リハビリに関わる分野にいながらなぜグリンファティックシステムに興味を引かれているのか?
現在の脳科学は脳の回路網の分析が主流です。それはそれでとても運動機能の回復やアプローチの手法を考えるのに有用な情報を与えてくれています。
運動学習を基盤におくリハビリの方法論などについては様々な情報が検討されてきているにもかかわらず、どの程度の頻度で行うことが最も運動学習に良いのかとか、運動学習を行いやすくするための休息のあり方などはまだほとんど論議されていません。
一般には運動を継続し続けると運動学習効率が下がることや、休息で運動学習が促通することなどの現象が知られているにもかかわらず、ほとんど論議されていないのです。
これらの現象は、神経回路網ではおそらく説明が付きません。
もう一つは、「意識」と呼ばれる概念の問題です。
私たちは”随意運動(Voluntary Movement)”ととても気軽に表現していますが、いったい随意運動とはなんなのでしょうか?
随意運動と対比的に使われる言葉としては、不随意運動(Involuntary Movement)と自動運動(Automatic Movement)があるように思います。不随意運動は意識しても制御できない随意運動以外の病的な運動を指しているようです。失調とか振戦とか舞踏様運動とか、その他色々。自動運動はAPAとかに代表される姿勢制御などを指しています。
随意運動とは意識された運動を指すようですが、人はどの程度運動を意識しているのでしょうか?人の運動はよく観察するとある程度自動的に起きていることが多いように感じます。ところが脳損傷の人の動きは通常より意識的であるように見えることも少なくありません。
随意運動とは何か?
そもそも意識とは何か?
意識に関わる研究を見ると、意識を生み出す脳の局在というのはまだ解っていません。どちらかというと、脳が全体として働いたときに意識が生み出されるようです。
また、随意運動に際して、運動を起こすことを意識する前に脳は運動を起こす命令を出しているようです。
「随意運動」とは何かを知るためには「意識」とは何かを知る必要があるように思います。
それらの疑問にグリア細胞の働き、とくにアストロサイトの液交換システムや情報伝達のシステムは何かしらの関連性があるような気がするのです。
図は脳科学辞典より引用させて頂いています。
血管からアストロサイトがニューロンにエネルギーを供給している模式図です。
(脳損傷では、血管とアストロサイトの足突起が剥離するようです。)
グリンファティックシステムに関する過去のブログの記事はこちらからどうぞ。
2022/08/18追記
グリンファティックシステムと広範囲への投射系は関連していそうな気がします。
シナプスなどは接続されている軸索と神経細胞間の、いって見れば限局した部分で起こる情報伝達ですが、広範囲にわたって拡散性投射を行う情報伝達の仕組みもあります。
こういった情報伝達は細胞外環境に広くAchやモノアミン系の伝達物質を拡散させて多くの神経細胞の情報伝達に関わるシステムだと思うのですが、ここはやはり細胞外環境を適正に保つメカニズムが必要だと推測できるので、グリンファティックシステムは関連性があることが考えられると思うのです。
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