子供の頃から姿勢制御に問題を抱えておられたかたが今、こちらの事業所を利用されておられます。
体幹の低緊張でコアのシステムは働きにくい状態で、仕事では座位中心です。体幹の崩れは左右差があり右前方に崩れて(右に崩れた円背というと分かりやすいかもしれません)、頚部は左に立ち直って左の頚部側屈筋は短縮し、右は常に伸びているような状態でさらに過伸展して前方を見ておられました。
見させていただいたところ、タイプとしては右片麻痺ですが、両側性の障害です。
元々、左股関節痛が出てきたと言うことで、OA等を疑っておられたようです。以前一緒に働かせていただいていた医師からの紹介でした。
左股関節の痛みは右下肢の支持の弱さから過剰に左下肢を使用されておられるので痛みが出たようですが、痛みその物は鼠径靱帯周辺のようでした。
紹介いただいた医師と情報を交換しながら実施していたのですが、痛みに対する薬を処方していただいたようだったので、痛みは減弱してきています。
で、痛みが再発しにくいように体幹の軸を垂直軸に会わせていくことと、右下肢の支持を獲得するようにアプローチを行っています。
その経過で、頭部が垂直になると、「まっすぐの物が斜め(左に傾いているように)に見える。」と訴えられるように。
単純に考えると、そんなことは起きないはずです。
私たちがテレビを見ているときに首を傾けてもテレビは違和感なく見れています。
身体を傾けてもテレビはある程度きちんと見れます。
この人は身体が崩れて頭部が立ち直って垂直を維持していても、それで垂直を知覚できていたはずです。だからこそ、斜めに見えるという訴えが出てきたのです。
考えられる可能性は、頚部の筋群の非対称の短縮と伸張が長期にわたって起きていて、頚部がまっすぐになった際に頚部からの固有受容感覚と視覚がマッチしなくなったと言うこともあるかもしれません。ただ、これだけだと経験的には結構弱い根拠のような気がします。
頭部を垂直軸に会わせているのであれば前庭系は働いているようですし。
ですので、もっと可能性が高いのは身体軸の感覚自体がずれているか、身体軸の感覚自体がかなり弱いため、頚部筋からの固有受容覚と前庭系を会わせて垂直軸を構築しようとするような情報処理が優位であるので、体幹の垂直軸を知覚できた際にそのずれが生じて視覚が影響を受けているということなのかと推測をしています。
次回おいでの際は、体幹を抗重力的に垂直に合わせることは少しできはじめているのでそれを使って,その状態で上肢の体性感覚で垂直を知覚するようなこと、例えば簡単な物なら棒などを垂直に保持しながら何かをしてみるとか,ちょっと大きな垂直成分のある箱のような物を手で知覚して頂くとか,そういった何かしらの工夫を取り入れてみようかと考えているところです。
下肢の支持も大切ですが、垂直軸が混乱したままでは下肢の出力を抗重力的にまっすぐ身体を持ち上げる機能に結びつけにくいでしょうから。
写真は匹見のミステリーハウスというところ。
新型コロナが落ち着いたら一度行ってみたいと思っています。
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