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急性期脳卒中の治療と睡眠

更新日:4月25日

急性期から回復期に高次機能障害と言われる症状をお持ちの患者さんが居られますね。

高次脳機能障害と言っても、昔と現在では少しずつ概念が変わってきているようです。

私が学んだ時代は失行とか失認というのを高次脳機能障害として取り扱っていました。

しかし、脳の情報処理が解ってくるにつれて失行とか失認などは本来は分けて考えるべきではないという流れが在り、当時盛んに高次脳機能障害について研究されていた山鳥重先生なども、失認と失行を分けるべきではなく、失認失行と呼ぶべきではないかなどと本にかれておられました。

そして、現在は頭部外傷後の高次脳機能障害として、汎性注意障害や易怒性などの易刺激性、記憶障害なども高次脳機能障害に分類される様になっているようです。

また、脳科学者によっては、身体図式の障害を高次脳機能とみる先生も居られる様に思います。


今から書いていくのは、主に、汎性注意障害の事についてです。


注意というのは、持続性、配分、選択性、転換の4つの機能があると言われています。


持続性というのは、注意を維持し続ける能力のことですね。必用な刺激に対して注意を向け続けることが必要な場面で、注意がそれたりしないための能力です。ライオンから逃げる必要がある時にライオンから注意がそれてしまって他に注意が向いてライオンの位置が解らなくなったりしたらヤバいですよね。(*^_^*)


配分(多方向性)というのは、ひとつのことに注意していたとしても、他に重要な環境刺激があった際に気がつける様に、様々な方向に一定量の注意を払っておく必要がありますよね。なにかに集中していても、他の刺激を受け取るためにある程度周りに注意を分散させておくための能力です。ほら、本を読んでいても他の人の会話を聞いている様な人っておられますよね。或いは、車の運転中には色々な方向に注意を払っておく必要がありますよね。車の左側に人が歩いているのに注意を集中し(気を取られ)て信号機を見落としてはヤバいわけです。ある程度、多方向に注意を配分しておく必要がありますよね。(*^_^*)


選択性とは、その時の環境下で、多方向に配分されている注意のなか、最も注意を集中すべきものを選択して適切に注意を向けておくための能力です。環境には様々な刺激が存在しているのです。そんななかでも、最も現在注意を向けるべきものを選択しているわけですね。

たとえば、今私は文章を書いているわけですが、テレビの画面や音、食洗機や洗濯機の音、そういったものは多方向性によって近くはしているのですが、最も今注意を向けておくべき事としてこうしてパソコンに向かって文章を書き続けている事を選択しているわけです。


転換とは、環境の刺激はたくさんあって、多方向性によって様々な情報は脳にとって優劣をつけられて,いずれかの情報刺激を選択して注意を持続しているわけですが、情報の重要度は変化します。例えば今私は文章を書いていて、それに集中しているのですが、洗濯機が終了を知らせるブザーが鳴ったら洗濯物を干す様な行動に転換するわけで、注意は洗濯機の方に転換するのかも知れません。或いは、テレビで緊急アラートが鳴れば、文章を書き続けることより報道の方に注意が転換するのでしょう。玄関からチャイムが鳴ったら、慌てて玄関に方に向かう様に注意は転換します。様々な場面で情環境報の重要度は変化し、その変化に合わせて注意を変え続ける能力ですね。(*^_^*)



これらの注意の機能は、能動的注意と受動的注意に分けられます。

意識という言葉は、余り好きではないのではありますが、解りやすいので意識という言葉を使わせていただきますね。


能動的注意とは、なにかしら集中すべき事柄があって、意識によって注意のシステムが働くような場合ですね。持続性などが解りやすいのかもしれません。前頭葉から頭頂葉に向けて起こる情報処理で説明できそうです。

受動的注意とは、外的環境から多様に入ってくる環境刺激から無意識下で注意を配分したり選択したり転換したりするような場合です。頭頂葉から前頭葉に向かう情報処理で説明できるように思います。


これらは、脳の機能の中でどの様になっているのでしょうか?

ここから先は私見です。

注意の重要性などと云うものは、生来的に持っているものも在りますが、後天的に得てきたものも在ります。

いずれにしても、環境情報が頭頂連合野から前頭連合野に運ばれ、前頭連合野において身体情報と外的環境情報を受け取り、その情報の中で最も重要な情報の重要度を腹側線条体が決定し、取るべき姿勢や行動を基底核ループのなかで決定していく過程が注意と言っても良いのかも知れないと思っていたりします。


高草木先生の図ですね。

下に書いてある様に、随意運動の制御に関わる回路の紹介です。

連合系ループのところの記載に、「前頭連合野/頭頂連合野→CNの外側と腹内側を除く大部分および被殻の前部(連合線条体)→SNrおよびGPe/GPiの背内側部(連合系淡蒼球)→MDpcの中央部と一部VAmc→連合野」と書いてあります。

どうやら、頭頂連合野とのループも存在しているようですね。

注意というと、脳の内部での見えない処理を思い浮かべますが、結局、注意というのも姿勢や運動に変換されていますよね。人を観察していれば、何にどの程度注意を払っているかは概ね解ります。教壇に立ったことがある人はきっと同意していただけるのでは無いかと思いますが、注意機能の表出は姿勢と運動に表れると言っても決して間違いでは無いと思いますので、こういった基底核ループは注意の制御に関わっていると思っても間違いないだろうと思うのですね。


その基底核を含めた脳の広範な刺激情報の処理のためには、神経細胞は興奮したり鎮静したりする必要があります。

ひとつの情報パターンに神経細胞が興奮し続けていては、新しい情報のパターンに切り替えることが出来ませんよね。


この図は、セルアセンブリの図です。

情報は特定の神経細胞の組み合わせで表現されるという考え方ですね。

左がAと云う情報、右がBと云う情報を表しているとして、重なった細胞があります。

Aと云う情報の後、Bと云う情報を入力した時、Aで起きていた神経細胞の興奮が収まっていなかったら、AでもBでもない情報ができあがってしまうことになりますよね。

セルアセンブリについては、以前に記事にしたので、興味があれば読んでみてください。


さて。すると興奮した神経細胞を鎮静させるためのメカニズム、広範囲投射系によるAch投射が重要なのだろうと思うのです。


これも、高草木先生の資料からです。右側が少しキレていて申し訳ない。(^_^;)

広範囲投射系というのは、シナプスの様に1:1で伝達をするのではなくて、神経細胞外に伝達物質が広範に広がって、沢山の神経細胞を調整するためのメカニズムだと思ってください。

Achがそれを担っているというのは、認知症などでAch分解を阻害するお薬があるのを知って、そのメカニズムを調べたりしていたので、思いついたことではあります。

このプレスリリースにも、「覚醒状態では、脳の神経伝達物質であるアセチルコリンの投射系が活性化し、大脳皮質の抑制性神経細胞(介在細胞)の反応が増大することで、興奮性神経細胞(錐体細胞) の反応がより速く減衰して、次にくる刺激に反応しやすくなることが分かりました。」と記載してあるので、Achが関与していると考えるのは,まぁ、間違いでは無さそうに思います。



となってくると、広範囲投射系〜神経細胞外成分が行き渡りしやすい、或いはそれらの物質の必要量を維持するためのシステム、神経細胞外成分を適正な状況にするための働きを持つとされているグリンファティックシステムが重要になってくると考えるのです。

グリンファティックシステムについても、以前ブログに書きました。

興味があれば読んでみてくださいね。


グリンファティックシステムは睡眠中によく働いて、脳の神経細胞外環境を整える作用があるわけです。脳卒中急性期においては、損傷を受けた神経細胞内部の成分が神経細胞外に多くなったり、脳も緊急事態ですから交感神経系が賦活しているのでは無いかと思うのですね。グリンファティックシステムが働きにくい状態ですよね。

急性期から回復期にかけての医学的な治療、それはリハビリテーションも含めて、睡眠を管理するのはとっても重要だと思うのです。

神経細胞外環境は脳の可塑性にも重要ですからね。


さてついでに。

話は変わって易怒性(易刺激性)についてです。

なぜ怒りやすくなったりイライラしたりしやすいのかという事ですね。

これも調べたら、色々ネット上でメカニズムが書いてはあります。


まぁ何となくではありますが・・・私は以下の様に捉えているのです。


睡眠不足〜良質な睡眠がとれないという事は、交感神経の興奮が持続しやすい状況にあると言えますよね。(タブン)

交感神経の興奮というのは、ノルアドレナリンが関与することになります。

ノルアドレナリンはグリンファティックシステムの働きを悪くしてしまう場合がありますので、脳の神経細胞外環境は悪くなるわけです。

脳の情報処理が上手くいかないという事になれば、環境に適応するという事に対して不利な状況〜不快を示す情報処理が起こりやすいという事は推測できると思うのですね。




病院に勤めていた時、睡眠中の様子が気になって看護師に「あの患者さん、よく眠れているようですか?」とお聴きすることが結構ありました。


臨床的には睡眠不足(睡眠障害)による症状がありそうな印象がある方が多かったのですね。ボーッとしている様な汎性注意障害を思わせる状態です。

その時に出てくる返事は、「見回りの時は眠っておられましたよ」とか、そういったお答えをいただくことが多かったように思います。


睡眠の質については、見ただけではわからないので本来は見回りでの観察だけでは解らないと思うのですね。睡眠の質を計るには脳波などをとるのが確実なのかも知れませんが、観察できる項目としては、呼吸、体動、血圧、心拍数、中途覚醒などなどでも見ることができますよね。

ただ、そこまで看護師も暇では無いのだろうと思うのです。

じゃぁ聞くなよと云うことになるのかも知れませんが・・・(^_^;)


最近はApple Watchのようなデバイスもあります。

こういったデバイスは、急性期から回復期の病院では道具として準備しておいて、睡眠の状態と臨床的な治療の展開を結びつける方が良いと思うのですけれど。


これは先日の私の睡眠の様子。Apple Watchで睡眠状態を追ったものです。



良い感じの睡眠ですね。

これでも、病院で仕事をしている時は、色々なストレスで睡眠障害を発症していて、お薬のお世話になっていたのですよ。

今はお薬は保険のために持ってはいますが、たぶん、ここ1年は使っておりません。

辞めて良かった。

(*^_^*)


脳卒中、病院での治療に、Apple Watch的なデバイスを利用するのはとっても有用なのでは無いかなぁと思うのです。


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