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ファシア

更新日:2023年5月23日

なぜ触れなければならないのか?


リハビリテーション医療というのは、知識や技術の流行の振れ幅が極端なのです。

ヒーリングバックペインという本が流行した際、「痛みは気のせいだ」とおっしゃっておられるセラピストがおられたり。(ホントデスヨ)

じゃ、ポリモーダル受容器なんていらないじゃんと言う突っ込みはさておきまして。(^_^;)

長くこの仕事を続けておられる方はご存じだと思うのですが、痛みに関する知識や技術などの流行は時代によって定期的に身体的な側面と心理的側面を大きく行き来していたりします。

ほかにも、アクティブタッチが流行れば他動的に触れるような技術より、自ら能動的に触れるようなアプローチがもてはやされたり。大事なんですけど、同じように大事なことは他にも有るのでは無いかと思うのです。

マッサージに効果があまりないと言われたら、マッサージなどしませんというセラピストがバカバカ増えたり。

プラットホームを減らすのも流行ですよね。

そのほかにも長下肢装具とかいろいろ。まだたくさんありますよね。

みんな、「ぶんぶん」と。前に後ろに。右に左に。大きな振り子のようにあっち行ったりこっち行ったりしているように見えるのですよ。

多分、真実~本当に必要な知識や技術はそれらの情報の真ん中にふわふわとあるんじゃ無いかと思うんです。


最近、ファシアという本を読んでいて、とても面白いのです。

なぜ触れなければならないのか。どういったアプローチが重要なのかと行ったことを示唆する内容だと思うのですね。

というわけで、少しだけこの本のご紹介をしておきたいと思います。


この本は、大阪の紀伊國屋書店で見つけました。

本屋さんは楽しいですね。

著者は、デビッド・レソンダックという先生。知らない先生です。

あとで、ネットで検索してみましたが、良く人物像がわかりませんでした(^_^;)

監訳が小林只先生。「日本整形内科学研究会」の医師で、島根大学で非常勤講師をされておられるそうです。

整形内科学~整形外科とは違うのです。詳しくはネットで検索していただければと思いますが、隠岐の島前病院におられる白石先生という方がおられまして、「セラピースペースながしま」を以前ご利用だった手の骨折後の可動域制限のある方のハイドロリリースを治療選択に入れてもらうために受診していただき、その際に同行させていただいたことがあります。その診察の丁寧さにとても感動しました。また、ハイドロリリースの後、リハビリをさせていただいたのですが、再手術が必要とされておられた利用者さん、手術なしで可動性が回復してきて、リハビリとの親和性の高さや効果などから、とても関心を持っている団体が、整形内科学研究会なのです。

その整形内科学研究会がこの本の監訳に協力として名前を挙げておられまして、この本を購入することにしたのです。


読んでみるととても面白い。読みやすいですし。


さて、ファシアと私たちのリハビリテーションでの臨床がどのようにつながっているのか?

などということを、私が生意気にも考えていきます。

ファシアは、日本では「筋膜」あるいは「膜」と訳されています。

実際、いろいろ調べてみると、筋膜、膜と言った表現とはちょっと違う感じがします。

人の体は様々な細胞が存在していて、それらはまとまって人の形態を作っています。それらの細胞をつなげているのが膠原原繊維(以下、原繊維)と言われる物です。原繊維は体中に張り巡らされ、それぞれの特性を持った細胞の集まり~筋肉やそのほかの臓器を包みこんでいます。

これら構造を比喩して「柔らかな骨格」と表現したりするようです。

人を形作る大きな原繊維ネットワーク。

原繊維は粗な部分では立体的に蜘蛛の巣が重なり合ってつながっているような構造~フラクタル構造をしています。



これらの粗な部分が密になるとシート状になり「膜」と表現するのがぴったりな状況になるのですが、当然、そのシート状の部分には周囲を原繊維の粗な部分が取り囲んでいて、シート状になったところに接続しているのを見ることができます。膜に見えるシート状の部分も、原繊維ネットワークの一部なのですね。

例えば、筋外膜はさらに内側に筋周膜、筋内膜とつながり、筋内膜の中には筋繊維(アクチンとミオシンからなる繊維)があって、おそらくインテグリンによって筋繊維が筋内膜と接続することで筋の張力を膜に伝えていくのですが、筋外膜は骨に近づくとより粘弾性が少なく頑丈な膜組織となり腱と呼ばれます。腱の内部では原繊維の粗な部分があり、そこに感覚神経(1b繊維)が通っていて、引っ張られて粗な部分が密になると神経繊維が物理的に挟み込まれることで興奮し、その電位変化は中枢に送られて感覚情報として処理されることになるわけです。



表在感覚と言われる物も、原繊維ネットワーク~蜘蛛の巣を組み合わせたようなフラクタル構造~に存在している微少空間に感覚を受容するための各種受容器が存在していて、その受容器は原繊維ネットワークによって緩やかに定位されているわけです。

血管なども膜が筒状になった物です。原繊維ネットワークは血管にも接続していますし、それによって血管は緩やかに定位されています。神経などの細胞も膜で覆われていますし脳も膜に囲まれた臓器です。膜による緩やかな定位の恩恵を受けています。肝臓や腎臓などの内蔵機も同様です。

ですので、体の立体構造を支え、動かし、感覚を受け取る事を可能にする。また、場所によって構造と名称を変える物の、共通の原繊維によって構成される、生命を支えるネットワークシステムが、おそらくファシア(Fascia)といえるのでは無いかと個人的には思っているのです。


定義~定義は大切ですね。言葉の持つ概念を伝えるために作られる物ですから。定義によっては必要なことが充分表せないこともあるでしょう。失行や失認の定義も賛否が起きてることをご存じの方もおられると思います。

構造や行動、行為。人のことはわかっていないので、定義を作るとそれに対して賛否が起きることは珍しくないのです。

さて、2015年。第4回ファシア研究会議においてファシアの定義が作られました。

「ファシアは、筋肉とそのほかの臓器をつなぎ、囲み、分けるために皮下で形成された鞘やシート、あるいは剖出可能な結合組織の集合体である。」

わかりやすいですね。

だけど、大事なことが抜け落ちているように思います。

この定義、結構賛否があって揉めたようです。

「やっぱり」というところですね。



さて、ここからがやっと本題です。

なぜ触れることが必要なのか。


スティーブン・レヴィンという外科医が、あるときアパトサウルスの化石化した骨格を見ていたそうです。

竜脚類の長さ15メートルにも及ぶ頸部を見ていた彼は、その頸椎と胸椎のつなぎ目と下肢の骨のサイズを考慮して、次のように結論しました。

「これほど広範囲で複雑で、率直に言って馬鹿げた生物のバイオメカニクスを桁、滑車、レバーを用いた古典的な物理学のモデルで説明できるわけが無い。人体が、どのように組み立てられ、機能するかに関して、学んできたすべてが、彼にとって疑わしい物となった。これらすべてが間違っている、あるいは少なくとも単純化しすぎしまっていたら、彼が今後も外科手術を行っていく理由は存在するのかと言うことを考えていた。彼はそして、テンセグリティ構造を人体(生物)構造の基礎に置くべきだ。」


現在、人体はテンセグリティ構造で成立していると言うことに異論がある人は居ないのでは無いでしょうか?

このテンセグリティ構造はファシア~広大な原繊維ネットワークによって作られていると言うことになります。

そして、そのファシアは、機械的な感覚ネットワークとも表現できる機能を有していることは構造的にもわかっているわけです。

ファシアの主要な成分は、繊維芽細胞によって産生されるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などを含んでいます。

繊維芽細胞。大事ですね。


繊維芽細胞は、すべてのコラーゲン繊維を合成するだけでは無く、細胞と細胞外マトリックスの間の張力に応じてコラーゲン構造を再編する能力がある。つまり、Fasciaは機械的な需要と供給によって反応し、ウォルフの法則に従っている。

また、怪我などの状況においては、繊維芽細胞は筋繊維芽細胞に変化する。繊維芽細胞は怪我をした部位に集まり、サイトカインを産生、筋繊維芽細胞が解放された創部を接着する。


定期的な運動の欠如あるいは、不動は、繊維芽細胞への適切な刺激がほとんど無く、正常なコラーゲン繊維を含む器質の形成に悪影響を与える。つまり、ファシアは、機械的な需要と供給によって反応するそうです。


さらにイングバーの実験の事が書かれています。以下、本文より。

~引用開始

磁石のビーズと、微少なピペットで細胞のコラーゲン細胞骨格を引っ張った。適切に引っ張られた細胞は育ち、丸まりすぎた細胞はアポトーシスを起こした。

「平らに広がった細胞は分裂する可能性が高くなり、丸まった細胞は広がることを妨げられ、アポトーシスに至った。伸ばされない、または縮まない細胞は分裂せず、死ぬことも無かった。代わりに、その細胞は組織特異的に細胞自体を分化させた。毛細血管細胞は、中空の毛細血管を形成した。肝細胞が、肝臓が通常血液に与えるタンパク質を分泌した、などである。したがって、細胞と細胞骨格の機械的再構成は、その細胞がその場で行うべき事を、細胞自体に明確に指示している。」(Ingber 1998)

「人体の分子から、骨、筋肉、腱まで、テンセグリティーは明らかに自然が好む建設システムである。例えば、腕を動かすたびに断裂や切れ目無く、どのようにして皮膚が伸びて、細胞外マトリクスが広がり、細胞がゆがみ、細胞の内部フレームワークを形成する相互連結した分子が引っ張りを感じるのか説明できるのは、テンセグリティーだけであろう。」(Ingber 1998)

~引用ここまで。


機械的な刺激に応じて構造を変化させる原繊維ネットワーク。

そしてそのネットワークは感覚入力に大きく貢献しているわけです。

つまり、動かないところは、動かない状況に適応して原繊維ネットワークは変化していくわけです。その中の感覚を受容する神経を含めた細胞群も同様ですね。


感覚は、中枢神経系にとって栄養が豊富な畑の土のような物です。枯れた土からは良い作物(脳で言えば情報処理ですね)が育たないですし、豊富な栄養を含む土からは良い作物が育つわけです。

脳にたくさんの適切な感覚を入力しようとすれば、適切なテンセグリティ構造、それを支える原繊維ネットワークがとても重要であることは言うまでも無いでしょう。

そして、その原繊維ネットワークは物理的な変化に応じて構造を変化させていくわけです。

適切な位置に筋や四肢を定位させることや、その中で活動を求める事って大事そうでしょ?


触れて、筋や関節を定位し、組織の状態を変化させ、感覚情報をコントロールしながら活動をしていただく。そういった作業、つまり触れる、操作すると言った事も、動きを感じていただく、感覚を脳に届けるための大切な要素になるのだと思うのです。


中枢神経疾患、片麻痺などに限りませんが、動かないところは動かさずに運動を遂行しようとするパターンに陥っているのが放置されれば、原繊維ネットワークはそれに適応し、それに応じて感覚受容器も変化し、感覚情報も変化していく事になります。それらの感覚情報を中枢神経系は処理して運動プログラムを変換していくわけです。

悪循環が容易に起きそうですよね。


今は、まだこの本、中盤までしか読んでいません。

それでも結構楽しめています。

いろいろなインスピレーションを受けることができてます。

後半、神経系の話が展開されていくことになります。

「ファシアと神経系システム」「ファシアと脳」と言った感じですね。

ちらと内容を見たりしていますが、結構刺激的な感じを受けます。


この先は、是非、この本を手に取ってご自分で確かめてみてください。


2023/05/23追記

近年、歩行などいくつか共同して働く筋(シナジー)で分類して研究をされています。

中枢神経系の出力が大きく相関しているとの研究、いくつかの筋出力を同時に発火させるシステムが想定されています。同時に、原繊維ネットワークのつながりも張力の関連性を構築する要素になりますので、分析する際に神経学的な側面と解剖学的な側面を同時に考えて行く必要がありそうですよね。

既出なんでしょうけれど。


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