右片麻痺発症後10年以上経過している方です。
幼少期に強く頭を打った経験があり、それ以来左下肢(足部)が動きにくくなったとおっしゃられていました。その時点で脳に何らかのダメージが入ったものと推測されました。ですので、左の軽微な麻痺について50年以上の歴史があって、そのため独特なフェノタイプをお持ちです。
現在は、1回/2週の頻度で、簡易ベッドを担いで訪問させていただいています。
4月末の映像と前回の映像ですので、4回のアプローチを挟んだ歩容動画です。
短い動画ですが、4月の時点では左上肢のスイングで上腕が体幹を超えて前に出ることが無く肘から下で小さいスイングを行われていることや左腰部の過伸展による代償でコアが効きずらい姿勢の構造で、左下肢の立脚相で股関節伸展が乏しかったりして支持の時間も短い感じでリズムもすこし崩れています。
上肢へのアプローチは軟部組織を緩めるぐらいで、腰部~下肢へ動き入れていくようにすることと左足部の感覚入力、左片脚立位での体幹のバランス反応の促通などを繰り返し、前回スキップがすこしできるようなりました。
子供の時、彼一人スキップが出来ないヒトであったそうで、それ以来していなかったとのことですが、面白がってスキップをされていました。
先日の最後にとった歩行動画では、腰部の過活動が減少して上肢のスイングが自然になっている事がわかります。
最近では交差点を渡るときにすこし走れるようになったので、安心して町が散歩できると話されておられます。
運動学習って言うのは、結局のところ課題を行っていくこともそうなのかもしれませんが、運動その物や運動の学習過程を楽しめるかどうかが大きな鍵になるのだと思います。
昔英語を教えている甥っ子が、どうやったら英語が上達するのかと聞かれたときに、英語が楽しくなるように出来たら後は勝手に上達するといったことを話していたと聞いたことがあります。
難しいですが、運動/運動学習のプロセス自体が本人にとって楽しい経験になるようにすることさえ出来たら、きっと後は上手くいくのだろうという気がします。
この方は、運動/運動学習を楽しむことを知っておられるので、効果が出やすいヒトなのだと思います。
話は変わりますが、この方病院に入院されている頃から診ています。いったん回復期にいかれてその間は診ていないのですが、外来として私のところに戻ってこられました。
私が職場を辞めたとき、「永島先生はいつか辞めると思っていました。あの(リハビリの)部屋で一人だけ異質な事をされてましたから。」
観察力もすごいですね。ただ、一人だけではなかったですけどね。私が指導していた数名のOTは私と同じようなことをしていましたけど。
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