日常生活動作の評価と治療



2022/01/29 南草津病院リハビリテーション研修会「日常生活動作の評価と治療 “靴下の着脱動作へのアプローチ”」に参加させていただきました。

面白かったです。

歩行や上肢機能にアプローチして良くなったとしても、日常生活の改善がなければ認められないというお話から歩行や上肢機能と日常生活を結びつける為のキーワードは運動学習であろうと言うことです。

歩行や上肢の使用に関して、それらの機能的な活動のコンポーネントは身体図式に基づく体幹を含む姿勢制御システムが根底にあって、その上で両手協調と体肢間協調が重要で、その協調が日常生活に汎化されていくというイメージだと思います。もちろん、それぞれの動作の学習は必用だとおもうのですが、動作の繰り返し練習と言うより身体の上手な使い方を学習することで、動作の獲得を目指すべきなのでしょう。

日常生活とは、ある欲求の結果を素速く出すことが重要になります。例えば、寒ければ非麻痺側手を使って素速く服を身にまとって暖かくなるとか、喉が渇いたら使いにくい麻痺側手より非麻痺側手を使って素速くコップから水を飲むとか。麻痺側手を使うより非麻痺側手を使った方が素速く身体的欲求に答えることが出来るわけです。ですので、麻痺側手については使わない方が素速く目標を達成できると言うことを学習してしまうわけです。これは不使用の学習ですね。

もちろん不使用の学習はこういった要因によるものだけではなく、身体図式の問題も存在しています。情報処理として身体や四肢の知覚が起きていなければ知覚していないものを使用するための運動プログラムは生成されたり選択されたりすることはありません。また、手の図式の欠如は訳のわからない位置に手がぶらぶらするとバランスなどに不利なので連合反応が合って、手が身体にくっついているような状態の方が有利になってしまうこともあるでしょう。その他にも様々な要因はあるとは思います。FIM利得とかは一刻も早い生活動作の獲得を目指しますし、不使用の学習の要因になっているのかも知れません。

回復期病院から南草津病院に来られた片麻痺の患者さんの動画で治療場面の提示もあったのですが、回復期病院からの添書に軽度ぶん回し歩行と書いてあったそうです。動画を見ると、私の感覚では決して軽度ではないぶん回し歩行で歩いておられて評価のあり方というものに少しびっくりしました。もちろん、添書を書かれた時の状況で最大能力として軽度ぶん回し歩行ではあったかも知れません。だけど、もしあの動画が軽度のぶん回しと評価されるのであれば、本格的なぶん回し歩行はほとんど回し蹴りかローキック状態で足を振り回さないといけない状態のような気がしたので。ちょっとびっくり。

治療経過で膝の分離も起きて遊脚初期に膝の屈曲を使っていくことも出来て軽度ぶん回し歩行になっておられました。

後半時間が無くてかなり端折って説明されておられました。日常的な介入場面で問題になりやすい身体状況に連合反応があるのですが、その説明において脊髄レベルでのオーバーフローが指摘されていました。

私はそれとともに、基底核の問題もあると思うのです。

痙性の出現を考えた際に、一次運動野の損傷では基本的には弛緩性麻痺を呈します。痙性は運動前皮質あたりの障害で出て来るとありました。運動前皮質からの投射は脳幹/基底核/一次運動野、そしてSLFを介して頭頂側頭連合野に送られています。脳幹への投射障害は姿勢セットの一部であるpAPAの機能不全、多くは同側ローカルシステム低緊張を作ります。

基底核の出力についてですが、基底核のハイパー直接路は必用以外の情報を抑制する作用があると言われています。運動制御システムにおいて運動前皮質が選択した運動情報は基底核のハイパー直接路において選択された以外の運動出力を抑制していると考えるのが自然だろうと思っています。ですので、運動前皮質から基底核への出力がなくなれば、様々な運動可能性の出力に対する抑制を失うことになります。高緊張〜連合反応ですね。

ただ、結論は同じで運動前皮質に対して必用な身体図式の情報/身体環境情報/身体外環境情報を前頭連合野が受け取らなければ多様な運動プログラムが存在できなくなります。ですので、リハビリテーションにおいて感覚情報が非常に重要であるという結論になります。もちろん、SLFは相互に連絡しているので、その運動情報やプログラム情報の頭頂側頭連合野への投射が情報の統合に重要であるという関係性も含めてではありますが。

感覚の入力のあり方についての説明も解りやすかったです。脊髄の謎とともにどのような感覚入力の段階付けを考えて行くべきかというお話は非常に興味深かったです。

土井先生を初め、研修会を企画/運営された南草津病院スタッフの皆様、ありがとうございました。


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