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執筆者の写真Nagashima Kazuhiro

中枢性疲労



以前この話題はブログで書いたことがあるのですが、

最近になって思うことなどを書いていきます。


まず、疲労と一般に言われるものは、身体の疲労と脳の疲労〜中枢性疲労に大別することが出来ると思うのですね。

厳密には分けることが出来ないものではありますが、どちらが主体の疲労かと云うことです。

脳の疲労というのは、何となく直感的にわかりづらいかも知れませんね。

私のイメージですが、中枢性の疲労が引き起こす状態としては、


注意が適切に働かなくなる

眠くなってあくびが出る

イライラして怒りっぽくなる

身体が動きにくくなる、身体が重くなる

なにかをしたい気分では無くなる

多弁になる、或いは無口になる

刺激に対して過度に反応する、或いは、反応が著しく低下する


などなど。思い付くままに書いてみましたが、要は環境に対して適切な適応行動が出来にくくなってしまう印象が強いです。


その原因について、今私が考えていることは大きく2つです。

ひとつはエネルギーの需要と供給の問題です。

成人の脳の重さは弾性で1350〜1500グラム、女性は1200〜1250グラムほどで、平均的な体重の約2%程度に過ぎません。

その一方で、脳はグルコース(糖)と云う形で、1日当たり350〜450キロカロリーを消費していて、此は人体1日の基礎的な消費カロリーの20〜25%を占めています。

重さは体重の2%程度なのに、消費カロリーは20〜25%。そう考えると、脳って凄いエネルギーを消費する臓器なのですね。


グルコースを消費すると云うことは、それだけ脳の情報伝達にはエネルギーが必要で、その代謝のために酸素も必用だと云えます。

そのエネルギーや酸素を供給するのは血液なのではありますが、脳を長時間に渡って一生懸命活動させると、エネルギーや酸素の供給より脳の代謝が上回ってしまって、脳の受容に対するエネルギーの供給が間に合わなくなってしまうケースはひとつの中枢性疲労と云うことが出来るのだと思います。

一般的に大人の集中できる時間は50分程度とされています。恐らくそれを越えると、中枢性の疲労によって注意が持続できなくなって、注意が分散したりすることになるのでしょうね。


もうひとつは、脳の神経伝達などに起こる代謝によって老廃物がでるわけですが、それらを除去していかないと脳は効率のよい神経伝達が出来なくなってしまうと思うのですね。

こう言った老廃物の除去に働くのがグリア細胞〜特にアストロサイトの働きが大切になってきます。

グリンファティックシステムですね。

脳の神経細胞外環境が老廃物だらけになっていたら、情報伝達が効率よく行えなくなりますよね。多分。

こう言ったことも中枢性の疲労に関わっていると思うのです。


さて、中枢性の疲労。

急性期病院に勤めている時は、例えば、さっきまで促通されてでていた足部の背屈が急に出来なくなって躓きやすくなったり、指の動きを促通していて動きが出現してしばらくしたらまた動かなくなったりといった症状の変動性で患者さんの中枢性の疲労というものを感じていたのです。

その時は、数ヶ月から数年たったら改善してくるのだろうなと、漠然と思っていました。


自費リハビリを初めて5年。その印象はかなり変わりました。

数年たっても中枢性の疲労と言われる状況は残る様です。

急性期で感じた、運動出力にみる中枢性の疲労というのもありますが、どちらかというと、注意の配分・持続の変化や、眠くなる、イライラし始める、多弁になるなどの状況(症状?)が比較的多く観察されます。

特に、細かな動きを促通していたり、今まででていなかった動きを繰り返し出力してもらったりすると、その変化は著明に出てくる印象です。


時間にすると、50分持たない印象もあります。30分とかでいったん課題を変えたり休憩するような感じにしたりする必要があることも少なくない感じです。


この様な中枢性の疲労は改善するのか否かという点に関して云うと、恐らく改善はするのだろうと思います。ただ、苦手なところを確り学習していただくようにするような場面では再び中枢性の疲労が出てくるのだろうとは思うのですけれど。


その根拠〜と云っても弱い根拠ですけれど〜は、血管自体は必要に応じて太くなったり新生したりと云った変化を起こしてくるであろうと思われること。

このためには、血管が必要となる部分、つまり疲労を起こしやすい動きや行為は、その循環動態が悪いところの脳活動が必要になっていることを示していると思いますので、それを繰り返していくことで、必用な血液供給量を確保していくことが出来るのではないかと考えているのです。


アストロサイトに関しては、いったん壊れたアストロサイトが再生するのか、再生するとしたらどの様に再生するのかと云った疑問もありますが、脳の中に恒常性があるとすれば、ある程度再生を見込んでも良いのだろうと思うのですね。

ただ、脳の活動に対して、血流にしてもアストロサイトにしても、それがその局所に必要だという情報を送らなければならないでしょうし、その為には、やはり、そういった疲労しやすいという動きや行動にターゲットを絞って計画的にアプローチしていく必要がありそうな気はします。

つまり、改善する必要のある症状の一つで、片麻痺という麻痺や姿勢障害、認知機能障害などどと同様に、リハビリテーションにおいて考えていく必要があるのではないかと、そう思うのです。



ところで。

私はふと思うのです。

特に急性期。損傷した脳の内部の恒常性を保とうとする反応は、当然起きているはずなんですね。脳の損傷に伴う炎症を抑えようとしたり、脳の神経細胞外成分を適正にしようとするような働きのことです。

そうすると、こうした脳の恒常性を保とうとする反応が優先されるべき時期というのはやっぱりあるはずだと思うのです。

風邪をひいたら無理をせずに横になって、風邪をもたらした菌・ウイルスに対して、からだが確り戦えるような時間をつくりますよね。

怪我をして熱が出たり、外傷などで痛みが強かったりする時にも当然身体を休める時間を取るわけです。

なぜ、脳損傷のリハビリテーションはそういった時間を配慮せずに超急性期から開始して、早期離床、365日リハビリと云った流れが出来ているんでしょうね。


なぁぜなぁぜ?  ?(○´・c_・`○)??


脳のことであれば気合いでなんとかなると云った発想であれば、科学的では無いですよね。









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