最近、ちょっと自主練習としてご紹介させていただいている動きがあるのです。
麻痺側の足の感覚はある程度在るけれど、しっかり荷重をかけることが出来るほど麻痺側の下肢の身体図式が形成されていないようなケースです。
その為、上肢は動きの中で屈曲しやすく、長期的に曲がってしまっているため、手指の伸展や肘の伸展もなかなか出来ずに、テーブルに置こうとしても手指の屈曲が起きて身体の姿勢を安定させるための感覚情報(CHOR)として利用が非常にしにくいような場面で、どうするかと言った事なのです。
そういった方で、特徴的だなぁと思うのは、端座位から立ち上がる際に、最初は足底接地が起きていて、なんとか左右足部にほぼ均等に体重が乗っているように見えても、立ち上がりながら、徐々に非麻痺側に重心が移動し、麻痺側足部の内反底屈が強くなって麻痺側骨盤がやや後方に引かれつつ麻痺側の広背筋が緊張を強め麻痺側肩甲帯のリトラクションと上肢手指の屈曲が強まってしまいやすいという傾向なのです。
色々な情報処理上の難しさが関わっているとは思いますが、先に書いたように麻痺側下肢の身体図式情報が充分生成されていないのでは無いかと思うのですね。
適正な感覚入力を行うためには、コアスタビリティ、特にローカルシステムの働きが充分ではないと、麻痺側下肢に荷重のかかった感覚が、身体を持ち上げる感覚につながりませんよね。麻痺側足底に荷重がかかるー側関節・膝関節・股関節で体重を支えるーそれが体幹を支えて、さらに上部体幹を支えるといった感覚の流れが知覚できないですよね。
と云うわけで、立ち上がりの際に非対称的な姿勢となってしまってコアスタビリティに不利な形態にならないようにしたいと。
と云うことで・・・
頭を台に置いて、感覚情報量を増やして、姿勢の安定に利用します。
手をだらんと下ろすと、広背筋の長さが必要になります。広背筋と肩甲帯に付着している菱形筋が肩甲骨が外転することで、棘上筋/棘下筋/小円筋などを介して上腕三頭筋を近位に引き上げることになります。結果、上腕三頭筋の筋紡錘は興奮しやすくなりますので、肘の伸展が起こしやすくなる、或いは上腕二頭筋に相反抑制が入りやすくなるはずです。
臨床的にも前にかがんで手を足らす姿勢は上肢を伸展させやすくなりますよね。
この状態で足部は背屈位で体重を支えていることになります。
側関節の可動性が少ない場合は、座面を高くしたら対応できますね。
ここでは、足関節の背屈角度を大きくするのが目的ではなくて、あくまで体重がかかった際の足底の圧感覚と、側関節/膝関節/股関節の状態の変化が結びつくように知覚されて、麻痺側体幹を抗重力的に支えていく感覚を成立させることなので、側関節の背屈角度に拘る必要はなくて、動く範囲の高さを設定していけば良いと思うのです。
この状態で、少し骨盤での重心移動を試みてみます。後傾/前傾/側方傾斜ですね。これらは、腰椎部の分節的な動きから成立するような動きですので、より深層にアルキンの活動が必要になるように誘導する、或いは動いていただきます。
注意するのは、麻痺側上肢の屈曲がこの段階で出てしまわないように、両上肢ともにリラックスしてだらんとたらしておけるような姿勢制御であるようにしておくことです。
さて、コアスタビリティが活性化されて安定してスムーズにそういった動作が出来るようになってから、次の動作に移ります。
お尻をあげて見ちゃうんですね。
ゆっくりスムーズに。
この状態になると、重心が上がる事に対して、ある程度容易に麻痺側下肢に体重を残しておくことが出来ます。
もちろん、出来ない方には徒手的な操作を加えていくことになるのですけれど。
この状態で安定させても良いですし、出来れば、両膝を小さく屈伸してもらって、先に書いたように、足底の圧感覚の変化と足関節/膝関節/股関節の感覚の繋がりを作っていくようなイメージで動いていただくようにします。
その上で、可能であれば、左右に重心を移動させてみて、感覚の変化や、麻痺側での荷重感覚に気が付いていただける様にしたいところです。さらに片足をあげると云ったチャレンジも良いかと思います。
どういう感覚が安定性に繋がるのかと行ったことを経験していただくような感じですね。
もちろん、手はリラックスしているかどうかは常にチェックしていきます。
肩甲帯のリトラクションや上肢の屈曲が出てくると、バランス自体は取りにくくなってしまいます。或いはバランスが取りにくいと行ったサインが上肢に現れますと云っても良いかもしれません。その際には身体を安定させようとして肩甲帯から末梢に緊張を強めておられるわけですから、本来、両下肢から作られた安定性が上肢や頭部の自由度を保証すると云った機能的な姿勢制御の組み合わせになっていませんので、リラックスした歩行とか上肢の使用と云った事がより難しくなる可能性が在ります。
上肢の状態は大切なのです。
こういった動きを行った後に立ち上がりや立位での課題、或いはステップや歩行へと展開すると、結構麻痺側の感覚がわかりやすかったり、安定した感じがちょっとつかめてこられる場合も多い感じがするのですね。
これは運動出力の練習と云うより、感覚の流を知覚することで身体図式を再構成することを主な目的としています。
この部分ですね。
単純に云えば、身体図式を適正なものに変化させ、その身体図式情報を元に運動出力プログラムを変えようという試みではあるのです。
ただ、身体図式(認知)と運動機能は情報処理的に結びついています。運動出力情報のエファレンスコピーが頭頂葉に送られなければ、脳は感覚情報の変化を自らの動きを自らの感覚として認識しにくくなってしまいます。
ですので、こういった形を提案してみたのですね。
(*^_^*)
ただ、これ、本当に私のオリジナルなのかどうかはよくわからないのです。色々な研修会に参加していて、どこかで見たことのある場面なのかも。
(^_^;)
だけど、自主練習としては、やりやすいのでは無いかなぁと思うのです。
あ、すべての人に適応するわけではありませんよ。もっと高いレベルの人もおられれば、こういった形での練習にリスクがある場合も有るでしょう。
それぞれの課題によって、練習方法は変化しますので、誰でもこれをすれば良いという事ではないです。
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