臨床的に、仰臥位(仰向け)だと、手を空中に保持して肘を伸展させると言った運動出力が出来る人は脳卒中でも結構多いですよね。
回復期や慢性期だけでは無く、急性期でもそういった人は当然おられます。

所がそういった動きが出る人でも、座位や立位では肩と上腕を支えていたとしても、肘の伸展が出ないといったケースは結構ありがちだと思います。

理由は色々あると思うんです。
仰臥位だと肩甲帯が自重で床面にあたるので、安定性が作りやすいとかも,臥位で上肢の操作がしやすい要因の1つでしょう。
ただ、それだけではないのですね。
肘の伸展と言っても、仰臥位と座位や立位では上腕二頭筋と三頭筋と言った肘の屈筋群、伸筋群の張力バランスは異なるわけです。
なんなんでしょうね?
姿勢の変化に伴う出力調整といった意味合いで、同じような課題は、日常的な生活動作を含む様々な場面でも見ることができます。
日常的に必用な能力だと言うことが出来るといえます。
例えば、歯磨き。

まぁ、良くもちいているモチーフです。
左の図は、歯磨きをはじめたときに良く選択される姿勢と運動のパターンですね。
ゴシゴシゴシゴシ歯を磨くわけです。
この時、歯を磨く手が口の周辺でとどまることが出来るように肘は屈曲筋群が優位になっています。そうしないと手が下に下がってしまいますよね。それでは歯が磨けなくなります。
右の図は、歯を磨いている最中に話しかけられたり、玄関に誰か来てピンポンがなって返事をしないといけないようなときこんな姿勢と運動のパターンに変化します。
この右の図のような姿勢においては、手が口の方に落ちてこないように肘の伸展筋群が優位になっているのです。そうしないと、歯ブラシが喉の奥をついて、床の上に口の中のものをまき散らすような大惨事が起きてしまうのです。(^_^;)
姿勢の変化に伴って、肘はシームレスに屈曲優位の状態から伸展優位の状態へと調整を受けるわけですね。
不思議ですよね。
意志では調整出来ない動きの調整です。
こういった調整のためには、重力に対する姿勢の状況をリアルタイムにセンシングすることと、その情報を元に出力に対して調整を行うといった脳の情報処理システムが必用ですね。
前庭皮質の情報を含めた固有受容感覚が運動出力システムである高次運動野〜運動野に投射され、その情報から基底核ループなどで出力パターン選択をリアルタイムで行っているのでは無いかと私は考えています。
こう考えると、脳のかなり広範な情報処理システムがこういったことに関わっていることになりますので、脳の何処に損傷が起きても、姿勢に対する運動調整といったメカニズムはきちんと働かなくなると推測できます。
臨床的にも、動くことのできる人であっても、代償的な固定を使って肩甲帯がかなり挙上してしまった状態などを作りながら手を動かす人もおられますよね。こういった状態も、やはり姿勢と運動出力調整の混乱と捉えることができるかと思います。
多分こういったことは、既存の筋力とか可動域とかADLテストとかでは表すことが出来ないこと、二足直立で手を空間で使用すると言ったヒトの持つ特長なのだと思います。
これらの現在の科学では解明出来ない姿勢と運動の調整能力が、ヒトの動きを支えているのは間違いが無いとおもっています。
セラピストの皆さんは、それぞれに、自分なりの答えをお持ちだと思いますが、こういったことを常に考えておくことは、臨床の幅を広げる機会になる様な気がしています。
まとめると、それら〜姿勢と運動出力調整の関連性を想定しながら脳の情報処理を推測し、アプローチする方向性を考えて行くのはとっても大切なのだと思うのです。
といった様な話題でした。(たった三行・・・)
m(__)m
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