「セラピースペースながしま」をご利用中の頭部外傷の少年。
頭部外傷でよくみられるのは、損傷が強い側の片麻痺症状と、失調症状の組み合わせです。
そのほか沢山の症状が出るのですが、こういった症状が重なるのは、びまん性軸索損傷の影響も強いと考えられています。
神経細胞をつなげる神経繊維の問題ですね。
事故などの高エネルギー外傷では、このびまん性軸索損傷は脳の全体に起こるのですが、特に質量が異なる部位が、質量が異なるので頭蓋骨が揺れた際に異なる位相で揺れてしまうために起きやすいのでは無いかと思っています。
そういった意味で、中脳、脳梁、深部白質などが影響を受けやすいのだろうと考えられるのですね。
頭部外傷というと、高次脳機能障害という言葉もよく言われますが、今まで私のブログを読んでおられる方は、こういった認知機能というのがそれだけ特別に存在しているわけではなく、姿勢や運動と密接な関わりを持っていると私が主張しているのをご存じだと思います。
今お話をしている少年も、高次脳機能障害と云われるものをお持ちではあります。また、情動のコントロールも時折困難であったりするのではありますが、これは頭部外傷によって広範囲投射系も影響を受けているので、非常に中枢性疲労を起こしやすい傾向にあることもありそうだと思っています。
注意が持続しにくい印象で、身体図式を変えるために、ご自身の身体の情報に耳を傾けて欲しいと思うような場面でも、ふと思いついた身体の問題について解決をして欲しいと訴えたりと云ったことが、かなり頻繁に起きてしまします。
汎性注意障害と表現できるのかも知れないですね。
非対称性も比較的強く、杖歩行の監視がなかなか取りにくい感じなのですね。
中枢性疲労による注意機能の低下をだましだまし、前回書いたような手法やそのバリエーションで正中軸を作って行きます。麻痺側下肢も確り支持性を感じ取れるように頭を台につけた部分をリファレンスにしつつ麻痺側下肢での片足立ちに似た姿勢を経験してもらったり。
その後、立ち上がりで対称的に立てるようになると、立ち上がった直後にバランスを崩しやすくなるのが改善してきていました。
で、バランスボードを使ってみると、非常に集中されるのです。たぶん、課題としてちょうど良かったのでしょうね。
集中しないとバランスが崩れてしまうと云った状態に持ち込めた様子なのですね。
で、集中していただきつつ左右への重心移動へ。
その後は、裸足・杖なしでも結構安定して歩けてました。
バランスボードはバランスを取るという課題で、その課題のゴールはバランスが崩れにくくなると云うことなのではあるかも知れませんが、この方に関しては、どちらかというと両側の下肢から入力される感覚に注意を向け続けるという課題として捉えています。
下肢の身体図式が脳の中に刻み込まれること〜将来的により非意識下での下肢の制御が改善するを期待しているのですね。
お父さんが見ておられて、集中する少年にビックリされておられたようでした。
「このバランスボードは良いですね」と。
そうそう。
ですが、バランスボードでバランスを取ること自体が大切なのではなくて、バランスボードを利用する事で下肢の感覚に集中できるという事が大切なんです。
その為には、正中軸の知覚も大事なんですよ。
(*^_^*)
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