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執筆者の写真Nagashima Kazuhiro

感覚の鈍麻と過敏

更新日:2021年8月23日



一般的な印象では、感覚を大雑把に脱失〜鈍麻〜正常~過敏と分類するのかもしれないです。

で、例えば鈍麻から回復していくとだんだん感覚がわかってきて正常に近づくといったイメージをもたれるヒトも多いかもしれません。

末梢神経損傷の回復なんかはそんな段階で回復することも多いでしょうし、中枢神経系でも自然回復の経過の中ではそういった順序で回復される方も多いです。

ただ、脱失/鈍麻から急に過敏になられるヒトもおられるのです。


いろいろなことが影響していると考えられますが、私たちは長期間感覚情報が脳に伝わっていない状態の方に地道に感覚情報を届けるような刺激を時間的にも空間的にも工夫をしながら、神経の興奮が起こり発火して、次の神経に感覚情報を伝えていくような感じのことをします。(summation)

脳損傷のことに的を絞って考えていきます。

セラピストが感覚を入力しようと考えるまで、長い期間が合ったとします。それまで感覚野の神経細胞が発火を起こしていなかったとしたら多分、発火した際には今までない感覚として認識~意識化される場合もあるかもしれません。

次に、感覚を失っていた部分の軟部組織のことを考えます。

例えば、低緊張であったのであれば筋は緩んでいます。末梢の感覚受容器そのものや感覚情報を伝えていく末梢の神経、脊髄は正常であるので、情報はある程度上行していくものと思われます。

しかし、緩みきった筋は筋内膜にある筋紡錘の興奮性をあげることが困難であるかもしれません。腱紡錘も緩んでいるでしょうから、感覚を上行させていません。つまり、手足の存在する位置を脳は知覚していないのです。その周辺の原繊維内にある受容器も適切なテンションの中で働くことが出来ず正確な情報を上行させているわけではないでしょう。

筋活動が乏しいため、循環も適正に行われていない可能性も高くて、周囲組織のPHや温度は適正な状況から逸脱していることも多いでしょう。

そんな中で感覚器自体は閾値を下げてすぐに興奮するような状況かもしれません。

高緊張の場合を考えると、筋は収縮した状態で動きを失っているのでやはり循環は悪い場合が多いです。そして筋を包む原繊維ネットワーク自体も動きを失っているので僅かな変位で強い刺激となる可能性があります。圧などを加えると筋周囲は硬くて、皮膚から筋までの軟部組織はセラピストの意図より強い圧を生じさせている事も少なくないでしょう。


それらの感覚を脳は知覚/意識化できていない状況が感覚脱失~鈍麻ですので、その感覚が脳に届けばやはり痛みとして認識される事が有ることが推測が出来ます。


ですので、比較的少なくない症例で感覚脱失/鈍麻→過敏という経過が生まれます。その過敏性は緩やかに軟部組織の環境を整え、動きが入っていくことで順応していき、正常に近い感覚様式となっていくと考えています。


中枢神経疾患の臨床では、そんなこんなで感覚の鈍磨と過敏という普通に考えたら真逆のような現象が紙一重で存在しているのです。


今、うちの事業所を利用されておられる頭部外傷の方がおられますが、この方は本当にこれが著明に感じられる障害像をお持ちです。

はじめ触れていると触れている感じがわからないと言われているのですが、ずっと感覚を入力し続けると突然痛みを感じてしまいます。

それではじめの頃はなんて痛いことをするのだと怒ったりされて騒ぎになることもありました。

今では痛みも減少してきていますし、そんな部分がある事もすこし理解されておられますのであまり騒ぎになるようなことはありませんが、やはり部分的には突如痛みを訴えられます。

丁寧に軟部組織を整え、動きを引き出していく作業の中で過敏性が減少するようにアプローチを続けています。






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