筑波大学の研究のプレスリリースで、以下の記事を見かけました。
脳の構造的には当然なのだろうと思うのです。
身体認知を主にを司っているのは頭頂側頭連合野です。運動を主に司っているのは前頭葉の高次運動野/運動野と言うことになるのですが、これらは相互連絡をして環境に適応するための姿勢と運動機能を表出できるように情報処理しているのです。
認知機能だけが落ちるとか、運動機能だけが落ちるとか、どちら一方しか影響を受けないと言うことは、構造的にはあり得ないわけです。
実際の人の行動を見ても、地球上で重力や視覚、聴覚、表在感覚、固有受容感覚などの情報を処理することで身体認知(身体図式)を生成してそれを基盤にしつつ外的環境の物体の配置や物体の意味などを知って、適切な行動を起こすのです。その行動は環境知覚の変化に結びつきながら、破綻すること無く行動を継続することが出来るわけです。
臨床的にも、片方の肘の骨折なのにバランスをよく見てみると非対称性が強くなっておられたりします。下肢の骨折の方であっても、今まではなんともなかったトイレまでの距離が遠く感じるとおっしゃる方も少なくありません。
そう言った諸々のことを考えると、運動と認知を分けること自体に無理があるのだろうと思ったりするのです。
さらにアルツハイマー病などに関してはタウたんぱく質の蓄積も要因の一つと考えられているようですが、このタウたんぱく質を脳の中から除去するシステムがグリンファティックシステムであろうと考えらています。
ということは、グリンファティックシステムの機能低下がアルツハイマー病を引き起こしているケースも考えられるのだと思います。実際アルツハイマー病の症状の一つに覚醒と睡眠のリズム障害が初期から出ることが多い事が知られています。グリンファティックシステムはノンレム睡眠時に最も働くメカニズムですので、覚醒と睡眠障害の影響はあると考えられます。したがって、グリンファティックシステムとアルツハイマー病などは関連性が強いと考える事が出来ます。
一方、グリンファティックシステムは脳の拡散性情報伝達にも関わっているものと考えることが出来るので、刻々と変化する重心の変化や環境の変化に適応した身体制御が困難になることは推測できます。おそらく、ここにはAchの脳皮質広範にわたる投射(拡散性伝達)が関わっているのでは無いかと私は考えています。
臨床的にも、身体機能と認知機能は関連性があると私は感じていたのですが、それが研究によっても実証されつつある様ですね。
現在の使用されている評価とか検査においては、身体機能と認知機能を別々のものとして取り扱っているようなのですが、おそらくそれでは不十分というか、患者さんの状況を知るという目的においてはミスリードを起こす結果を出してしまう可能性もありそうですね。
今後は新しい検査や評価法を検討することが必要になるのかも知れませんね。
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