網様体をターゲット(のひとつ?)にしています。橋網様体はAchと5-HTの影響下にあるという事になります。

そこで、橋網様体の働きを、元の状態(コントロール)、元の状態に5-HTを入れた状態とAch(CarbacholはAchの代用薬です)を入れた状態で比較してみたわけです。

5-HT系が入ると多くの領域が促通性に働いて、Achが入ると多くの領域が抑制性に働いていることを示していますね。

高草木先生はこのスライドの際に、「実験した結果を見て、こんな風に領域の働きが変わるのはインチキだと思った。」と仰っておられたように記憶しています。

これが、私が最初に書いていた、回路が同じでもAchと5-HTの状況によって抑制性にも興奮性にも働いているという認識の原点です。


さて、如何でしょうか。

この実験に於いて、筋緊張は単シナプス反射の程度で研究をされておられたように思います。カンデルなどの神経生理学の本を開くと、網様体脊髄路というのは身体近位を中心に投射されて、主にγ系に働きかけているとされていたはずですので、おそらくそういった研究であろうと思うのです。

たしかに、構造的に考えるとγ系が抑制されている状態でα運動ニューロンが興奮しても筋出力のタイミングは遅くなり筋出力も低下することが予測されますし、γ系への出力が適切であればα運動ニューロンの働きは効率よく筋出力に変換されることになります。

そういった視点から考えれば、網様体脊髄路が大雑把な筋緊張を調整していると言っても良さそうですよね。


臨床的に捉えると、特に体幹においてγ系が働きにくい状態になると、筋の長さの検知が遅れることになりますので、体幹の崩れが起きてしまう事になります。コアスタビリティの機能が低下するわけですね。網様体脊髄路が重要であることは間違いないことだと思います。

ちょっとだけ話が変わりますが、たしか、基底核は脚橋被蓋核(Ach細胞)にも投射を行っているのですね。基底核自体も筋緊張調節系に関わっているという事になります。面白いですよね。

(*^_^*)


最後に科学というのは常に進歩するものです。私が認識したこの情報がかつて正しかったとしても、もしくは現在正しいとしても、現在もしくは将来において何か違う要因によってこれらの反応が支配されていると言った事が言われてくる可能性も否定できないかも知れません。

科学に関わる際には、そういった事も確り頭に入れておく必要はありそうだと思いますので、どうぞ柔軟に考えて下さい。

<m(__)m>


さて、ここから先はいつもの思考遊び。

(*^_^*)

先ほど、基底核は脚橋被蓋核にも投射していると書きました。

と云う事は、脚橋被蓋核も基底核のハイパー直接路、直接路、間接路の働きによって抑制されたり促通されたりすると言うことだと思うのですね。


基底核が直接脚橋被蓋核を制御しているのであれば、と言う条件で考えると。

運動を起こそうとした際に、そのターゲットとなる部位の緊張はハイパー直接路の働きで最初出力を減少させることになります。例えばターゲットが上肢であれば、上肢の筋緊張が一瞬緩むわけです。

その際に、脚橋被蓋核も出力を減少することになり、Achの網様体への投射が減少することになりますので、網様体脊髄路はセロトニンが優位になって体幹を初めとした中枢部は安定性を高めることになります。

その後、直接路の働きによって、ターゲットシステム〜先の例に続けて言えば上肢が緊張を強めて動きを遂行しますね。その際に脚橋被蓋核はAchの網様体投射を強めますので、Achが優位となって、抑制性の働きを強める〜体幹が動きやすい状況になるため、上肢の動きに合わせて体幹の活動も起きることになります。

そして、最後に間接路が働くと、ターゲットシステムは最初のように筋緊張を低下させることになりますが、同時に脚橋被蓋核の網様体へのAch投射も弱くなりますので網様体脊髄路はセロトニン優位となって体幹の安定性が元に戻るというメカニズムになると思うのです。


ちょっと面白いでしょ?

(*^_^*)



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