視覚って不思議で面白いですよね。
ゴロンと横になって、テレビを見ていても、あまり違和感なく見ることができますが、テレビを90度回転させたら見辛くなりますよね。
視覚情報と前庭情報は関わりがあることは間違いありません。
ほら、書道などをを学んだことのある人はお分かりになられると思いますが、半紙に向かう姿勢をしっかり叩き込まれますよね。
あれは、姿勢を正すことが書道に必要なんではありますが、今考えれば、この、姿勢を正すという姿勢調節によって、半紙の空間をしっかり把握し、字をどのように半紙に配列して書いていくのかとか、自分の筆が半紙にどのような文字(線)を書いている(引いている)ので、その後の筆運びをどのようにすべきかといった情報をしっかり把握するために姿勢を正し、頭部の位置を垂直、半紙の中心に置くようにしておくことが大切なのだろうと思うのです。
少し前に、面白い経験をさせていただいたのですけれど。
それは、成人脳性小児麻痺の人で歩行を獲得されておられたのですが、中学に上がる時にリハビリテーションから離れて、高校、大学、就職されておられたのですが、股関節痛により歩行困難となって、私の事業所をご利用になられている方のアプローチの経験です。
体幹の共収縮ー安定性は乏しく、頭部は常に右に傾いていたんです。アプローチの経過で、体幹が正中軸を少しずつ取り戻し、それが垂直軸に近づいて頭部も垂直になってくると、本人が、「周りが斜めに見える。」と強く訴えられておられました。現在は垂直で真っ直ぐに見えるようになられたようです。
このことは、後学的な視空間認知と、姿勢との関わりがあることと、通常頭部の変異で起こるべき視覚入力の変化に対する垂直軸感覚を基盤とした視覚認知への調整が存在していて、この方にとってはそう言った調整の能力が低い可能性があることを示していたと考えられるのです。
それらの事から、
1)頭が垂直でなくてもある程度、空間を知覚/認知できる。それは、おそらく前庭感覚などから垂直軸を知覚し、その垂直軸知覚から視覚認知は調整をされている。
2)とはいえ安定した(正確な?)知覚/認知には、頭部を垂直に維持する必要がある。
また、トリックハウスやVR機器を使っている際の人の動きを見れば、視覚が体性感覚や前庭感覚による垂直軸知覚に影響を与えているのは間違いないと言えると思います。
ですので、
3)視覚は体性感覚や前庭感覚に影響を与えている。
こういうことを言い始めるとまだまだあるかもしれませんが、とりあえず、前庭感覚と視覚は相互的な影響が存在している。また、前庭感覚と視覚は非線形の相互作用、つまり、前庭情報の変化が視覚情報に影響を与え、それで変化した視覚情報が、前庭情報に影響して前庭情報を変化させるといった性質を持っているといえそうです。
じゃぁ、脳の構造的にも、視覚情報と前庭情報の間に相互的な繊維接続による情報交換がありそうですよね。
この辺りが結構難しくて、私の持っている書籍では、この謎に答えを出すことができませんでした。
個人的には、頭頂葉−島前庭皮質(PVIC)あたりがなんだか気になりはします。
場所的に、側頭葉のITやTEOなどの物体を認知するところに近い上に、下頭頂小葉に近くて、周辺環境情報も集まってます。また、PVICは身体図式生成に重要でもあります。
旭川医大の高草木先生の資料からです。
前庭皮質にあらゆる感覚が集まっているのが分かりますね。
だけど、これだけだと前庭情報が視覚に影響を与えるというところがまだ分かりません。
で、同じく高草木先生の資料から
これだと、前庭皮質からの出力が、頭頂間溝野に送られる視覚情報と一緒に処理をされていることが示されているように見えます。
前庭刺激が視覚情報に影響を与えている、もしくはその逆が言えそうですよね。
一方、東海大学医学部の高橋先生の論文「身体平衡における視覚と前庭核の統合」
では、「小脳に投影される身体の 3D 空間情報は,小脳前庭路を介して,所属空間情報の修正に利 用される」と書いてあったりします。
小脳前庭路。聞きなれない順番の経路ですね。前庭小脳路のことでしょうか。とすれば、前庭小脳のところが、情報処理されたものを皮質に運んで視覚に影響を与えているということなのかもしれません。
う〜んしっくり来ませんね。
前庭小脳が、側頭頭頂連合野とループ構造を形成していたら、理屈の上ではしっくりくるんですけれど。一応、歯状核からは前頭葉と共に頭頂葉にも投射があるのではありますけれど、歯状核、ちょっと外側な感じですよね。どうなんでしょう?
高橋先生、何か勘違いされておられたのかなぁ…
いや、そんなはずはありませんね。私が浅はかなのでしょう。もう少し考えてみます。
あ、もしかしたら小脳前庭路ー前庭小脳路の相互的な働きで、前庭器官の補正をしているということなのでしょうか?これだと視覚の話ではないのかもしれません。
だけど、視覚情報の認知はある程度というか、かなりの程度後学的な要素が含まれていますので、小脳による調整はありそうだと思うのではありますけれど。
ところで、少し話が変わりますが、実は視覚と聴覚も結構相互作用があります。
分かりやすいところでは、聴覚刺激で、そちらの方への視覚的な探索が起きますよね。
ちょっと知られていない現象に、マガーク効果というのがあります。視覚の情報が聴覚情報に干渉するというものです。
分かりにくいかもしれませんね。
youtubeで動画があったので、見ていただけるとすぐにわかると思います。
みていただけましたでしょうか?
これを見ると、視覚入力が聴覚情報に影響しているというのがはっきり分かりますね。
ということは、視覚情報に問題を抱えると、言葉は理解できるけれど、言葉がきちんと聞き取りにくいといった感じになるのではないでしょうか?
失語ではないけれど、ちょっとだけ理解が悪いと言った感じの像がなんとなく思い浮かびますよね。
話を元に戻します。
視覚と前庭感覚。構造的にも眼球と三半規管は頭部が垂直であれば、水平になるように配置されています。このことは、視覚及び前庭感覚は頭部が垂直にある時に最も
情報処理を考えても、姿勢との相互的な関わりが強くあるようですよね。
これらのことを全体的に解釈すれば、視覚系の認知能力の発達や改善のためには、姿勢制御に基づいた前庭感覚、視覚、体性感覚などと、それらによって成立する垂直軸情報が大きく関わるのだろうという事は、言えるのだろうなぁなどと考えています。
何を書きたかったかというと、まだ脳の処理はわからないことは多いのではあります。だけど、「視覚失認とかそう言ったことや、コミュニケーション能力などの発達とか学習とかにも姿勢は大切だと考えています。」ということであったりします。
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