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脳の髄鞘化とNICUでの対応とCVA



髄鞘とは、神経繊維を包む鞘のことです。

ランビエ絞輪という間のくびれで跳躍伝導〜神経興奮をくびれのところで飛ぶ様に伝達していくことで、興奮(情報)伝達のスピードを上げる様な働きがあります。

それとともに、脳の構造的な安定性を高めているようです。

以前、講習会で講義をしていただいた医師のお話ですが、成人の脳は手で持てるそうです。

しかし、未熟児で髄鞘化が充分起きていないあかちゃんの脳は、手で持つと指の間からこぼれ落ちる様な感じがするそうです。


では、髄鞘化はどのくらいの時期にどの様に起きているのでしょう?


1967の資料ですから、現代は変化があるかも知れませんが。

胎児の時期、4〜5ヶ月では脊髄の前核細胞など運動に関わる繊維の髄鞘化が始まるようです。

脊髄に置ける感覚の経路は6ヶ月ぐらいから髄鞘化が始まり、出生後6〜8ヶ月で髄鞘化が完成するようですね。

網様体はちょっと遅れて出生後から髄鞘化が始まるわけです。

関連して、皮質橋網様体脊髄路に関わる、前頭橋路は出生後2〜3ヶ月ぐらいから髄鞘化が始まり、3〜4歳まで続くようですね。重力下に生まれ出てから、APAsを学習するわけですから実に合理的な順番ですね。(*^_^*)


ざっとみると、脊髄は授精後数ヶ月という早い時期から髄鞘化が始まっています。

脳幹はそれに少し遅れて髄鞘化が起きる形です。

そして、大脳皮質は出生後に髄鞘化が起きてくる様な感じですね。


とすると、出生後も脳の皮質はまだ充分な構造的安定性を持っていないことになります。

32週前後では、脳幹も構造的安定性が十分ではなさそうです。


未熟児の場合は、脳の構造的な安定性が不十分であるという認識でアプローチを行う必要がありそうですよね。


以前の話ですが、NICUにおいて、未熟児の体位交換をする際に怖がる様な反応を示すため、怖がる時間を短くする、つまり素速く姿勢を変換させていたそうです。

しかし、その怖がる反応が、重力に対して安定性をつくれていないためではないかと考えられたり、そもそも、脳の構造的安定性が乏しいために余りに急な操作は脳の構造にダメージを与えるのでは無いかなどと言った事から、愛護的にゆっくりとした操作が主流になってきたそうです。

また、髄鞘化が不十分であるところに入る感覚入力は、脳としてはまだ充分外に出て感覚を取り込んだりする準備が不十分で有るために、大人にとっては何気ない光や音、前庭刺激、触覚刺激など諸々の刺激が有害刺激として捉えられている可能性も在って、NICUの中は光も音もできるだけ強い物を避ける様な流れになってきているそうです。

さらに介入においては、赤ちゃんが快適であるという反応を多く出すように工夫されているように思います。


さて、成人脳損傷ではどうなんでしょう?

成人は、髄鞘化はすべての繊維で起きていることになります。

しかし、梗塞なり出血なりのダメージが置き、急性期には浮腫などが伴っていたりします。

ミエリン鞘はオリゴデンドロサイトというグリア細胞でつくられているわけです。

髄鞘化がおきない無髄神経の伝達スピードは秒速1〜2メートルと云われているようです。

人の歩行速度がおおむね時速4〜5キロですから、これを秒速にすると1.1メートルから1.3メートルになります。

ほぼゆっくり歩いているスピードですね。これでは環境の変化に対して素速い情報の統合や応答(出力)は困難です。

脳損傷後の可塑性については、神経回路網の再編と言われていることを考えると、軸索の伸張、シナプス接続、髄鞘形成などが必用だと云うことになります。

熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科の田中貴士、新潟大学脳研究所システム脳病理学分野の上野将紀らは、「リハビリテーションと分子標的の併用による脳損傷後の機能回復」という論文で、機能的な神経回路網の再編に必要な要素として、

①ニューロンの生存

②長距離に及ぶ軸索の再伸張

③標的とのシナプス接続

④髄鞘形成

⑤新しく形成された神経回路の経験依存的な精緻化

を挙げています。


ニューロンの生存に関しては、以前ブログ記事の膜電位とグリンファティックシステムから考えるリハビリテーション」にも書きましたが、損傷した神経細胞から放出されるカリウムイオンがそのままになると、生き残った神経細胞が興奮しっぱなしになってエネルギーが枯渇し、神経細胞死を起こしてしまいます。神経細胞外に放出されたイオンを正常化するためには神経細胞外成分の調整を行っているグリンファティックシステムがとっても大切な働きをしているのでは無いかと考えられると思います。

生き延びた神経細胞を壊さないための活動の内容やタイミングはやはり考慮すべきでは無いかなぁと思うのです。そういった視点から云えば、余りに早期に離床することだけを正しいと考えるのでは無くて、個別に脳の状況を評価、推測しながら活動の内容やタイミングを探る必要性がありそうですよね。

皮質脊髄路における軸索の再伸張やシナプス形成に関しては、脳由来神経栄養因子やその受容体の働きが必用だそうです。これも神経細胞外成分になるのかと思います。

また、中枢神経系の髄鞘に関しては、傷害で生じたミエリン残渣をミクログリアやマクロファージが貧食するわけですが、これらのミエリン除去能力の不足は軸索再生の障壁となると記載されています。

ミクログリアは、休止中は神経細胞やアストロサイトと相互作用しながら脳由来神経栄養因子等を放出しているようですが、刺激を受けて活性化するとアメーバ状に形態変化をして損傷を受けた神経細胞やミエリン鞘などを貧食するようです。これらも結局は神経細胞外のお話ですよね。


これらのことにリハビリテーションは有用な働きを持つべきなのですが、どのようにすれば有用であるのかと言ったことも考えて行く必要がありますよね。

ラットの実験が紹介されていて、強制的な走行運動より、自発的な走行運動が高い機能回復を示したようです。

つまり、歩くと云うことを頑張って行うより、自発的に歩きたくなって歩くと云う様なシチュエーションが在って、それで走行が成立するような場面が機能回復につながるというようなことでは無いかと思います。

最終的には、赤ちゃんと同じく、運動目標が快適か否かという事では無いかと思うのです。

快適なものには自発的といわれる情報処理がおきるでしょうし、不快なものであれば、基本的には避けるような情報処理と「やらなければ良くならない」といった誰かに植え付けられたかも知れない記憶から、避ける情報処理を抑制して走行のプログラムを成立させるための情報処理をすることになるので、それは脳の可塑性といわれる状況を十分発揮出来るものでは無いということなのでは無いかと、そう考えたりするのです。


そうやって考えて行くと、大人のCVAだと、リハビリテーションの介入がちょっと赤ちゃんより厳しい感じがしますよね。環境も課題も。無理に頑張らせたり、本人が頑張りすぎていたり。

いろんな事情があるのでしょうけれど。


赤ちゃんであっても、成人のCVAであっても。

より活動的な表現系を出力出来る(more activeな)情報処理とは、身体内環境や身体外環境が、より快適なものに変化するので、脳が自ずとそういった動きを出すような情報処理をしてしまう。そう言った事が起きるようなそんなリハビリを提供していきたいなぁと考えているのです。

先は長いなぁ・・・

(*^_^*)




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