脳と人工知能をつないだら人間の能力はどこまで拡張できるのか

と言う本を読み終えました。

AIの進化は私の想像を遙かに超えているようです。

ディープラーニングはAIに汎用性を持たせ得るのかも知れません。

そして、AIと脳を接続することで人は、現代では想像のつかない様々な体験をすることになるのかも知れないですね。

AIと脳との接続も電極を直接脳につけるような侵襲型であればかなりの精度で興奮させたい神経細胞をターゲットにすることも可能となることでしょう。

しかし、侵襲を加えると脳の環境はどのように変化するのかを考えると少しの不安を感じます。

脳の栄養は血管で運ばれる栄養や酸素が血管外に放出され、それを取り込むように出来ています。それらの働きを支えているのは神経細胞外環境であるグリアや間質液などで、それらの構造を支えているのは原繊維ネットワークです。それに対する侵襲が長期的にどのような影響を引き起こすのかはまだはっきりとはしていません。

例えば、脳の外科的な手術を繰り返すと硬膜ーくも膜ー軟膜など、本来であれば滑りを持つ部分が癒着したりします。脳の外科手術が行われるのは、多くはそれが生存のために必用な場合に行われるので癒着自体がおおきな問題として取り上げられることは少ないのかも知れませんが、健常な人にそれらの癒着を起こした場合にどのような影響が出るのかと言うことを考えると、循環を含め何かしらの影響は出るように思います。


非侵襲型の装置であっても、音波や磁場、微弱であるとしても頭部からの電気刺激などが神経細胞とともに神経細胞外環境に何かしらの影響を引き起こすことは推測できます。

また、大切なことなのですけれど、現在能の働きとか情報伝達はシナプスによるものだけではないのではないかという研究も盛んに行われています。神経細胞を刺激するだけでヒトの脳の活動が再現されるとは考えにくいかも知れません。

ただ、既に動物実験では様々な試みが行われているので、人とAIを結びつける未来もそう遠くは無いのかも知れません。


この本の中に、意識について興味深い記載がありました。

トノーニの提唱する情報統合理論というのがあるのですが、これはトノーニの「対象物が豊富な情報を有しており、かつそれらが統合されているとき、その対象物は意識を持つ。」と定義したそうです。この定義は実験的に証明されたものではなくて、公理と呼ばれる、その他の定理を導くための前提として定義される「仮定」です。

ですので、トノーニ先生のφ理論は仮定に基づく定理と言うことです。

興味深いことに、現在の様々な科学はこうして発達してきているので特別なことではないそうです。

この本に書いてあったのですが、例えばユークリッドは「平行では無い二つの直線はただ一点で交わる」という公理を作りました。これは、ユークリッドが「私の作る学問ではそういうことにする。」と決めたものです。ですから、私たちが中学や高校で学んだ数学は、ユークリッドの公理(仮定)に基づいた学問であるというわけです。興味深いことに、この公理に基づかない非ユークリッド幾何学という学問もあるそうです。中学高校と学んできたものではないので、想像がつかないですね。

やはり意識と言うものは一筋縄ではいかないようですね。いや、科学そのものがすべて一筋縄ではいかないものなのかも知れません。


もう一つ興味深い話があります。AIの発達によって、AIが新たな科学的事実を発見する可能性があるのですが、それが人によって理解は出来ないものである場合も想定できるようです。

それは科学が人類の扱える範囲でしか進歩しないことに起因するようです。

似たような話題が少し前に読んだガザニガの「人間とはなにか」という本の中で取り扱われていました。人は直観的に二元論で理解しようとするという話です。

この本では、「オッカムのカミソリ」と言う言葉で説明されています。オッカムのカミソリとは、「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」とする指針のことです。これは科学における「なるべく少ない原理だけで自然界を説明しよう」と言う価値観につながっているとのこと。

私の理解では、すべての事象を取り入れて説明をするという価値観が現在の科学には欠けているもしくは希薄であると言うことでは無いかと思います。

それがどのような事になるのか想像しにくいですが、少なくとも科学は森羅万象を説明しきれないと言うことになるのではないかと思うのです。

そのような不安定な科学といわれる価値観のなかでAIが取り扱われるのは危険な感じもします。

余談ですが、わたしは医療のなかでもちいられる科学も同じように不安定なものだという認識をしています。ですので、今の価値観のまま医療が進歩していくとは考えにくいと思っています。

それはともかく、AIと人の脳をつなげると言うことは、障碍を持たれた方には多くの福音をもたらすことは間違い無いだろうと思います。

人工内耳を取り上げるまでも無いだろうと思いますが、現在は様々なコンピューターデバイスが人とつながり始めています。

AIと脳をつなげると言うことがさらに進歩すれば、何かしらの疾患で動きにくくなった人たちが再び動くことを取り戻す手助けになっていくことでしょう。


その為には、人の認知とか行為とか言われるものや、姿勢と運動の関連性について、「オッカムのカミソリ」で切り刻むことなく、すべてを理解しようとする事が大切なのかも知れないと思ったりするのです。








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