Nagashima Kazuhiro

2022年1月14日3 分

急性期の症状変動

急性期の病院に勤めさせていただいているとき、脳梗塞発症後24時間以内に介入をはじめさせていただくことも多かったのですが、その際にいつも感じていたことがあります。

例えば、挨拶してお話を伺いながら少しずつ姿勢/運動機能をチェックしていきます。その際に刺激に応答して弛緩性の麻痺に見えた手が少し動き始めたりすることも少なくありません。

しかし、多くの場合それは一過性です。わずかに手指の屈曲伸展がでても数回で動かなくなるとか、その日には刺激に反応して動きが出現しても次の日は同じように刺激しても動きが出なくなっているとか。

BAD等に代表される進行性の梗塞ではピーク(脳梗塞が完成する状態)を迎えるまでは麻痺が進行するので当然ですが、ピーク後もこういったことは起きます。

翌日とか数日たってからフォローのCTとかMRIとかを撮るのですが、その際に医師からやっぱり浮腫が出てきたねとか報告を受けたりすることになります。

いったい何が起きているのでしょうか?


 

はっきりしたことは解っていません。

ただ、現在脳の研究では脳の神経接続のみではなく神経細胞外物質/環境のことが解りつつあります。

例えば以前ブログ「膜電位とグリンファティックシステムから考えるリハビリテーション」という記事に書いたのですが、脳の神経細胞が壊れると細胞内成分が細胞外に放出されます。そうするとカリウムイオンが細胞外に増えるため、生き延びている神経細胞はいったん興奮するとその興奮を収束させることができなくなります。

神経細胞は興奮したり興奮を鎮めたりすることで働きをつくくりますので、結局働かない細胞になってしまいます。そして興奮が持続すれば、その生き残っていた神経細胞も結局死んでしまうことになることも予測されています。


 

私の個人的な印象ではいったん起きた反応ができなくなる背景に、神経細胞外環境が悪化しているため脳の出力を起こす刺激にシナプスが応答しても持続しないといったことが最も考えられるのでは無いかと思うのです。

当然その思考の先には生き残せたかも知れない神経細胞の神経細胞死も起きている可能性が否定できなくなります。


 

おそらく、今後の急性期から回復期のリハビリテーションにおいて、日常生活という尺度のみではなく、生き残った神経の維持をさせる、或いは新しい回路を開発するといったことのために必用な神経細胞外環境を改善するための、活動導入や運動の促通のタイミングなど様々な研究が行われて行くのではないかと予想しています。

まぁ、私がそう言った願いを持っている訳なんですけれどね。

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