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頭痛

執筆者の写真: Nagashima KazuhiroNagashima Kazuhiro

1年前に腰痛でご利用いただいた方からご連絡をいただきました。

前回雪が降った時に、雪かきをされておられたそうです。車が通りかかったので、慌てて退いてあげようとした際に転倒。腰、肩、頭を打ったとのこと。

それから頭が痛くて、整形外科を受診。頚部の筋肉の緊張由来で疼痛が起きたのではないかということで湿布をもらったそうですが、それから1〜2週間経っても頭痛がきえないとのことでした。


まぁ、そのお話をお聞きしたときに、真っ先に頭に浮かんだのは「慢性硬膜下血腫」という状態です。

これがどのような状態かをお話しする前に、簡単に解剖のお話をしておきます。

脳は大切な臓器ですので、頭蓋骨という骨に守られています。


この骨の下には、外側から、硬膜ーくも膜ー軟膜という膜組織があって、その軟膜の下に脳の実質があるわけです。(イラストはWikipediaより)


で、転倒などのなんらかの要因で硬膜の下にゆっくり出血が起きて、血腫ができる状態を「慢性硬膜下血腫」と呼ぶのです。




血腫ができると、外に圧が逃げることができませんので、脳実質を圧迫していくことになります。

徐々に圧迫するので、症状として出るのは結構ゆっくりめだったりします。

意識障害や麻痺などの症状が出るときは、結構血腫が大きくなっていることが多い印象があります。


転んで長引く頭痛と聞いて、こう言った状態を疑ったのですね。


私は、スケボーに乗って何度も転んでアスファルトの硬さは身に染みてわかっていますし、雪道で転ぶということがどういうことなのかというのは以前のブログにも書きましたので、よろしければ読んでみてほしいと思います。まぁ、多くの人は経験的にご存知だとは思います。


話がナイル川のように長くなりました。いや、ナイル川ほどではないですね。伯太川(マイナーな川です(^^;))位の長さですね。


さて、そう言った状態を疑った訳なんです。

施術を希望されたのですが、ちょっとこのままでは怖い感じがしたので、脳外科などの受診を一旦お薦めしました。

で、脳外科を受診されて、とりあえずCTでは出血は認められなかったとのことだったので、改めて昨日、きていただきました。


私、頭痛だけの施術は初めてではありましたが、病院で勤めていた時に、さまざまな要因で起こった頭痛を軽減させるためのリハビリは経験がありましたので、とりあえず見せてくださいというスタンスで施術させていただいたのです。


お越しいただいたときの、車から降りて事業所に入っていただく際の姿勢や歩容を見ると、円背気味で、やや歩幅が狭い感じでした。テンポに左右差はなくて、特に片側性の問題が中枢神経系にはなさそうです。円背気味ですので、頸部は過伸展(頚椎の前弯が強い)となっておられます。

とりあえず、頸部から肩甲帯の筋緊張を触知していくと、やはり結構硬いところがあります。頚部の伸筋や、肩甲挙筋、胸鎖乳突筋などなどなどなど。

頚部そのものには痛みはないようでした。


頚部の筋肉の緊張由来での疼痛、筋緊張性頭痛ということになるかと思いますが、筋肉が緊張して頭が痛いのであれば筋肉の状態を良くしなければなりません。筋肉の状態を変えるためには、循環の状態が適正になることが必要なのです。

では、循環の状態を悪くしている原因があるはずなのですが…。ここで、頭頸部の血管の状態を思い出してみます。





頚部の側方から後方にかけて、大きな静脈、内頸静脈と外頸静脈があります。

周囲の筋肉が持続的に緊張することで、これらの静脈を少し圧迫気味になっているとすると、頭部の血液が少し心臓のほうに戻りにくくなっていることが予測できます。

しかし、動脈は深層にある上に静脈と比較して、血管に筋肉組織が豊富にあるため血液を送る側は頑張って血液を送ることになります。

頭部の圧が上がりそうですよね。

また、当然のように血液全体の流れが悪くなっていることが予測されるので、周囲の筋も正常な状態に戻りにくいことが予測されます。

(筋肉が緩むためには、血液が運んでくるエネルギー(糖)が必要なのです。)


ということで、頚部の背面から側面にかけての筋の状態を整えるように、膜組織の動きをゆっくりと出しつつ、循環が改善し、糖分がアクチンとミオシンの接続を解除できるようにしていきます。

触知すると、かなり筋肉の粘弾性が回復したのがわかってきたので、お聞きすると、結構気持ちがいいとおっしゃってました。


さて、これからが本番です。

ここまでも結構時間をかけたのではありますけれど。(^^;

そもそも円背気味で頚部の前弯が強い印象にあることは前に書きました。

前弯が強いということは、頚部背面の筋肉は常に短縮傾向になりやすい状況だということになります。

だとすれば、円背自体にも頭痛が持続しやすい原因が存在していることになります。というと強すぎる言い回しかもしれませんね。

円背にも頭痛が持続しやすい原因がある可能性があることになる、ぐらいの表現でしょうか。

歯切れが悪くてわかりにくい表現ですね。

ま、いっか。(^^;


とにかく、円背を改善する必要がありそうだと判断した訳です。


で、初めの歩行の印象に戻ります。歩幅が十分ではないということは、可能性として股関節の動きが十分ではない可能性がある訳です。

ですので、確認すると、やはり内転筋が固くなっておられます。ちょっと左右差(右>左)がありましたけれど。

内転筋の硬さは、骨盤の前傾を阻害しやすいのですね。

内転筋に対しては、ダイレクトにマッサージを加えて、その後、crook lyingで股関節の動きとともに、腰椎部の選択的な動きを誘導してみます。



crook lyingでは、上部体幹〜頭頸部はリラックスしていただきつつ、下肢の支持で骨盤の尾骨を上に向けるようにしながら動いていくことに注意します。背中をそらすような動きになると、脊柱全体の伸筋が活動して骨盤の選択的な動きにつながりにくくなります。

crook lyingを両側の下肢で行った後、座位になってCKPからの抗重力伸展活動を促すと、端座位姿勢で円背が分かりにくくなるような感じに。

その後、立位、歩行へ。

全体的に頭頸部が楽になって、動きやすくなられたようでした。

頭痛もあまり感じられない状態となっておられました。


まぁ、こう言ったアプローチは、経過が大切ですよね。

頭痛が再び起きないことが大切なのですが、それが私たちには情報として入りにくいのです。

大体、頭痛が再発したりなんかしたら、他のリハビリ事業所もしくは整体をご利用になられることになったりすると思いますので、こちらには来られなくなってしまいます。

また、改善したとしても、こちらに来られなくなりますので結局私には経過がわからないということになるのです。


結果、私にわかるのは、半年とか1年経って、別の要件でご連絡をいただいたりしたのであれば、「あぁ、あの時はうまくいっていたのだなぁ。」と理解することになります。


だって、うまくいってなかったら、どのようなことであっても、もう連絡をいただける事はないのでしょうから。


あ、そう言った意味では、1年前の腰痛へのアプローチは結構うまくいっていたのかもしれないですね。

٩( ᐛ )و



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