いんすぴゼミ_2022年01月17日



今年初めのいんすぴゼミでしたので、簡単な紹介と流れを。

いんすぴゼミとは、脳生理を研究されておられるお茶の水大学の毛内拡先生が脳科学に関する本を読みながら色々考察をしていくという企画です。現在読んでいるのは神経科学者であるガザニガの「人間とはなにか」という本。

人間とはなにかという本は上下巻に分かれているのですが、現在は下巻の中盤をこえてきています。

どうやら、人間らしさとは延長意識と言われる物に在るのでは無いかという話になっている気がします。

ガザニガは分離脳を観察してきて、左右の脳の働きの違いに気付いてきました。

ガザニガの分析に依れば左半球は知的で、計算するけど物事の決定に対してはギャンブル的な要素を含んでいるようです。右脳はより物事の判断に対して正確な性質を持っています。情動を脳が解釈して言語化することで感情になります。左脳に解釈装置があって、その判断が合っていようが間違っていようが辻褄を合わせて解釈する性質があるとしています。ですので、情動は遺伝的な条件や生活で経験したことなどから無意識下で起こっていますが、その理由は実は後付けであって理由が正しかろうと間違っていようとつじつまが合っている状態をつくるのが左脳の働きだと言うことになります。

そしてその解釈装置によって人は、あたかも意識して行動したような気になるということになります。

毛内先生もこれらの説は腑に落ちると表現されていましたが、これらの説は、私(永島)にとっても臨床的に腑に落ちる物です。ただ、毛内先生と同じ府に落ち方をしているかどうかというと解りませんけれど。(^^;

そして、人の延長意識という物が人に特有な物かどうかを知るために動物には意識があるのか無いのかという話になっていきます。

まず、動物に自己意識があるかどうかと言う話になるのですが、これは進化にメリットがあるものに対する自己認識は在るのでは無いかという話になっているようです。例えば、繁殖のために異性を識別するためには自分の性に関する認識が必要であると言うことになりますし、母親などの血族の識別は環境に適応するために必要な認識ですから鳥なども「刷り込み」などの何らかの方法で識別していくことになります。

MSR(鏡による自己認識)の実験が紹介されていて、実験自体の肯定的な考察や否定的な考察が展開されていてとても面白いのですが、それはここでは記載しませんので、是非本を読んでみてください。

私の興味を引いたのはここで自己の認識が環境の中で適応のために使われていると言うことです。樹上生活をする大型の霊長類が木から木へと飛び移るという難題をクリアするために自己認識が必要ではなかったかと書いてあるのですが、これは環境に対する自己の位置関係の認識を意味していますので、これはボディスキーマ(身体図式)と言えそうです。また、運動を起こした際の身体環境の変化という視点から運動主体感覚や、その枝が自身の体重を支えきれるかどうかなどの経験的な予測というのは、自分の体重というボディイメージが必要です。そういった意味ではSLFによる接続や右脳の空間知覚の能力は自己認識に関わると言って良いのでしょう。このことは高草木先生の資料にも時々出てきます。

面白いですね。

で自己意識(中核意識)はありそうだけれど、延長意識はどうかという話になります。

例えば、熊は寒い冬に備えて長く眠ることが出来るように秋に沢山食べているのかと言うと、熊は寒い時期が来ることをしらないので前もって冬に備えると言うことを計画はしていないのが解っているようです。これらは24時間を1周期とする概日リズムに関連した体内からの合図によって管理されているようです。結果熊に延長意識はないと言うことになります。ですので、熊が秋に備えているという考え方は人間が自己の延長意識で判断した考え方と言うことが出来るのかもしれません。

熊は予測をせず、「今」という時間に縛られていると言うことになりますね。

もちろん、予測している動物はいるのですが、それらは実験によっていろいろ論議をされているようです。しかし言葉を持たない動物の意識を探るのは一筋縄でいかないみたいです。

ここでポイントとなるのは記憶となってきます。

意味記憶はその物に対する記憶ですが、エピソード記憶は自己認識をベースに環境に対してどのような事が有ったかという事の記憶と言えます。

このエピソード記憶が動物にあるかどうかの観察や分析は脳卒中の障害を持たれた方の観察や分析に有用である気がします。

脳卒中に関わるセラピストにとって、読んで損はない本では無いかと思います。

本分より引用します。

「私たちひとりひとりが経験する意識ある無数の瞬間は、私たちの脳のネットワークのひとつが「稼働」していることを反映している。こうしたネットワークはひとつの特定の場所ではなく、脳内の至る所に存在する。」


いんすぴゼミの紹介は毛内先生のHPに有りますので、興味がおありでしたらどうぞ下のリンクをクリックしてみてくださいね。


「毛内研究室」


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