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脳の感覚代行

今、いんすぴゼミでディビッド・イーグルマンの「脳の地図を書き換える」を読んでいるのです。

いんすぴゼミは、お茶の水女子大で脳の研究をされておられる毛内拡先生の企画です。

最近ちょっと興味深かった話題を。


感覚を喪失している場合、どのように感覚を再学習するのか?

そういった研究は結構古くから行われてきています。

1960年代、バキリタという医師が行った実験が紹介されています。

目の見えない被験者に対しての実験です。

被験者を椅子に座らせるのですが、その椅子には、三脚に取り付けられたカメラからの映像データを特定のパターンに変換し、背中にとりつけた20×20の出したり引っ込めたりできる400の突起で背中の皮膚を刺激するというものでした。

何かの物体がカメラの前を通り過ぎるたびに、被験者の背中には突起による表在刺激が入力され、被験者はカメラの前の通り過ぎた物体を当てるというものでした。

結果的に訓練開始から数日で、背中の刺激から物体が何であるのかを正確に推測できるようになったそうです。

バキリタはこれらの実験から、「脳は皮膚からの情報であっても、あたかも目から来たようにして利用できる。」と結論づけています。


興味深いですよね。

現代の私たちであれば、このときに興奮している皮質の場所であるとか、回路が気になるところです。どのように変化したのかを知りたいですよね・・・。


1991年、マイヤーというひとが、vOICe(ヴォイス)というめがね型のデバイスを作ったようです。

これは、視覚障害者用のデバイスで、めがねにカメラを搭載し、カメラで捉えた画像を、物体の高さを周波数・水平方向の位置はステレオの入力データを左右に動かす時間・物体の明るさを音量で示すようなシステムになっています。

使用者の一人は、vOICeを使ってみた経験を次のように語ったそうです。「2~3週間もすると、音の風景の感覚がつかめてきます。3ヶ月ほどすれば自分を取り巻く環境の部分部分がパッと視界に飛び込んでくるようになって、そこに目を向けさえすれば対象の正体を識別できます。それは視覚です。視覚がどういう物か、私は知っています。覚えていますから。」


感想から推測すれば中途視覚障害者なのでしょうね。


この実験においては、画像も確認されたようです。

この段階まで達すると、音の情報で外側後頭葉皮質~通常は視覚刺激や触覚刺激を統合し、形に関する情報に反応するところが反応したと書いてあります。



高次視覚野~V2-V4-TEO-ITなどの腹側経路が反応しているのであろうと言うことになりますが、TEOからは明らかに側頭葉になりますので、V2-V4が反応していると言うことが書かれているのであろうと推測するのですが、であれば、音がV2-V4に入力されたと言うことになりますね。

ということは、ひとつの興味深い現象が起きていることになります。

ひとつは、通常聴覚野で処理される音情報が、V2-V4に達していたと言うことです。これによって、聴覚野が視覚野の使われていない領域に広がったとみることもできますし、聴覚情報が視覚野のV2-V4本来の働きである身体外空間に存在している物品の形など知覚に利用されたとも言うことができそうに思います。

いずれにしても、聴覚情報を伝達するシナプスはなにかしらの形で外側後頭葉皮質に伝達されるように変化したのは間違いないでしょう。

vOICeの経験の感想では、環境が視覚に飛び込んでくると書いてあるので、位置なども判別したことになります。ですから、細かに見ていったら背側経路の一部も聴覚によって応答していたはずだと思うのですが、そこまでは記載してありませんでした。

ともかく、聴覚刺激が視覚野という領域で情報処理され、物品の形態や位置などの情報として利用されるようになったと言うことは間違いなさそうですよね。

この興味深い現象は、視覚野には視覚に限らず情報がそこに入力されさえすれば、その情報を元に、環境に適応するために必要な情報を抽出することができると言うことを示しています。


さて、リハビリテーション。

特に脳損傷のリハビリテーションにおいて、このことはどのようなことが考えられるのでしょう。

脳損傷によって、ほとんどのケースで問題になるのは姿勢に関する基本的な情報処理システムとして身体図式を構築する側頭頭頂連合野。ここにどうやって情報を入れていくのかという課題が大きいのだろうと思うのです。

ここにどのようにして豊富な感覚情報を入れていくことができるのかが、姿勢ー運動出力のためには大切だと思うんですよね。

情報を入れて、情報処理させる経験を脳にさせることができなければ、脳は学習できませんから。ただ、それはどのような方法でも良いのかもしれません。どうしても足部や膝の感覚情報が入らなければ、股関節で膝や足部の感覚を知覚させていくと、それを数ヶ月にわたって行えばある程度、股関節から入る情報を、脳は膝や足部の情報として処理できる可能性があるのかもしれません。それは検査では抽出しにくい情報でしょうね。股関節に荷重がかかったような情報入力が起きた場合には膝や足部の位置がわかるけど、単独で検査したら反応が悪いとか・・・あれ?臨床的にはよく見かける状態かも。


CI療法などは、使用を強制することで、運動の結果起きてくる感覚入力を豊富にしていると見なすこともできるかもしれません。

ボバースコンセプトで良く用いられるハンドリングなどの手技も、感覚情報を入力するための手段とみることができると思います。

いずれにしても、脳の可塑性を目標にするのであれば、動きのもつ多彩な感覚をいかに入力していくのかと言ったことが課題であって、それに向けた工夫が大切であると言うことは言えそうですよね。


(*´▽`*)


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