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亜急性期脳卒中患者の疲労感

この研究とそれが導き出していると思われる結果についてちょっと違和感があったので取り上げてみます。


最初に、これはプレスリリースなので、研究の細かな情報は当然解りません。ですので、本来の研究ではきっちりされている部分もあるのかと思います。

ただ、このプレスリリースから得ることが出来る情報についての違和感だという事になります。ご容赦下さい。

<m(__)m>


研究の目的は、脳卒中患者の約3〜7割の人が疲労感を有している。疲労感は行動を制限し、QOLを低下させる危険因子といえる。亜急性期脳卒中患者では入院中の身体活動量が少ないほど、将来的な歩行能力や日常生活の自立度が低かったことが報告されている。これらのことから、身体活動量を減少させる因子を特定し、その管理を行うことで身体活動を増やす必要があるとして、脳卒中患者の疲労感と身体活動量の関係を明らかにするためにこの研究を行われた様に読み取れます。


まず、約3割〜7割の人という幅の広さに驚きます。これでは、他の要因で疲労感を訴える様な場合でも想定できる数字のような気がしませんか?例えば、60歳以降の男性であるとか、50歳以上の管理職とか。60代以上のDMとか云った分類でもこういった数値になりそうな漠然とした数字です。脳卒中に特有の問題として疲労感を示している感じが薄い様に思います。

亜急性期の脳卒中患者では入院中の身体活動量が少ないほど、将来的な歩行能力や日常生活の自立度が低かったという報告があったとしていますが、それは重症度によって左右されることでもあります。

重症度が強く、覚醒状態が悪いために或いは身体を動かしにくいため身体活動が少ない人は、当然軽症で最初っから動きやすく身体活動性が高い人より獲得できる歩行能力や日常生活の自立度が低くなる傾向を示すものと考えられます。

つまり、こういった報告自体は疲労感と獲得できる歩行能力や日常生活自立度を関連付ける物ではありません。


ということは、まず基礎研究として健常人もしくは他の疾患と異なる脳卒中だけに特徴的な疲労感という物を明確に定義づけていくことが必用だと云うことになります。例えば、一般に中枢性疲労と言われるものの定義ですね。

さらに脳卒中において特徴的となる疲労感と獲得できる機能を結びつけるためには、同様の損傷部位で同程度の損傷範囲であること、合併症などが異ならないことなどの様々な条件を合わせた母集団で、発症時の機能レベルがほぼ同一であるにもかかわらず疲労感が強い物の方が獲得できる歩行や日常生活自立度が低いと云った情報が必用である様に思います。

ということで、研究手法が気になりますよね。


母集団については、病院に入院された244例の亜急性期脳卒中患者を対象として失語症や認知症を有する患者や、入院前に既に要介護状態だった患者、データ欠損例などを除外した85例を最終解析対象者とされたようです。

おや?

重症度の概念は入っていないようですね。

これでは、重症度の高いものが予後が悪いと云ったごく一般的な要素をとり省くことが出来ませんので、疲労と予後という関連性は弱くなる様に感じますよね。


疲労感の評価には、Fatigue Assessment Scale (FAS) を用い、また、身体活動量の評価には3軸加速度センサー搭載型活動量計 (Active style Pro HJA750-C、オムロン社製)を用いたと書いてあります。

FASはかなり主観的な評価ですね。例えば、脳梗塞の好発部位である基底核付近の損傷においてはドーパミン(報酬系)の働きが通常ではないと考えても差し支えないであろうと思いますので、脳卒中の急性期から亜急性期にかけて主観的評価が使える物かどうかの検討が必要そうな気がします。

また、3軸加速度センサー搭載型活動量計については、使ったことがないのでどの様な物かはわかりませんが、メーカーのホームページを確認すると、不規則な歩行などでは正確に測定できないと記載してあります。また、装着方法についてはポケットやカバンに入れるとかベルトにつけるとかの方法がある様ですが、ある程度垂直に装着しないと正確に計ることが難しい様ですね。

ちょっと脳卒中片麻痺で活動量を正確に把握するのは難しそうな気がします。

また、活動量と疲労を比較するのであれば、主観的なFASと同時に心拍数など自律神経系の情報などと合わせて考察をする方が、より客観性が高くなるのでは無いかと思ったりします。

つまり、この研究方法では、脳卒中に特徴的な疲労と言われる状態と活動量を関連付けて比較するのは難しい様に思うのです。


もちろん、先に書きました様に、これはプレスリリースですので、実際の研究のデザインはもっと考慮されたものである可能性は在ります。

結果として示されているのが、「その結果、身体活動量に影響する年齢、脳卒中重症度、バランス機能などの影響を取り除く統計解析を行っても、入院中の疲労感は座位行動※3時間と関連していました。座ったり横になったりして過ごしている時間が長く、身体活動量が少ない人の方が、疲労感が強い傾向にありました」とあります。

ですので、何らかの形で重症度に関しては考慮していた事とは思います。


とはいえ、最終的に、プレスリリースとして紹介されているこの研究によって、「一日の中でそのような時間を減らし、立ったり歩いたりする時間を増やすことは、身体機能の改善や、病気の再発予防の観点からも重要です。本研究の結果は、入院中の座っている時間・横になっている時間を減らすためには、患者の疲労感の強さを医療スタッフが把握し、軽減するよう働きかけることが必要であることを示しました。」との記載がありますが、少なくともこの情報だけでは、この結論を導き出すことは困難です。


疲労感を把握し、疲労感を軽減する様に働きかけることが必用と書いてあることには同意できるのではありますけれど。

なぜその疲労感が出現するのかという事が解らなくては、疲労感を軽減するための手法について考える事が出来ないという事もありそうですよね。

このままでは、疲労感を減らすために活動量を増やすと云った短絡的な結論につながりそうな気もしますし。

そういった意味では、こういった研究の前段階として脳卒中の疲労というものをもっと科学的に捉えていく必要がある様な気もします。


ちょっと話はそれますが、3軸加速度センサー搭載型活動量計より、アップルウオッチの方が使い勝手が良いかもしれませんね。

(*^_^*)





















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