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執筆者の写真Nagashima Kazuhiro

いんすぴゼミ_12月6日

今回のいんすぴゼミは前回に引き続き「誰もが二元論者のように振る舞う」という章です。

ここは、人はなぜ、心と体が別であるという信念を持っているのかという話題で、直観的生物学/直観的物理学の話で始まります。

動物も人も、直観的に”動物であるのか動物以外の物か”とか、”危険な動物か危険ではない動物か”とかは分類する能力を持っているようです。また基本的な物理的特性”存在している物体はそこに存在し続けている”とか”物体は急に二つに増えたりしない”とか。その他にもありますが生物の分類にしても物理的特性にしても基本的な部分は生来的に知っているようです。これは環境に適応し生き延びるために、素早く判断し対応するための生物が持つシステムであって、長い時間をかけて遺伝的に組み込まれたメカニズムなのだと思います。

このメカニズムによって、「生物か生物ではないか」「危険か危険でないか」「物体が存在しているか存在していないか」などなどの二つに分類する能力は認知システムの力をあまり借りずに素早く情報処理をしている訳ですから、この二つに分類する二元論のメカニズムは動物と人間と共通している能力で非常に強固な物だろうと考えることができるのかも知れないですね。


話は直観的心理学へと進みます。

私たちは、「心の理論(他者の心を類推して理解する能力)」システムを持っています。心は目に見えませんが、目に見えない物を類推する能力は人にしか無いのかも知れません。そして人は、その心の理論を人以外の動物や物体に拡張するように利用しているようです。動物は実験的に心の理論システムを持っていないようだとされていますが、人は飼い猫や犬、その他の動物などに心を感じ、場合によっては物に対しても心がある、つまり目に見えない気持ちや目的を感じたりすることがあるとのことです。確かに長く使った道具や人形に愛着を感じ、供養したりするのはそう言った特性を表しているのかもしれないと思いながらお聞きしていました。

それで、「心の理論」に根ざす一般的な思考のタイプとして目的論的思考があるそうです。「肺は呼吸をするためにある」とか「山はハイキングをするためにある」「雲は雨を降らすためにある」などの目的論的思考は意図された構想をよりどころとして事象を説明するようにして作られると言うことらしいです。人の意図が目的論を決定しているという事になります。しかし、上に上げた例文を見てみても原因と結果を逆にとらえると少しおかしな事になりますね。

ただ、人はそういう考え方を直観的にしやすいようです。

「心の理論」が十分に発達することで人は行動を予測する能力が高まり、観察可能な域を超えて行動を予測する能力を持ちます。例えば他の動物の心理状態を推測することで、その動物の取る次の行動を予測するようなこともできるようになりました。


環境に適応する上で、見えない物を推測することのできる「心の理論」システムは非常に有用であると思います。しかし、その根本は最初に書いた直観的生物学とか直観的物理学に根ざした分類/判断のメカニズムですのでやはり二元論が基盤になっているといえるようです。

その為、目的論的思考は誤ることがあるわけです。


この非内省的/直観的な行為主体探知装置は非常に素早く自動的に思考に組み込まれるようです。これに対して内省的な信念は情報を慎重に考慮し、証拠を検討し、賛否両論を考え、なにかを信じるかどうかを決定します。ですので、内省的な信念を形成するには時間がかかり労力が必要とされます。

前回、人が二元論でしか考えることができないのであれば人は人の脳や行動を理解できないのではないかと書きましたが、どうやら、この内省的な信念の形成によってできそうですね。

よく考えてみれば当然です。人が二元論でしか考えることができないのであれば、ガザニガが「誰もが二元論者のように振る舞うのはなぜか?」という疑問を抱くはずがないのですから。


今回、毛内先生が科学において「原因」と「結果」を逆転させては危険ですと言ったようなことを話されていたように記憶しています。それが印象的でした。


さて、この非内省的/直観的な探知装置はリハビリテーション医療においても、原因と結果の逆転を起こさせているような気がします。

色々なところで書いているのですが、FIMやBI(日常生活動作能力の指標)等をみてみると、本来は脳機能の改善が動作能力を改善しFIMやBIが改善するという基本的な流れが医療の本質なのでしょうけれど、現在の保険医療制度ではアウトカム(結果)を重視するあまりFIMやBIの改善がリハビリテーションの評価に繋がるシステムを構築しているようです。

脳の機能回復という「原因」とFIMやBIの改善という「結果」が逆転していては、それはもはや医療では無いと思うのですけれど・・・

私の知る限りですが、その部分の議論はなさそうです。






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