半側無視へのアプローチ(私見です)

更新日:2021年12月23日


(図は脳科学辞典というサイトから引用させていただいています)


とある会議室で半側無視へのアプローチはどのようにしているのかということが話題になりました。そのときに少し書いた文章ですが、せっかく長文を書いたので、こちらにも置いておくことにしました。

ただ、私が行っていたアプローチは統計的に効果の確認を行われていた物ではありません。そのときの患者さん達の反応は良好で、特に眼球運動の拡大は周辺の人たちがコミュニケーションが取りやすい印象になるので、ご家族や主治医、看護師には好評でした。しかし反面、FIMやBIなどの点数に直結するような手法ではないため、PTの特定のスタッフから批判を受けていたのも事実です。

そして、このアプローチの考え方や方法は人によって推論やアプローチ手段を調整していく必要があります。こうやったらよくなるというお話ではありません。

ボバースコンセプトでは考えながらアプローチを行うことを推奨していますが、以下の主張は私自身の主張です。

そして私の主張は、特に現在の保険医療体制ではおそらく認められない方向性が内在しています。その為、私に指導していただいた先生方や、脳生理を教えていただいた先生方の迷惑になりますので、私個人の主張であるということを念頭に読んでいただければと思います。


最初に、知覚という言葉は無意識下の感覚情報処理を指していて、認知とは知覚を元にした意識下の感覚情報処理を指しているという意味で、知覚と認知という言葉を使っていきます。


半側空間失認は右脳の非意識下での身体外環境と身体内環境での空間情報処理障害を基盤にしています。ですので、右脳の上縦束などで無視が出現することになります。右脳はどちらかというと非意識的な情報処理が多く行われています。

課題や検査などでは意識化し、答えていくためには左脳の活動が必要になります。右脳の非意識下身体内外空間情報が左脳に運ばれることで言語化を含む意識化されることになります。それによってトップダウンでの注意の制御が可能になって検査に答えたり、何かしらの課題を遂行していくということになります。

このボトムアップでの方向性注意とトップダウンでの方向性注意はお互いに影響し合っている物と思いますが、アプローチにおいては混同してはいけないところです。

多分、ここが理解できていないと口頭指示で患者を混乱させてしまうようなことになってしまうことが多くなってしまうのだろうと思います。

もう一つ大切なのは、皆さん臨床でたくさん経験されておられるので釈迦に説法かも知れませんが、左右という方向を示す言葉は、実際に存在している物ではなくて概念です。複数の人がいたら、その人達の立っている位置とか向いている方向によって、それぞれに右の方向や左の方向は異なりますよね。また、「Aという建物の右隣にBという建物があるよ。」といわれても多くの人は解らないと思います。「Aという建物に向かって右側にBという建物があるよ。」というと、自分がAという建物に向かって立った場合、その右側にBという建物があるということが初めて解ることになります。

つまり、左右とは自分を中心とした方向を示しています。ですので、自分が身体外環境の中でどのような位置でどの方向に向いているのかといった情報が左右の方向を決めるためには必用であるということになります。

身体内空間の左右についてはさらに、左右を検出するための中心軸が必要になります。中心軸から右にあるのが右手で左にあるのが左手といった感じです。外的環境空間の知覚には垂直軸も重要になります。上下逆だと左右は反対になりますよね。垂直軸の傾きは左右の方向に傾きを与えてしまいます。例えば、考えにくいですが身体中心軸はあるけど垂直軸を知覚できない人がいたとして、垂直に対して体幹〜頭部が40度近く右に傾いた姿勢の方にとって、左方向は天井の方向になりますよね。

以上のことから、右脳によって生成される垂直中心軸を伴ったBody Schemaの情報が非常に重要であるということになります。

そして、その上でそれを右脳の情報が左脳に投射されると認知するように左脳が働いてくると論理性を持って左右の環境を意識化できるということになるのでしょう。これを気付き(アウエアネス)と呼んでも良いのかも知れません。