top of page

膝の動き

右基底核梗塞、左片麻痺の患者さん。

経過は長く、20年以上でしょうか。

手足はガチガチ、体幹も左右差が見られます。歩行は麻痺側膝をロックさせてバックニーで固定して瞬間的に荷重をかけるような立脚相。

上肢はウエルニッケ・マンの典型的な姿勢をとられています。

だけど、要素的な感覚はやや鈍いながらも有ります。運動覚も存在しているようです。自発的な動きは見られませんが、口頭指示では手足をある程度動かすことが出来ます。手などは仰臥位であれば、肘を曲げずに140度ぐらいまで挙上できますし、筋の粘弾性にアプローチすれば肘を伸展させる運動も出力できるのです。それらの運動出力パターンプログラムが有るにもかかわらず動きのファーストチョイスに左手足が加われない感じです。

画像所見は見ることができませんが、そんななかでも考えて行くと、補足運動野とのループが機能していない、或いは、補足運動野のループのなかで左の上下肢を動かすプログラムが選択されないことが推測されます。では、なぜ補足運動野ループが両側性に機能していないのかということになるのですが、そこが損傷しているのか、補足運動野への頭頂葉からの出力がおかしいのか。もしくは環境情報や記憶情報を統合した前頭葉から前補足運動野への出力がおかしいのか。まだ解りません。

全体的な姿勢を見ると、身体図式もかなり崩れていることが推測されます。頭頂連合野ループの機能障害も考えられますね。運動出力が口頭指示で出来ているとすると、言語野で理解した運動のイメージはあって、それで運動プログラムを駆動して一次運動野まで出力パターン情報を送ることが出来るので、高次運動野ループは比較的保たれている可能性が在るのかも知れません。

とすれば、頭頂連合野ループの損傷による身体図式の問題と、そこで生成されている誤った(?)身体図式情報が上縦束で前頭葉に送られてしまうことで補足運動野が上手く麻痺側を使えないということになりますでしょうか。

であれば、なぜウエルニッケ・マンの姿勢〜連合反応/痙性が存在しているのかという疑問があります。

しかも、上肢はγ系の強い更新を伴う共収縮となっているのに対し、下肢は膝の意図的な制御が出来るにもかかわらず無意識下の歩行のような場面では膝の安定性が乏しく、膝屈曲位で荷重すると、軽いコラップスが起きます。上肢の屈曲は麻痺側荷重時に増強することから、怖さなどの辺縁系の反応が強く関与している可能性が在ります。

じゃ、下肢が結構問題かも。

下肢は痙性のパターンを持ちながら、共収縮が充分でなく、膝屈曲位で荷重すると軽いコラップスが起きてしまいます。なので動きの中での共収縮の要素が乏しい〜動きの中では出力と比較して過剰な抑制が網様体脊髄路に存在している可能性が示唆される運動なのです。

頭頂連合野ループの機能障害で下肢の身体図式も障害されていることを考えれば、膝の微妙な位置を知覚できていないとも言えるかも知れません。だけど、いずれにしても安定性をもたらす共収縮が膝に弱い気がするのです。脳の機能的には、未熟な身体図式の中でもなんとか下肢に出力を伝えることは出来ています。だけど歩行時に駆動すべきなのはCPGであって、脊髄レベルでγ系の調整が成立していないことになります。中枢からのγ系への調整が不足しているとすると、最も推測しやすいのは、脳室が拡大しているのでは無いかと言うことです。脳室が拡大すると、特に下肢の出力はタイミングが遅れることになります。ここは特に一歩目に関わることではありますけれど。つまり、意図的に荷重する際、未熟ながら身体図式は前頭葉に運ばれていると思うのです。そして、運動連合野ループは運動出力に向けて基底核から脳幹に抑制性の制御が働きます。そこに運動出力が加わらないと、単純に抑制だけが目立つ結果となる可能性は在るのかも知れません。タイミングの調整のためには、下肢から確りフィードバックが起きて中枢で身体図式の再構成が起き、そこからの前頭葉への投射で、プログラムを生成させてこう示威運動や基底核ループのなかでタイミングのずれを修正/学習をおこしていただく必要があるように思います。

とすれば、次に、治療的に考えるとき、どのような刺激が良いのかという話になってきます。

そうすると、膝の安定性〜共収縮に必用な大腿四頭筋とハムストリングスの状況が知りたくなりますね。ハムストリングスは短縮傾向にあるのは知ってました。大体四頭筋にふれると、萎縮が強く、また硬いのです。硬さは筋の動きを制限します。筋の動きを制限しているという事は筋紡錘は働きにくく、軽い動きが入っても筋の硬い部分は動かずに筋紡錘は興奮せず、強く動きが入ると硬い部分が伸張されると一気に筋紡錘の働きが増すような極端な情報の変化が脊髄に上行することになります。また、その際にはその状態でGTOへの入力が起きるので、同側に抑制性の反応を脊髄は返しているのかも知れません。これでは適正な感覚情報が脳に届きにくいですよね。

というわけで、推論は取りあえずそこまでにしておいて、現在は大腿の軟部組織の粘弾性を作りつつ、動きの中で感覚情報を出来るだけ中枢へ送り返すアプローチを試みています。

反応によっては、中枢神経系の考察が1からになるのかも知れないですね。

動画は、仰臥位で四頭筋の粘弾性に介入した後、crook lyingで左大腿をモールディングして筋紡錘からのフィードバックを強めつつ膝の安定を演出して安定した足部への荷重を感覚入力した後の膝の動きです。

今までは、膝の伸展は股関節の伸展と同時にしか起きず、膝の屈曲は股関節の屈曲と一緒にしか起きなかった下肢がこんな風に動かせるのに本人もびっくりしておいででした。


少しでも良くなっていただくにはどうしたら良いか?

今は試行錯誤の中にしか組み立てることの出来ない推論があるのだと信じて、頑張っています❗

ちなみに、現在は、裸足でも意識を用いれば歩行時に膝屈曲位での荷重が可能となりました。しかし、それは意識によってロックしそうになる運動出力プログラムを静止するという脳の情報処理によって違うプログラムを選択するようにしているだけですので、出力プログラムのファーストチョイスまでの道のりはまだ長そうです。

ただ、この長い経過のなかでも膝の分離が起き始めているのですね。

脳って凄いですね。

٩( ᐛ )و


閲覧数:11回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page