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執筆者の写真Nagashima Kazuhiro

リハビリテーションの質

更新日:2023年10月8日



以前にも、リハビリテーションの質について記事を書いています。

今回は違った切り口です。


最近、ちょっとしたことに気付いたのです。

相変わらず、質というものの定義は難しいのですけれど。

だけど、医療保険下で行われるリハビリテーションの質と保険外(自費)で行われるリハビリの質というのは、そもそもそのリハビリテーションの「質」と言われるものの、質が違うのです。

多分間違いありません。


2021年に日本慢性期医療協会が、このように述べておられたようです。

「医療・介護を通じて「効果的かつ効率的な質の高いリハビリテーション実施」が求められている。医療の世界では、回復期リハビリテーション病棟において「リハビリの効果」をFIMで評価しているが、評価者によって結果にバラつきが出やすく、また恣意的な評価がなされる危険性もある。急性期医療や介護現場などでも用いられており、簡便で客観的な評価が可能と考えられる「BI」に評価指標を移行してはどうか―。

日本慢性期医療協会の武久洋三会長と橋本康子副会長は、6月24日の定例記者会見でこのような考えを述べました。」


ちょっと部分的に赤字にした部分とアンダーラインを加えた部分があります。

簡単に言えば、効果的かつ効率的なリハビリテーションの質というものを、FIMで評価しているということが書いてありますね。

FIMの運用で恣意的な部分がある可能性があるので、BIにしたらどうかということですが、いずれも既存のADL評価です。


いうまでもなく、この基準が求めている質というのは、ADLの変化の程度です。FIM利得と言われるやつですね。つまり、リハビリテーションとは、FIM利得を上げることができれば、質が高いということになります。


なんだか頭の中にハテナが出ますね。

(^^;

あれ?そうだったっけと思われる人も多いのではないかと思います。

だけど、慢性期医療協会の立場から言えばそうみたいですね。


あ、ADLを軽視しているのではないですよ。

例えばではありますけれど。

今年の春ぐらいから「セラピースペースながしま」をご利用の方がおられます。

左片麻痺の方。最初、プラットホームに座った状態から寝転んでもらう時のことです。

右足で、左足を掬い上げるような動きをされました。すかさず、右足が左足を掬う動作を、手で静止してみたら、「左足で上げろってことですか?無理です。」と言いつつ結構綺麗に左足を制御してプラットホーム上に上げることができました。「できるじゃないですか!」って突っ込んだんですけど。

病院ではそんな動きは教わってなかったそうです。仕方がないですよね。FIMにしてもBIにしてもこんなことでは点数は変わらないわけです。だから、こういった場面で片足で掬えばできると運動学習を促すことは、医療保険制度上のリハビリテーションでは正しいのです。

早く自立できるし。

だけど、大切な動きなんですよね。そういう麻痺側の動きとか。細かな脳生理学的なお話はここではしませんが、とっても大切なのです。

つまりですね、こういったFIMとかBIとかでは点数にならないような動作も大切にしているのです。

ですから、ADLの中で、どのように非麻痺側と麻痺側を協調させて動いていただくのかといったところで私たちはセラピーを展開しているのです。

病院によっては、きちんとそういったことに目を向けている施設もあるのですが、全てがそうではないですよね。

誤解を恐れずに書くと、ADLを軽視しているのではなくて、FIMやBIを軽視しているということになるのかもしれませんね。(^^;

逆の視点から言うと、FIMやBIを重視することは、非麻痺側や麻痺側の使い方を軽視していると言うことにもなるのかもしれません。

(あくまで表現上のことです。言葉遊びに近いです)


話を戻しますね。

他にも、病院のリハビリテーションの質を判断する基準としてあるのは、人員配置などの環境整備による点数配分〜⚪︎⚪︎リハビリテーション料(Ⅰ)とか(Ⅱ)とかいう分類で判断されていたりするようにも見えます。

また、とっても直接的な感じがするのは、「病院機能評価」というやつですね。これは、厚生労働省の天下り先である、公益財団法人病院機能評価機構が行う病院の機能評価ですが、病院に点数をつけていくわけです。そうすると民間ではそれをランキングにしたりするのですけれど、それはおいておきましょう。

病院機能評価機構は、第三者として病院機能を評価すると謳っておられます。厚生労働省とは別団体の体裁を取っていますので、そう表現することは可能かもしれませんね。だけど、厚生労働省の天下り先である以上、それなりの配慮が求められているのは間違いないでしょう。


長くなりました。

つまり医療保険下でリハビリテーションの質を評価しているのは、厚生労働省を中心にした団体ですね。

患者さんがリハビリテーションの質を評価しているわけではないのです。

多くの患者さんは、厚生労働省が作り上げたリハビリテーションの質と言う概念を見て判断することになるのかもしれませんね。


良いとか悪いとかの話では無いのです。

こうなっていると言うだけの話なのです。


それと比較すると、保険外(自費)リハビリの質というのは単純です。

利用者さんが、行われるリハビリの質に判断を下すわけです。

明確な基準はないのでしょうけれど、自分の支払う金額や時間に対して、利用者さんが満足できなければ、当然来られなくなります。満足されていればリピートされるわけです。

説明がいらないぐらいシンプルです。

(๑>◡<๑)


繰り返します。

どちらが良いとか悪いとかの話ではないのです。


医療職であったり、私たちのように医療保険から飛び出して利用者さんと関わっているスタッフは、「質」と言われるものを少しでも良くしようとする努力はします。勉強したり技術を身につけるための研修に出かけたり。いろいろするのです。

そこには、医療保険下であるとか、保険外であるとかは関係ありません。

しかし、質というものを判断するのは、私たちをご利用いただいている人たちです。


厚生労働省も、病院などの施設にとってはある意味セラピストと取引をしているご利用者さんなのですね。

患者さんは直接のご利用者さんですね。


で、異なるのは、

病院などの施設で行われているリハビリテーションの質を判断するのは、厚生労働省がらみの団体である。ということと、保険外(自費)リハビリの質を評価するのは、直接の利用者さんである。という点です。


この点は大きいですよね。


ここまで読んでいただいた方は、最初に書いた、「リハビリテーションの「質」と言われるものの、質が違う」ということに理解をしていただけるのではないでしょうか?

土俵が違うのです。

土俵が違えば取り組みなどできないですよね。


比較そのものが成立しないのです。

繰り返し書いていますが、どちらが良いとか悪いとかいうことではないという理由がここにあります。

そもそもそういった議論は成立しないのです。


言葉を変えると、役割が違うということになるだろうと思います。

私は皆保険制度の中で、保険医療財源を維持しつつ、全ての人にリハビリテーションを受けることのできる機会があるというのはとても大切なことだと考えています。

ですので、病院のリハビリテーションというのはやはり大切なのです。

同様に、ある意味「特化」した役割を持つ保険外(自費)リハビリというのも大切なのです。


ところで、時折、病院のリハビリテーションの質は低いとか、保険外(自費)リハビリに保険点数をつけて欲しいとかおっしゃっておられる方がおられます。

ネット上もそうですが、実際に「セラピースペースながしま」をご利用される方にもそうおっしゃる方がおられます。

実際に費用が病院より高いので、少しでも安くというお気持ちはわかります。


だけどですね。

保険点数を入れるということになると、どのような形であれ、今まで保険外で行えていたことが、厚生労働省の管轄下となります。すると、こういったことには点数をつけますが、こういったことには点数はつけませんといった形で、実施できることが制限されることになります。

すると、私たちは、結局病院で行われているリハビリテーションを継続することになるだろうことが予測されます。

役割が同じになってしまうんですね。

そういった未来はご利用者さんも望まれてはいないだろうと思うのです。

私も望んでいませんし。












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