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運動代償とその脳卒中後の神経再編成への影響

更新日:4月6日

先日、Facebookで面白そうな記事を見つけました。


ざっと読んでみると、何となく私がいつも考えていることと似た様な内容の様子です。

ただ、Facebook上の情報ですので、この研究があったとして、誰がどの様な意図で要約したのかは不明です。

と云うことで、まず研究者であると思われる、Theresa A. Jonesがどの様な人なのかという事を調べてみました。

どうやら、テキサス州神経科学研究所の研究者のようです。

内容的に、神経科学ですので、おそらくこの人が書いた論文という事で間違いなさそうだと判断しました。

そうすると、この研究がどの程度取り上げられているのかという事や、元の研究論文に触れてみたいと思いますよね。

と云うことで、題名で検索してみます。

「Motor compensation and its effects on neural reorganization after stroke」で検索すると色々出てくるのですが、この研究者のものを確認すると、どうやら2017年にネイチャー誌に掲載されていたようです。ネイチャー誌に記載してあるアブストラクトも同じような内容ですので間違いなさそうだと思います。



では、このネイチャー誌の信憑性というか、この雑誌に取り上げられる論文というのがどの程度のものであるのかも気になります。

どうやら、ネイチャー誌に掲載されるのはかなり難しいらしいですね。ある程度の整合性がありそうではあります。しかし、学術論文ですので、自分なりに論理的な整合性が保たれていて、信じて良いのかどうかと言う判断をする必要がありますよね。


で、色々検索していたら、元の研究論文と思われるものを発見しました。



ざっと読んだところ、すべてが理解できるわけではありませんが、信頼しても良さそうだと思います。


そして、Facebookで観たアブストラクトは、良く要約してあるものだという風に考えたので、ご紹介しても良さそうだと思い、元の英文と、その和訳をつけておきます。


「Motor compensation and its effects on

neural reorganization after stroke

Theresa A. Jones

An interesting article and some personal reflections.... After a central lesion, "recovery" is defined as the restoration of a motor competence similar in terms of patterns and effectors to the pre-lesion phase, and "compensation" as the possibility of achieving a functional goal in new and different ways compared to healthy subjects. Typical strategies and compensatory strategies are well described in literature as far as central functions of neurorehabilitation such as reaching and grasping, locomotion, sit-to-stand... Most of the compensatory strategies are self-learned and emerge spontaneously after injury, i.e. when the patient attempts to respond to the environment requests without an adequate postural and motor background: the hyper-use of the less affected side and the learned non-use of the paretic side are two of the most relevant strategies. Other strategies can be induced by training when, for example, the patient is pushed to perform tasks that are too complex for his/her motor potential or when the focus is strictly oriented towards the completion of the task and not to the quality of the gesture. In fact, many rehabilitation approaches and outcome scales do not consider the quality of movement and only stress quantitative performance. Making experience of compensation or qualitative movement could underlie different neural correlates, because sensorimotor experience is the strongest modulator of neural plasticity after central lesion. Although it is not currently possible to precisely describe the mechanisms underlying recovery and compensation, studies on mice have found that different neural networks are accompanied by the two different stimulations. In fact, mice that in the initial phase compensated a lot with the non-paretic limbs developed a neural network characterized by less efficient synapses in terms of number and type compared to mice that did not compensate and this difference remained even after the administration of a specific period of motor stimulation, equal in duration and intensity. The conclusion of the article leads us to reflect on the importance of the quality of the motor experience for the full development of the post-injury

potential at least in the initial phases when the reorganization of the neural circuits is maximal.」


「運動代償とその脳卒中後の神経再編成への影響

脳卒中後の神経再編成

テレサ・A・ジョーンズ

興味深い研究論文と個人的な考察である。中枢病変後の「回復」とは、病変前と同様のパターンと機能因子を持つ運動能力の回復であり、「代償」とは、健常者と比較して新たな異なる方法で機能目標を達成する可能性と定義される。典型的な方略と代償方略は、リーチングや把持、ロコモーション、座位から立位など、神経リハビリテーションの中心的な機能に関しては、文献によく記載されている。代償方略のほとんどは自己学習的なもので、受傷後、つまり、患者が適切な姿勢や運動的背景を持たずに環境からの要求に応えようとしたときに自然に出現する。その他の方略は、例えば、患者の運動能力に対して複雑すぎる作業を強いる場合や、ジェスチャーの質ではなく、作業の完遂を厳しく重視する場合に、訓練によって誘発されることがある。実際、多くのリハビリテーションアプローチやアウトカムスケールでは、動きの質は考慮されず、定量的なパフォーマンスのみが強調されている。中枢病変後の神経可塑性を最も強く調節するのは感覚運動経験だからである。現在のところ、回復と代償の根底にあるメカニズムを正確に説明することはできないが、マウスを使った研究では、2つの異なる刺激によって異なる神経ネットワークが付随することがわかっている。実際、初期段階で非麻痺肢で多くの代償を行ったマウスは、代償を行わなかったマウスと比較して、シナプスの数と種類の点で効率の悪いシナプスによって特徴づけられる神経回路網を発達させ、この差は、一定期間の運動刺激を投与した後でも、持続時間と強度が同じであっても残った。この論文の結論は、傷害後の潜在能力を十分に発達させるためには、少なくとも、神経回路の再編成が最大となる初期段階においては、運動経験の質が重要であることを示唆している。」



さて、これを読んで何を感じるのかというのは、また人によって異なるのだろうとは思いますけれど。

ただ、今までのリハビリテーションの研究などで用いられるスケールについて、「動きの質は考慮されず、定量的なパフォーマンスのみが強調されている」と云うことを指摘していますね。

また、回復について、代償的な運動によって形成された不都合なシナプスは残存しやすい事を指摘した上で、「傷害後の潜在能力を十分に発達させるためには、少なくとも、神経回路の再編成が最大となる初期段階においては、運動経験の質が重要であることを示唆している。」としています。

たぶんですね。言い換えると、「現在行われる定量的なパフォーマンスの獲得を目標としたアプローチでは潜在能力を十分に発達させるものでは無い」と云うことになるのでは無かろうかと思うのですね。


リハビリテーションにおいて急性期から回復期などの時期をどのように考えて行くのかという方向性について、ゲームチェンジャーになる可能性が在る研究報告だと思うのですよ。


多分、日本の保険医療が行っているFIM利得でリハビリテーションの効果や質を判断する事には、疑問を持った方が良さそうだと思うのです。

私のように疑問を持ちすぎると、病院を辞めることになるので、ほどほどにね。

(*^_^*)


あ、あと、この研究のアブストラクトでは少なくとも初期段階(〜代償性を構築する過程の問題ですので、おそらく日本で云うところの急性期から回復期だとは思うのです)が大切であると書いてありますが、「少なくとも」と記載してあります。慢性期では大切では無いとか、回復しない言うことではありません。


私の経験では、慢性期においても脳の可塑性はおきていて、回復に向かう事も多いとは思います。

損傷範囲などは回復の速度や程度に大きく影響しますが、それだけでは無くてリハビリテーションの中で急性期や回復期に何をどのようにしたかとかにもよってかかる時間に差は出てきても、運動の質の変化は数年経過した後でも起こりうるものではあります。

少しでも動きやすく、少しでも綺麗な、効率の良い、疲れない動きということを目指すのであれば、何時でも脳の可塑性に基づいた運動学習はおきると考えても差し支えないかと思います。





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