スケボーと運動学習 8

更新日:8月23日


今回は1週間程度スケボーに乗るのを止めていたら運動学習はどうなるかというテーマです。

まぁ、多くの人は予想どおりだと思います。

だって、多くの人は自転車に乗ることが出来ますよね。

そして自転車に1~2年乗らない期間があっても乗ることが出来なくなる人は多分いないですよね。

運動学習というのはそれぐらい強固です。

動画は、乗り始めから8分程度を流しています。文字は入れましたがその他は無加工です。

はじめはちょっと後退した感じがありますが、1分を超えるとほぼ前回通りの感じになっているかと思います。

その後は前回よりすこし慣れた感じでしょうか。


運動学習というのは、高次運動野と共に基底核や小脳の関与がとても重要だとされています。

ただ、スケボー乗ってみて、コアスタビリティが上がる事が基盤にあったのでは無いかと言うことを強く感じます。

高次運動野からの出力は一次運動野に運ばれていくのですが、同時に皮質橋路−橋網様体脊髄路を経由して多裂筋/腹横筋/内腹斜筋/骨盤底筋群/腰方形筋等に出力を送って、腹腔を周りから締め上げることで内圧を作り横隔膜を面で支える様な構造を作り基礎的な安定性を体感に構築していきます。

これをp−APA'sと呼ぶのですが、これがスケボーを降りていてもキチンと働き出しているのです。

高次運動野から皮質橋路の情報処理が改善したのかもしれませんが、左右差はずっとあったのでどちらかというと覚醒時に橋のAchとモノアミン系の比率が常時変化しているのでは無いかと思わせるような感じでした。あり得ない話では無いと思います。

覚醒時に橋の縫線核群が活性化されやすくなってセロトニンの分泌量が増えているという推論も出来るのかもしれません。


そのため、更衣動作や階段の移動、歩行、買い物などの時のしゃがんだり立ったりの動作、入浴時の浴槽の移動、浴槽の掃除、洗濯物を洗濯機から引っ張り出す、洗濯物を干す時など様々な日常生活上の姿勢変換が以前よりスムーズに行えるようになってきていています。

運動学習というと皮質/基底核/小脳が話題になりがちではありますが、脳幹も何かしらの活動に関わる変化/ 学習を起こしている可能性があり、それは日常に汎化されるものだと感じます。


皮質/基底核/小脳の学習したことは1~2日では変化無く、1週間ではややいったん落ちるもののコア自体が高くなっていることもあって数分で前回学習したところまではたどり着く印象です。


今度は、積極的に休息が学習を進めるか否かというテーマが出てくるなぁと思って、どういう風に進めたら良いのかを思案しながらネットの情報の海を探索していたら・・・


2011年に理化学研究所がマウスの実験で休息が必要である事を証明しておられました。

運動学習の記憶を長持ちさせるには適度な休憩が必要


もうわかっていたのですね。

実験によれば集中学習より分散学習の方が記憶を定着させていることがわかったとのことです。

記憶の定着には休息が必要であり、キチンと学習が起きていれば24時間(1日)程度の休息があっても記憶定着は起きると言うことになりますでしょうか。


人間の脳でそれがどうなのかという問題はありますが、学習のメカニズム自体は同じ部分もあると考える事が出来ますので、あとは頻度や休息について人の特徴を出していく作業は必要なのかもしれないですね。

また、脳損傷の場合など、グリンファティックシステムを含む脳内の循環が適正でなくなっているような場合の休息などは通常より長くとった方が良いのかもしれないという推測も出来るのでは無いかと思います。


答えが既に理化学研究所によって出されていたこともあり、スケボーと運動学習シリーズは8回目を持って終了します。

スケボー自体は上手になったら自慢するために動画をアップしたりすることがあるかもしれませんけれど。


このシリーズの最後にちょっとだけ記憶や学習に関わる雑感を書いておきます。

脳の記憶や学習では無くて、軟部組織の記憶や学習の話です。


記憶とは何かということをしばらく考えていた時期があります。

私は廃墟が好きなんですけれど、廃墟とは環境の中にある人に作られた構造物であって、環境が持っている”人が住んでいたという記憶”と言い換えることが出来ます。

そうすると、環境自体にも記憶が存在しているという事になります。

その記憶は構造的な変化で表現されているのです。人が家を作らなかったら家という構造物は存在せず、ヒトが住んでいたと言うことは誰にもわからないわけですから。

細かく言えば廃墟が無くても、たき火の後とか貝塚みたいな食べ物の残骸があればヒトがすんでいた記憶と言えますがこれも構造的な変化です。

脳の記憶や学習も細かく見れば構造的な変化です。シナプス接続部の距離や新しいシナプス接続等の構造的変化を伴うわけですから。


構造的変化は軟部組織や骨組織等の構造にも起きています。大きなことを言えば骨折などはレントゲンを診たら骨折していたことがすぐわかるでしょう。


炎症を起こした部位や、ナイフなどで切ってしまったところはいったん浅筋膜や深筋膜も切られていればその部分の膜は癒着しているか、滑りが悪くなってしまっているはずです。そういった構造的な変化は持続していて、元に戻ることは無くフェノタイプの一つの要素となります。

その身体構造的変化は、皮膚や筋膜などの構造がかつて何があったのかを記憶していると言ってもいい構造変化なのでは無いかと思うのです。

つまり、軟部組織も記憶すると言えるのだと思うのです。


身体構造が脳の可塑性を制限することは、

池谷裕二さんの市民講座 YouTube

でも話をされているので、参考にしてください。

構造は脳の学習を変化させます。


構造変化が記憶であるとすると、その記憶はある程度徒手的に変化させる事は出来ます。それは学習と言えます。使用されない部分の皮膚は柔らかく薄く変化していきます。強くこすったりする使い方が多ければ皮膚は硬く厚くなっていくことでしょう。

そういった可塑性が軟部組織に存在していますので、こういった構造変化を起こす徒手的な手段はあるわけです。

ただ、それには分析と根気が必要です。

例えばどこかの関節が動きにくくなった場合、その関節に関わる筋肉を含む軟部組織は何らかの変化があって動きにくくなったわけです。その変化がどの部分にどのようにあったのかを話を聞いたり触知したりしながら推測します。そして、一番問題だと感じる部位、或いは特定の部位の軟部組織でそこが適正になれば最も効率よく関節が動き出すと考えられるところを見つけ、その軟部組織に丁寧にアプローチしていく必要があります。


経験で言えば、20分間ストレッチやROMをしたりする様なことをしてもあまり根本的な問題解決に至らないことが多いです。キチンと軟部組織の記憶/学習につながらない感じですね。

軟部組織もいろいろありますが、例えば筋肉が硬くて関節が動かないとします。

その筋肉をストレッチする運動をしても、本質的に硬いところは改善しにくいと推測することが出来ます。

輪ゴムを考えるとわかりやすいかもしれません。輪ゴムに瞬間接着剤をたらして局所的に硬い部分を作ります。

で、その輪ゴムを引っ張ると、前より伸びにくいですけど伸びますよね。そのゴムを見てみてください。瞬間接着剤で固めたところは伸びずに、その周りが伸びているはずです。

周りを柔らかくして伸びるようにしても、まぁ伸びたことにはなりますが非効率的ですよね。

接着剤をとるようにアプローチした方が自然な伸び方になるはずです。


軟部組織へのアプローチによる軟部組織の構造的変化(学習)は臨床的には3~7日は持つ様に思います。今、1回/週で診させていただいている方の変化を観察しているので、そこからの印象ではありますけれど。


これらのことをまとめて考えてみると。

仮に20分程度のアプローチをセラピストは考える時間も無く一日18~20人の患者さんを診ていく事ですべての患者さんにリハビリテーションのサービスを提供するといった手法をとった場合、かなり非効率的なことしか出来ないのでは無いかと想像する事が出来ます。とくに新人にとっては不幸なことだと思います。

それより、キチンと40~60分の時間をとって臨床推論を立てて脳や軟部組織の学習につながるようにアプローチを展開していれば、患者さんにとってお休みの日が出来たとしてもそれは学習の定着のための時間になるはずです。学習/記憶の定着によって退院後も活動しやすい状態が持続することが期待できます。

まぁ、どちらが良いのかはその施設のリハビリテーションに関わる医師やPT/OT/STのトップのヒトが決めることですので私ごときがこんなことを言ったとしてもどうしようもないことではありますけれど。

けれど、リハビリテーションを取り巻く環境の何かが変わって欲しいという願いがあるからこんな事を書こうと思ったのだろうと思います。


最後のおまけは、軟部組織の記憶と学習という話題でした。








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