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執筆者の写真Nagashima Kazuhiro

空間認知障害と空間での身体の配置

更新日:9月19日

未だに、昔書いた「ベッドに斜めに寝ている人の空間認知」という記事がよく読まれているようです。


「空間認知機能が障害されているから、空間で適切な位置に身体を持っていくことが出来ない」

こういう評価は一見正しそうにも見えますが、私は誤りだと考えています。

その理由を以下に書いていきますね。


こういうA→Bと云った推論を立てるためには、空間認知情報が、運動機能〜空間での身体位置関係をとる運動情報と別々のものでなければなりません。


ここで、脳がどのように姿勢/運動制御をおこなっているのか、特に視覚と体性感覚の関連を回路から見てみましょう。


脳は、多重感覚入力を統合して身体外空間を脳の中に再現するような情報処理をします。

特に視覚と体性感覚の統合については、頭頂間溝野も重要な働きを持っています。


この部分がどの様に情報を集めて、どの様に連携をしているのかを接続から見てみます。

まずは視覚野寄りの位置にあるMIPから


MIPには感覚野の情報と視覚野の情報が入力されて、他の頭頂間溝野の領域とともに、運動前野に情報を送っています。これだけを見ると、視覚と体性感覚の認知が特別に存在しているようにも見えるかも知れません。

しかし、網膜情報を使って身体外の世界を知るためには、身体や眼球に対してどの様な位置関係のものが網膜に映し出されているのかという情報が必要ですよね。


何かに注視をするメカニズムが頭頂間溝野でどの部位が関わっているのでしょう?

視覚情報を網膜状の最も解像度が高い網膜中心窩で捉えるための急速な眼球運動はサッケードと呼ばれています。このマカクザルの8野は前頭眼野で、前頭眼野はサッケードや滑動性眼球運動に関わっている領域です。


この前頭眼野には頭頂間溝野も投射をしています。


LIPは、前頭前野腹側運動前野などとともに、前頭眼野にも投射していますね。

辺縁系からの投射も受けています。最も注意を引く身体外情報と視覚野、聴覚野からの情報を受けてますので、網膜情報を使って眼球運動を起こしているものと思います。

これで、大雑把には何かに注視をする基本的なメカニズムのひとつが説明できそうですね。


網膜情報が何処の物を見ているのかという情報を作る為には、頭部の位置や眼球の位置情報が必要になりますよね。


VIPは補足運動野や運動前野からの入力とともに、前頭眼野からの情報が入力されています。これが、眼球の位置情報などを頭頂間溝野に送り込んでいるのかも知れません。


見た物がなんであるのかと云った情報はAIPが関わっているようです。


これは横になれる「ベッド」だとかそういった情報を処理している感じでしょうか。


さて、ここまで考えてみると、網膜情報の情報処理にも様々な領域の情報が必要だという事が解ってくると思います。

特に前頭前野とか、運動プログラムに関わる運動前皮質からの入力が必用で有るのがこの回路から見えてきますよね。


これらの情報を頭頂間溝野内の接続で統合していくわけです。




ここまで読んでいただけたら、身体外の空間情報認知と呼ばれるものに体性感覚や視覚、聴覚情報などとともに、運動プログラム情報が必要であることがわかっていただけるのでは無いかと思います。


空間認知という言葉に運動プログラム情報が必要であるという事実は、認知情報と運動情報が密接不可分なものであることを表していると私は考えています。

ですから、空間認知がおかしいから運動出力情報がおかしいという表現は間違っていて、両方とも同じシステムの情報を「認知」という側面から表すのか「運動」という側面から表すのかと云った違いでしか無いのだろうと思うのです。


そういった意味では、同じ情報処理上の問題であって、空間情報処理がおかしいから云々という表現は不適切であると判断してしまう訳なのです。

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